無料ブログ作成サービス JUGEM
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| スポンサードリンク | - | - | - | pookmark |
埋まっテルダム型録


「ダム」と言うのは我が国では一般に、川を堰止める構造物の事を指しますが、ヨーロッパではもう少し広義に使われていて、川の水が町に入らないようにする「堤防」の事もダムと言う場合があるそうです。

なので、国土が低いオランダでは、アムステル川の堤防で囲まれた町を「アムステルダム」、ロッテル川の堤防で囲まれた町を「ロッテルダム」と言うのは有名な話・・・。

それとはまるで関係ありませんが、今回のダムカタログ(堰堤型録)シリーズは、日本の「埋まっテルダム」「沈んデルダム」を特集します。


コンクリートダムの魅力には、いろんな面がありますが、ビジュアル的には何はともあれ「下流面」の表情が挙げられます。

大きなダムは壮大で雄々しく力強く。
その迫力を持って見る者を魅了します。
419安濃.JPG

小さなダムだって小さいなりに、
下流面はそのダムの「顔」としての役割を持っています。
424松尾.JPG

でも、沢山あるダムの中には、そんな大切な「顔」である下流面を隠してしまっているダムもいます。
下流面が土に埋まっている「埋まっテルダム」、
同じく水没している「沈んデルダム」です。

そんな、一風変わったダムたちから、まずは「埋まっテルダム」をご紹介。

山梨県北社市 頭佐沢ダム
1926年竣工 堤高21.5m

僕が初めて見た埋まっテルダムです。
21.5mもある事は事前に調べていたので、現地に到着して度肝を抜かれました。
地上に露出してるコンクリートの堤体は天端付近の5m程度しかありません。
堤高のデータが間違ってるのじゃないかと、疑いたくなる情景です。

151頭佐沢.jpg

埋まり具合の見事さであれば此方のダム。
富山県富山市 新中地山ダム
1959年竣工 堤高35m

発電所の建設残土の処理として、コンクリートダムの下流面を完全に埋め立てています。
35mもある堤頂までみっしりと盛ってあるので、天端には下流側の欄干もありません。何故かと言うと、天端から転落しようがありませんので。
頭佐沢ダムもきっと同じような理由で埋まってるのかな?と思いますが、新中地山ダムは下流面に盛土をする前提で設計されている為が、コンクリートの堤体は幾分スリムな設計になっているようです。
(※このダムは立入禁止です。関係者様に特別な許可を頂き写真撮影)

598新中地山.JPG

埋め立ての規模で言うなら、このダムが一番です。
群馬県利根郡 真壁ダム
1928年竣工 堤高26.1m

高さこそ26mですが、堤長が535.6mもあります。
長細いダムが多い北海道を除けば、このダムよりも長いコンクリートダムは下久保と弥栄しかありません(有峰よりも長い!)
この真壁ダムの場合、河川敷が長かった訳ではなく、丘陵に堤防を築く感じで建設されたものと思います。
基礎地盤まで掘り起こしてコンクリートのダムを築堤している為、ダムが完成後に下流面は堤体に沿って溝状の窪地が出来てしまい、雨水などが貯まってしまうので残土を埋め戻した、といった理由ではないかと推測しています。

20110817_2322473[1].jpg

埋まっテルダムの理由は他にもあるようで、例えばこちら。
長崎市 本河内高部ダム
2006年竣工(再開発) 堤高28.2m

アースダムであった旧本河内高部ダムの再開発事業として建設されたコンクリートダムです。
アースダムのすぐ上流側に建設されて、外観上の下流面はそのまま明治に造られた既存のアースダムが活かされています。
アースの旧堤体の堤頂部からコンクリートの新堤体までは埋め立てで平坦な広場のようになっていました。

489本河内高部.JPG

上流からはご覧の通り、いたって普通の重力式コンクリートダムです。
490本河内高部(再).JPG

さらに凄いのはこちらでしょう。
大阪府泉佐野市 新滝の池
1995年 堤高26m

どこかの「少佐専用」とか言われる事の多い赤いダムです。
周辺の緑に映えるようにと赤いらしいのですが、下流面はと言うと・・・。

540新滝の池.JPG

このように、堤体の傾斜に沿って緑地化されています。(訪問時は初春であった為枯れ木ですが・・・)

一応、ほかの埋まっテルダムと同じく「建設残土」によるものだと言う事ですが、この新滝の池の面白い所は、とにかく「積極的に盛っている」と言う事です。

ダム建設中は、コンクリートの打設に合わせ、下流面に盛土をしていく事で現場への資材の搬入路を確保し、完成後は余分な盛土を除去して、木々を植林し緑化をするという設計になっています。
さらに面白いのは、コンクリートの堤体自体、盛土がし易いように表面は階段状に段差が付けてあるようです。

他の埋まっテルダムが、どちらかと言うと「仕方なく」埋まっている感があるのに対して、この新滝の池だけは、「もう、埋まりたくて埋まりたくて、仕方ない」といった感じなのです。

と、言う事で、新滝の池のその積極性を買って、勝手に「ベストオブ・埋まっテルダム」としたいと思います!。

IMGP0466.JPG

少し長くなってしまったので、「沈んデルダム」は次回に持ち越します。
アップするかは、この埋まっテルダムの反響次第・・・かな?

| あつだむ宣言!(清水篤) | 堰堤型録 | comments(6) | trackbacks(0) | pookmark |
オールドコンクリートダム型録(堰堤編)

さてさて、前回のオールドコンクリートダム型録では、日本で最も古い「ダム」たちを紹介しましたが、そもそも「ダム」と言うのは河川法によって定められた「河川を堰き止める高さ15m以上の構造物」と言うのは皆さんもご存じの通り。

ですが、この定義を定めた河川法は戦後の1964年(昭和39年)に施行されたものであり、それいよりも誕生が古いダムたちにとってはまさに寝耳に水、

「えっ!俺たちダムじゃないの?」「おいおい!聞いてないよ」
なんて声が聞こえて来そうです。

と、言う事で今回は堰堤編として、前回のオールドダム型録と同世代でありながら、知らない間に勝手に「堰堤」になっていた、堤高15m未満の「ローダム」たちの紹介です。



桂貯水池堰堤 1900年 京都府舞鶴市

まず、真っ先に名前を挙げたいのが、この桂貯水池堰堤です。
完成は布引五本松と同じく1900年、大日本帝国海軍の給水用水源として舞鶴に建設されました。

一面に苔が生したしっとりとした水源地に身をうずめるその姿は、風格と同時に野趣にも溢れ、さながらダム原人といった趣きです。
ここから日本のコンクリートダムが始まったかと思うと感慨深いものがあります。

133桂.JPG


旧大湊水源地沈澄池堰堤 1909年 青森県むつ市

続いても有名な物件、旧大湊水源地はロシア・バルチック艦隊からの北海道防衛を目的に、帝国海軍の軍事施設として誕生しました。
戦後、民間の水源地として施設が引き継がれ、運用終了した現在は市民の憩いの場として穏やかな余生を送っています。

堤高7.9mと小柄ながら美しい弧を描く堤体は「日本最初のアーチダム」と称される事もありますが、現地で確認するとアーチダムでも「重力式アーチ」に近いものでした。
現代の感覚ではアーチダムは貴重な型式であり、なんとなく重力式よりも技術が高く、優れているダムのイメージを持ってしまいますが、当時はまだ、ダムの構造計算にアーチ効果による「期待値」が盛り込まれていた時代ですから、今とは逆に直線重力式の方が大胆で思い切った設計だったのかもしれません。

678旧大湊水源地沈澄池堰堤.JPG


(布引)分水堰堤 1907年 兵庫県神戸市

一般に日本初のアーチダムとされるのは上記の旧大湊水源地なのですが、実は布引五本松の上流にある分水堰堤の方が、アーチダムとして2年ほどより早く完成しているようです。

日本で最も古いダムこと、布引五本松ダムの付属設備であるこの分水堰堤は、布引五本松の貯水池への取水堰堤となっており、雨などで川が濁った場合に取水をカットし、貯水池が濁らない役目をしているものです。

フェンス越しに公開されているものの、茂った雑木でほとんど姿が見えないのが残念ですが、石張のその姿は、旧大湊水源地と異なり純粋なアーチ形状をしています。

587布引水源地分水堰堤.JPG


(布引)締切堰堤 190?年 兵庫県神戸市

布引五本松の貯水池と、分水堰堤との間にあるのが締切堰堤です。
元々は砂防堰堤ですので、ちょっと本型録とはジャンルが異なるかもしれませんが、表面石張の純粋なアーチ形状をしています。

分水堰堤から送水された水で貯水池の水位が上がり、水が谷に逆流しないように既存の砂防堰堤を嵩上して現在の姿になりました。竣工年はよく解らないのですが、分水堰堤と同時かそれ以後だと思われます。

586布引水源地締切堰堤.JPG


大河原発電所取水堰 1919年 京都府相楽郡

高山ダムのすぐ下流、木津川に根を下ろしもうすぐ100年となろうと言う古い堰堤です。ストイックでシンプルな形状なので写真では大きさが解り辛いですが、あと数センチで15mに届くなかなか立派なローダムです。
同期の石張ダムたちと同じく、非常に丁寧な施工が印象的です。

先の2基の物件は軍港施設でしたが、こちらの堰堤は水力発電所で送水する取水堰堤であり、それだけでも当時の日本の情勢や経済の変化を想像できる気がします。

734大河原発電所取水堰堤.JPG

以上、とりあえず、訪問した中で有名どころを並べてみました。

堤高15m未満の「堰」「ローダム」はネット上の資料も少なく全容を把握する事は困難だと思うのですが、資料を発見してしまうと現地に行きたくなってしまうので、決して開けてはならないパンドラの箱のような気がします。(笑)

| あつだむ宣言!(清水篤) | 堰堤型録 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |