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初瀬ダム

堤高23m
G/P 1937年 四国電力

2011.4.30見学


四国遠征2日目、最初のターゲットは高知県の初瀬ダムです。
夜明け前に高知自動車道のSAを出発して、山間の狭道を延々と走ってようやく辿り着きました。

初瀬ダムは四国電力の発電用ダムです。



貯水池上流からアプローチ、左岸の路肩に駐車して歩いて近づきます。
天端は県道から一段下に下がった位置にあります。

クレストはダム軸上をゲート巻揚機が占領していて、天端通路は大きくクランク状に迂回して、棚の様になっています。



下流面が見える所に来ました。

なんと渋い表情!。
初瀬ダムの竣工は古く1937年、重力式コンクリートダムとしては四国で4番目に古く、高知県では最も古いダムです。



最初に目を引くのは、一体成型で扶壁上に造られた階段。
5枚の扶壁にきっちりと刻まれた階段は、遠目にはラックギアのようで、ダムの表情をメカニカルにしています。

4門のラジアルゲートは幅10.0m×高さ6.7m。
横に長い形状が時代を感じさせますが、扉体自体は平成に入って改修され新しくなっています。



天端を対岸に渡ると管理所。
土曜日の早朝ですが管理者さんと思われる車が停まっています。

ダムサイトのアバットメントは古いダムらしく石垣です。



ダム本体の下部を観ると、スカート部分に点々とステップが取り付けられています。何処へ向かう道でしょうか?。

堤体の表面は幾つも細い筋が見えますが、打継目では無さそうです。



天端の高さまで降りてみました。
特に立入を制限する表示やチェーンもなく、解放されています。



右岸の管理所の前から。

第一印象では気が付かなかったのですが、4門のラジアルゲートを挟み、両岸にはそれぞれ2門(計4門)の自由越流のゲートを持っていました。

どういった場合にこの両岸の越流ゲートから水が溢れるかよく解りませんが、磨かれた下流面や補修跡のある越流部を観ると、かなりの頻度で越流があるように伺えます。



右岸端のフェンスの扉には、手造りの巣箱が掛けてありました。
管理者様の人柄が滲み出ていますね。

巣箱が掛けてあるくらいなので、この扉(管理所敷地の入口)は閉ざす事が無いのかも。
人里離れた山中のダムですが、常駐の管理なのかもしれません。



早朝なので、当直の職員さんは仮眠中かな?。
音を出さないように、そっと管理所前から見学します。

ダム直下に副ダムのような構造物がありますが、年代物のダムなので、副ダムではなくてジャンプ台の先かと思います。



左岸の端に排砂ゲートが口を開けています。

さっき見つけたスカート上のステップはこの排砂ゲートに向かう道でした。
排砂ゲートの内側は補強の為、鋼板(鋼管)となっています。



高知で最も古いコンクリートダム。

高知自動車道の終点から延々と山道を走るので、アクセスはお世辞にも良いとは言えませんが、苦労しても行く価値のある、味のあるダムでした。



初瀬ダム
★★★

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杉田ダム

堤高44m
G/P 1959年 高知県営

2011.4.29見学


今晩の宿は南国SAにしよう。
南国SAは去年の遠征でも車中泊した事のある思い出のSAです。

高速のインターまでの道すがら、ナビに事前に地点登録していた物件が表示されました。
吉野ダムから下流に6キロ、地点登録には杉田ダムとありました。
見学予定は無かったのですが、国道のすぐ脇にあるらしく、立ち寄ってみる事にしました。

ここに来るまでにすっかり夜になっていました。
周辺は外灯もほとんどなく、国道を走る車が途切れると真っ暗で何も見えません。
何処に管理所があるのかもよく解らないので、付近の空地に車を停めました。



ダム左岸から観る天端。
観ると言っても真っ暗です・・・。

手前の壁のような欄干だけやたら白いですが、ペンキで塗装してある様です。



天端左岸から下流。

肉眼ではほとんど何も見えません、よってファインダーでも見えません。
カメラの感度を上げて山勘撮影、なのでピントも合っていません・・・。



左岸に辛うじて管理所が見えます。

それ以外は真っ暗で、ほとんど何も見えません。
堤高が44mと意外と高さのあるダムだった事知ったのは、帰宅して調べ直した後でした。



クレストゲートは、吉野ダムと同じで4門のラジアルゲートです。
天端通路と巻揚機を乗せたピアの隙間から、ぼんやりと明りが漏れています。



どしゃーっ。
結構な勢いで夜の放流。

夜の水面って、観ていてあまり気持ちの良いものではないですね・・・。
じっくり見てしまうと、見てはいけない物が見えてしまう様な気がします・・・。

何処からか不意に風が・・・
急に寒気がしたのは、放流で巻き上がった水飛沫?

・・・・。

背後に嫌な気配。
ゆっくりと振り返ります・・・。



ぎゃーーーーーーっ!!!



それからの事はあまり覚えていません。
気が付くと何も無かったかのように国道をインターに向けて走っていました。



杉田ダム
★は未評価。

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吉野ダム

堤高26.9m
G/P 1953年 高知県営

2011.4.29見学


永瀬ダムを後に物部川に沿って高知方面に向かいます。
県営の発電ダム、吉野ダムに着く頃には太陽は既に山影に沈んでいました。

国道から脇道に入ると発電所の施設があり、駐車スペースもあります。



わっ。

高知県企業局のキャラクターでしょうか?。
各地のダムに色々なキャラがいますが、これほど元ネタが不明なのも珍しい。
(ひょっとして、はいだしょうこ画伯???)

この写真を娘に見せて「これって何やろ?」って聞いてみたら、
15秒ほど首をかしげた後、「アイスクリーム」って答えが返ってきました。

「えーっ、そりゃないやろー」って、もう一度考えさせると、
不満げな顔をして、「ぶいあな」って答えてテレビの方に去りました。

よくわからんが、「ぶいあな」 に決定。(読み方が違うぅ・・・)



ぶいあなの場所から川の方を観ると、眼下にダムが見えます。
吉野ダムです。

エメラルドグリーンと、イエローの塗装が結構派手に見えました。



ダムまでは、坂道の歩道が続いています、綺麗に咲いたつつじの道です。
(千と千尋の、湯屋の庭を思い出しました。)

管理所も上にあるのでダム職員さんも使っている道だと思います。
もう日が暮れているので外灯に明りが灯っています。



坂道を降りて来ました。
堤高26.9m、

クレストからストンと垂直に大きく落ちた下流面。
ゲート付近は通常の下流面のような勾配がありますが、発電用の送水管が入っている部分なので肉が盛られているのかと思います。



天端は自由に歩けるようです。
高欄の親柱、悪くないです。



振返ると、今降りて来た坂道が見えました。
趣があります。



しんと静まり返った貯水池。

この時間帯が一日で一番音の無い時間です。
虫や動物たちが、昼行性から夜行性の生物にバトンタッチする瞬間は、少しだけ何も活動していない空白の時間帯があります。

だから黄昏時って、なぜだか少し寂しくなるのかなあ。



一日ダムを周って疲れもあってとぼとぼと天端を歩きます。
下流側はラジアルゲートの巻揚機が並ぶちょっと古風な構造です。

その間にフェンスもあって天端から下流の川は見えません。



右岸まで来ました。
対岸に発電所の建屋が見えます。

4門あるゲートの内、1門から放流中。
越流面はよく見えないのですが、流れ落ちる水の丸みから、こんもりと丸い越流面を持っているようです。

さて、そろそろ今晩の宿を考えなくては・・・。



吉野ダム
★★★

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永瀬ダム

堤高87m
G/FNP 1956年 国交省

2011.4.29見学

Bloodline.


小見野々ダムを後に、那賀川の上流に向かって国道195号(土佐中街道)をひたすら走ります。
長いトンネルを抜け、車中から川の様子を見ると、流れが真逆に変わり、下流に向け走っている事に気が付きました。国道は県境の分水嶺を越え、今度は高知県を流れる物部川に沿って西へ西へと。

延々と車を進め、香北町に入った辺りで右折、集落を抜け山道を登るとダムに到着しました。四国地方整備局の多目的ダム、永瀬ダムです。



左岸のパーキングに車を停め散策します。
天端は広く、車道となってます。



満水の貯水池。
奥物部湖は、先程訪れた徳島のダムと同じで白く濁っていました。

ダム便覧をはじめ、他のサイトでは蒼く澄んだ色をしています。
この日は雨などの出水で濁ってしまった様で、普段は綺麗な澄んだ湖です。



天端から下流を観ます。
堤高87m、非常に重厚、堂々としたコンクリートの表情。

「あのダムに似ている・・・・。」
この時既に、ダムマニアセンサーがある事を敏感に感知していました。



センターのクレストゲートからは放流中。

赤いアームがカッコイイです。
ゲートを支える扶壁の先端に管理橋が架かっていて、各ゲートが歩廊で結ばれています。



下流を眺めます。
高知の森。下流の河川は大きく左にカーブ、向こうには集落が見えます。

歩廊の上からは、さらに絶景が見えそうです。



右岸まで歩いて来ました。

僕の目の前に広がっているその姿。
それは、堂々とした正調派重力式コンクリートダムの姿でした。

そう、このシルエットは!



名堤 ミスターダムこと丸山ダムにそっくりなのです!!
(写真は放流中の丸山ダム)



堤高や左右のバランスも近く、非常によく似たシルエット。
永瀬ダムはあの丸山ダムと同じ、堂々とした「ダムらしさ」に溢れています。

でも、勿論全く同じと言う訳ではありません。
要所ごとでは、違う点ばかりで全くの別物です。

クレストゲートも丸山のローラーゲート×5門に対して、此方は同じく5門ですがラジアルゲート。
(センター3門が非常用、左右の少し小振りな2門はオリフィスゲート)

それでも整然と並ぶ凛々しいイメージや、ピアを避けてクランクした天端、ゲート下流の歩廊、エレベータの配置など、丸山の匂いを明確に感じます。



特に、このバケットカーブの感じなど、部分だけ見たら区別が付かないかも。
おまけに、丸山と同じ様にツル植物が進出している感じまでそっくり。



一通り見学して駐車場に戻ると、高欄の左岸端にいい物を見つけてしまいました。

施工 間組

親柱に埋め込まれたプレート、それは同じ血筋である血統書です。

うわあ、どうりでそっくりなはずだ、本当に兄弟だったのか。



丸山ダムの完成は1955年。対して永瀬ダムの完成は翌年の1956年。

着手は永瀬ダムの方が少しだけ早いのでどちらが兄貴かは微妙ですが、急増する電力需要を賄う為になりふり構わず築いた感のある丸山ダムのコンクリートと比べ、この永瀬ダムの表面は平滑に整っていて、じっくり時間をかけて丁寧に造られた感じを受けました。

永瀬の方が、母親のお腹の中に居た期間が長かったという感じでしょうか。
なのでイメージ的には兄・丸山、弟・永瀬です。

クレストゲート周辺の造形。
曲線を基調とした丸山と比べ、直線的でモダンな造形はどこまで雄々しく、次の世代の扉を開いています。(すごくかっこいいぞ!)



永瀬ダムが弟に感じるのは他にも理由があって、丸山には無いものが永瀬には備わっています。

まずは、しっかりとした副ダム。
50年代も中期なので、他のダムでも副ダムらしきものが生え始めていますが、永瀬ダムのそれは大きく、深いもので最新のダムと遜色ありません。

ダム本体との距離も十分にあり、積極的にウォータークッション効果で減勢を狙った設計が伺えます。



また、下流面を見ると、堤体中程の高さに放流バルブが備わっていました。
この辺りも丸山よりも明らかに進化しています。



今回の四国遠征、まさか高知の山奥で丸山の兄弟に出会えるなんて思ってもみませんでした。

ダムの設計やデザインは、現実にはどの様に、また、誰の手によるかは多岐にわたりさまざまですが、この永瀬ダムは明らかに丸山ダムと同じDNAを感じるのでした。



正調派の血統。

永瀬ダム
★★★★


おまけ。
ゲートピアへの階段

「はいられん」

試したけど、無理だった。

って感じ???


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小見野々ダム

堤高62.5m
A/P 1968年 四国電力

2011.4.29見学


長安口ダムの上流10数キロ、四国らしい深い山々の間に小見野々ダムがあります。
川口ダム、長安口ダムと並び、那賀川上流ダム群の最上流がこのダムです。

たっぷりと湖水を湛える貯水池。
岸部の雑木が冠水していましたので、この日はかなり水位が高い様です。



国道から左岸伝いに脇道に入ると管理所があり、関係者以外立入禁止となっていました。
これよりダムに近寄る事はできません。



とても不思議な表情に見える小見野々ダム。

白くつるんとしたゲートと、その間の扶壁だけが水面からぷっかり浮かんでいます。

非越流部が無く、右岸から左岸まで隙間なく規則正しくゲートが並ぶ姿は、何処かしら生き物のような有機的な物にも見えます。
最初に頭に浮かんだのは、シャコ貝のような巨大な貝殻でした。

上流からは他に目ぼしいビューポイントがなく、下流面を推測できる様な物は一切ありません。



ゲート部分を望遠端で観察します。

ラジアルゲートの巻揚機は、下流側に低く設置されている様で、その事が上流から観てピアとゲートしか見えない不思議な感じに繋がっているようです。

一門だけ、形状の違うゲートがあります。
フラッシュボードかとも思うのですが、このボードを使うとなると、水位がとんでもなく高くなります。

観れば見るほど、謎が謎を呼ぶ小見野々ダム。



発電所の取水口は対岸にありました。
アーチダムのダムサイトらしく、岩盤にへばり付くような感じです。



傾いた日差しを反射するダム湖。
べた凪の湖面は、とろみを感じる少し微睡んだ表情。長安口ダムと同じで随分と濁りが入っていました。



続いて下流面が見えないものかと、一旦国道を川下に戻って、川に降りれそうな脇道に入りました。

かなり荒れたコンクリート舗装、轍も深くなって来たので、途中で車を置いて徒歩で向かいます。



坂道を下って行くと道端で、軽トラの兄弟がプロレス技を掛け合ってじゃれていました。

「どうだ、どうだ、ギブか?ギブか?」
「痛いよお兄ちゃん、ギブギブ~」



いつもおなじみの四国電力の女の子。
タフですね。



ごつごつした岩が散らばる川原の表情。

谷底にも夕日が差し込んでいます。
ダムの上からの日差しだとすると、目標の小見野々ダムはそう遠くないはずです。



ところが・・・・。
ここまで来て通行禁止です。



その先を見ると、かなりの落石で道が閉ざされている様です。
これは本当に危険。

潔く退却です。



那賀川に浮かぶ巨大な貝殻。

下流面を見るのは困難ですが、上流から丸く並ぶゲート群を眺めて、どんな表情なのか想像するのも一興かなと思います。



小見野々ダム
★★★

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追立ダム

堤高29.5m
G/P 1952年 徳島県営

2011.04.29見学

ハードロッカー。


大美谷ダムで癒された後は、すぐ近くにあると言う追立ダムに向かいます。
大美谷ダムから降りてきて、国道193号に戻り600mくらい北上するとトンネルがあります。
トンネルの名前は追立トンネル、このすぐ前の橋から川の上流を見ると・・・。



ドカーン!っと現れました。

これが追立ダムです。
堤高29.5m、堤頂長79.5m。
追立ダムは、長安口ダムの建設に必要な電力の発電を目的に造られたダムです。

但し、その経緯は少し変わっていて、建設費用や工期の短縮の為に、砂防ダムとして認可された堰堤を利用し発電用の取水口やゲートが設置されました。

長安口ダムは、元々県営ダムとして造られていますから、この追立ダムも四国電力ではなく徳島県の管轄となっています。

それにしても、凄まじい風貌。



荒々しい肌。ごつごつした岩のようなコンクリート。
表面はやたらざらついて、同じように荒い表面の岩盤との境界すら曖昧にしています。

さらには、水の沁みと赤い鉄分の流れた跡が印象をよりハードなものにしています。



堤体の一番下には厚くコンクリートの肉が盛られていました。
竣工当初の古い写真にはこの肉盛りは写っていませんので、後々になって追加で盛られた部分ではないかと思います。

このナイフで削ったような、エッジのある表面は初めて目にする造形で、大きな一枚岩から削って造った、巨大な岩の壁ようにも見えます。



堤頂の越流部もナイフで削り取ったようなエッジがあります。
実際、これらのエッジは、コンクリートカッター等で人為的削られたものだと思います。

ダムの造形は、フィルダムは勿論、コンクリートダムも基本的には「盛り上げる」事で形が成り立っています。
追立ダムの「削り取る」表情は、他のダムとは180°方向性が異なるものです。

勿論、元々は通常の盛り上げる造形だったはずですが、荒ぶる谷川の濁流と、補修工事を繰り返しこの様な姿になったのだと思います。



上部の右岸にあるのは排砂ゲートです。
幅3.0m×高さ4.0mが一門。

その後ろに発電所への取水口があり、大雨などで濁流が押し寄せる場合はこのゲートを揚げて取水口の周辺が堆砂で埋まらないようにする様です。

この辺りは砂防堰堤と発電のハイブリット堤体ならでわと言えます。



天端越しに見る上流はすっかり土砂で埋まっています。
砂防堰堤なので、この状態で通常です。

よく、山中の小規模の発電ダムで、堆砂で埋まっているけど発電用の水はちゃんと取れているといった事例がありますが、それとよく似た状態です。



ダムの直下は天然の岩盤が荒々しい渓谷です。

四国らしい、輝緑凝灰石の強固な岩盤。
この岩の色を見ると、四国に居る実感を新たにします。



徳島県のホームページでは発電用のダムとして紹介されていますが、日本ダム協会のダム便覧等では今のところ未掲載となっています。
取水口を持ち、発電を行っていますが、土砂を貯める砂防堰堤に間借する感じでの発電設備なので、やはり砂防堰堤の扱いになっているのかと思います。

ハードロッカー追立ダム。
妖精のような大美谷ダムとは、全く方向性の異なる野趣あるれるダムでした。



追立ダム
★★★★

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大美谷ダム

堤高31.5m
A/P 1960年 四国電力

2011.4.29見学

徳島の妖精。


「ダムマニアの心のオアシス」と呼ばれているダムに、仙台の青下3ダムがあります
(写真は青下第2ダム。特別な許可を経て立入禁止エリア内から撮影)



東日本のオアシスが青下3ダムなら、西日本のマニアのオアシスはここしかない!
今回、そんな素敵なダムを見つけました。それは徳島県 四国電力の大美谷ダムです。

長安口ダムのダム湖上流部から国道193号を北上して、脇道に入り集落の中を奥に進みます。
長安口から10kmの近さですが、行く手を道路工事による時間通行停めが阻みました。(今現在は、工事は終了していると思います)

1時間於きに、10分間しか通行出来ません。
次の通行時間まで時間があったので、迂回路が無いかと付近の脇道を奥へ奥へと突っ込んでみましたが山腹にある神社で行き止まりでした。
無駄骨を食っいる間に丁度時間となり、工事現場を無事通過。目指す大美谷ダムはすぐそこです。



ほどなくダムサイトに到着。
山深くの発電専用のダムですが、小さいながらもパーキングがあり、案内看板に音声案内も完備。

音声案内では、「この大美谷ダムは四国では2例しかない大規模アーチダムで・・・他には小見野々ダムがあり・・・」と、紹介。
高西ダムは小っちゃすぎてノーカウントですか?ちょっと可哀想。



堤高31.5m、堤頂長86mのドーム型アーチ、それが大美谷ダムです。

かっ、可愛いっ!!!。

ダムの形容詞に可愛いってのも変ですが、とにかくもうそれしか頭に浮かんできません。完全な一目惚れ。

そもそも、アーチ式は堤体に使用するコンクリートを節約するのが主目的の型式なので、ほとんどの施工例は大規模なダムばかり。堤高日本一の黒部ダムも、アーチ式だから成し得たハイダムだと言えます。
重力式ならこのサイズのダムは星の数ほどありますが、「一目で全てが視野に収まるアーチダム」と言うのが、とにかく凄く新鮮で、可愛い~っ!と、なってしまうのです。



さらにはサイズが可愛いだけでなく、大美谷という名前に負けないかなりの美人ダムなのでした。

小さくて、薄く繊細な羽根をぱたぱた。
擬人化するならチャーミングなティンカーベルって感じ。(妖精なので擬人化ではないけど)

堤体の下から3分の一辺りにキャットウォークが一筋。
その下は水が溜まっていますが雨水だと思います、堤体の直下はいわゆる枯川の状態。



でも、岩盤ひとつ下流には河川維持の放流が見えます。

発電用の取水口などのダム設備は対岸の左岸に纏まっていて、維持放流の設備も向こう岸にあるみたいです。



山奥の無人のダムとあって、天端は立入禁止です。

親柱に長沢ダムと同じ赤い文字で、大美谷堰堤と刻まれています。
アーチダムでも堰堤。うむ、渋いですな。



フェンス越しの天端。
ダム本体に放流設備もない事もあって、いたってシンプルです。



右岸を歩きます。
時間通行止めで、しばらくここに孤立状態なので、時間を気にせずゆっくり散策する事にしました。

堤頂長が100mに満たない小さなダムですが、アーチの曲線はかなりきつく、貯水池側の傾斜からも、かなり強いドーム形状である事が伺えます。

この大美谷ダムの完成は1960年、国内初のアーチが1953年の三成なので、日本のアーチダムの中ではかなり古い方になります。
この小さく美しいアーチは、後に建設されたより大きなアーチダムの「テストケース」的な役割を想像させます。

大美谷ダムの本体施工は西松建設です。
当時のアーチダムの施工は鹿島と前田の二強時代なので西松建設の施工は少ないのですが、丁度大分で、下筌ダム建設の用地収用をきっかけに「蜂の巣城紛争」が湧きあがっていた時期であり、その下筌ダムの本体施工は西松建設と言う事で、この二つのアーチには何らかの関連があるかもしれません(根拠のない推測です、鵜呑みにしないように・・・)



対岸には発電所への取水スクリーン他、関連施設が集まっています。



ざわざわと水音に誘われ足元を見ると、思わず声を上げ驚いてしまいました。

うわーっ!めっちゃ水綺麗!。

ダムのすぐ脇に他の谷筋からの流れ込みがあり、結構な勢いで流れ込んでいます。
気泡が白く帯のように長く伸びていました。



ガラス色に透き通った水。

やたらと透明度が高く、ずっと深い所から気泡が湧いて上がってくるのも丸見えです。
ダム本体も美しく素晴らしいものですが、この水を観に行くだけでも充分な価値があります。

今まで水の綺麗なダムはいくつか訪問しましたが、この大美谷はその中でも最高レベルです。



右岸を奥に進むと貯水池には吊橋が架かっています。



橋の上から糸を垂らす釣り人。

魚釣りがOKの湖かは不明ですが、他にも何人かの釣り人の姿がありました。
午後の食い渋る時間帯と言う事もあり、みなさんのんびりムードの様です。



吊橋は大嫌いだけど(高い所が苦手なので)、満水の水面まで近く今回は余裕でした。

吊橋の上から上流を観ます。
堆砂が多いのか、上流の水は少し濁り気味でした。



小さなダムなので、周辺をゆっくり観て周ってもまだまだ時間はたっぷり余っています。

通行止めで車は来ないので、車道のアスファルトに座って丸いアーチを眺めながら、いつものカロリーメイトで遅すぎる昼食。



透き通った大美谷の水。

水の音に耳を澄ますと、コップに注いだ炭酸水の様に、ぱちぱちと気泡が割れる音まで聞こえてきます。

気泡は底の方から幾つもの光の環になって湧き上がっては消えを繰り返していました。
産まれたばかりの本当に純粋な水たち。

観ていて飽きる事はありません、いつまでも観ていたい気分。



路肩には、たんぽぽが午後の日差しを受け風にゆれています。
柄でもない写真を撮ってみたりして。

優しい春の日差しは、早起きした旅人の揺りかご。
上のまぶたと下のまぶたが仲良くなって来ました。

こうして、僕はこのダムがすっかり気に入ってしまったのでした。



最後に右岸の斜面を少し登ってみました。
小さく可愛い大美谷ダム。

ガラスのように澄んだ冷たい水を湛えるその姿は、氷の妖精とも呼ばれているクリオネを思わせる、とても可愛いアーチダムでした。



大美谷ダム
★★★★★

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長安口ダム

堤高85.5m
G/FNP 1956年 国交省

2011.04.29見学


川口ダムから那賀川を上流に10km。
国道のトンネルを出ると左手に立派なコンクリートダムが見えて来ました。

長安口ダムです。



路肩に車を停め、少しだけ道路脇の斜面を降りると真正面からその姿を拝見する事が出来ました。

長安口ダムは徳島県営の多目的ダムとして1956年に完成。
現在は、県からの要望を受け四国地方整備局が管轄を引き継いでいます。



クレストには6門のローラーゲート。

天端に埋まるように並ぶ縦長のゲート、大きなゲートピア、高い位置から伸びる導流壁。
ダムの大きさは違えども、ディティールはキング佐久間を彷彿させます。
(そういえば、キングも同じ1956年完成のダムだ)



滑らかなドレープを魅せる導流壁。
午後の日差しが影を作り、その形をより印象的なものにしています。

広い胸板に傷のようにあるのは予備放流管です。
洪水調節をメインとした大規模ダムですが、まだコンジットゲートはありません。



車で国道を登ってダムサイトに来ました。

堤体は国道脇にあるのですが、近くにパーキングはありません。
ダムサイトのトンネルを抜けると、展示施設「ビーバー館」があるのでそちらに停めて、歩いて来ました。



左岸にはクレーンのレールがあり、その間にコースターゲートが収まっています。
若草色と黄色の塗装色は、若葉をイメージさせる優しい色合いです。



天端を歩きます。
太く大きなゲートピア。



天端から下を見下ろします。
迫力の下流面、堤高85.5mは徳島県内最高峰です。



3次曲面が美しい導流壁。

有機的な美しさでは広島の高暮ダムに軍配を挙げますが、丁寧な造りの確かさでは長安口が一枚も二枚も上ではないかと思います。



ダム直下は広くコンクリートが打たれ、蒼い水が貯まっていました。
副ダムの位置にぼんやり見えているのは、薄いジャンプ台の先端です。



振返って貯水池を見ます。

下流の水の色と違って、全面が白濁していました。
前日の雨の他に、現在、貯水池に堆積した土砂を運び出す工事が行われていて、その影響ではないかと思います。

通常の那賀川はとても水の綺麗な河川です。



右岸に展望スペースがあったので、ちょっとだけ登ってみました。

装飾の無い質実剛健な高欄は、待った無しで建設されたこの世代のダムの特徴です。



飾り立てるようなデザインは未無ですが、その代り、形の変化や組み合わせで観る者を魅了します。

美しく、そして何より力強い造形。
このバケットカーブの豪快さと来たら、すごいです。



ダムサイトに大きな看板があり、こんなイラストが掲げられていました。

早明浦ダムなどがある吉野川のように、この那賀川も渇水と洪水を繰り返す激しい気質の河川と言えます。
現在、洪水調節容量を増し、より高い治水を目指した再開発が計画されています。

イラストの右岸には2門のクレストゲートが追加されています。
心配なのは例の美しい導流壁ですが、イラストでは現状のまま残されている様に描かれていました。



徳島を代表する大型コンクリートダム。

繰り返す洪水と渇水、それに加え、林業の衰退による土砂の流出など、このダムの担う役目はどれも大きく、今後も関心を持って見守って行きたい長安口ダムでした。



長安口ダム
★★★★

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川口ダム

堤高30m
G/P 1961年 徳島県営

2011.04.29見学


ゴールデンウィークの初日、徳島に来ています。
徳島市から国道を1時間ほど、那賀川にある川口ダムに着きました。

下流300mに架かる橋の上から観る山口ダム。
左右3門の巨大なローラーゲートの間にはどっかりと発電所が鎮座しています。

川口ダムは一風変わった発電用コンクリートダムです。



川口ダムの大きさは、堤高30m、堤頂長1825m。
写真で見るよりも、ずっと大きな迫力のあるダムです。

ローラーゲートも高さ13.8m、幅13.0mとかなり立派。



国道脇の左岸に来ました。
無骨なゲートピアがそびえています。

もの凄く男らしいダム。
その第一印象は、最後まで変わる事がありませんでした。



国道に面した一番左岸寄りのピアの側面には誇らしげに大きなプレートが嵌め込まれ、只者では無い匂いを発散しています。

これは心して見学しなくては。
何かとても偉い人の家を尋ねるような神妙な気持ちです。



ダムサイトには施設の案内板などもありますが、来客用の駐車場はありません。
案内板の付近に邪魔にならない様に駐車して天端を歩きます。

大きなピアと巻揚機の建物に囲まれた天端。
装飾の無い無機質な造形、さらには黒ずんだ表面が表情をより重厚なものにしています。



巻揚機の建物の間から下流を見ます。
ごつごつした河床に溜まった、透き通った徳島の水。

堤体の真下はコンクリートが広く平坦に打たれていました。
先端が少し高くなっていて、ゲート放流のジャンプ台になっているようです。



大きなゲートを3門ほど進むと、目の前には発電所が。



剥き出しのクレーンが天端を横切っています。
この写真だけでは、ダムの堤頂部に見えないですよね。



ダムの真ん中に発電所。
川口ダムは、四国電力ではなくて徳島県企業局の県営の発電ダムです。



案内板にあった発電所部分の図解です。
非常に面白い構造になっています。

この図で堤体のようになっている部分は取水口の断面で、ダム本体の断面形状ではありません。
天端は、発電所上にある4本の鉄塔の一番右端辺りなので、天端は橋梁のような構造になっている事が解ります。



発電所の窓を覗くと、社会科見学に来た子供たちの作品が飾ってありました。



振り返ると頭上にはメカちっくなクレーンが。
ここは正に電気の工場の中なのです。

いいなあ、あの運転台。
小さな頃から乗り物大好きだったので、40を前にしてもこういうモノはときめきます。



右岸方向から観た発電所の外観です。
すごく大きな建物です。

念を押すみたいですが、ここはダムのど真ん中。



発電所から右岸にかけての下流は、先ほどの左岸寄りと比べてオープンな感じになっていました。
下流に見える緑色の橋が、冒頭の写真を撮った橋です。



振返ってダム湖を見ます。

右岸に何かありますね・・・。



ダム本体から200~300mほど上流です。
コースターゲートを横倒しにした様な・・・・湖の水中にレールが伸びています・・・。



天端を渡って右岸に来ました。

ほぼ満水の湖水を湛える湖。
ゲート上部から低い位置にある天端通路、巨大で高いゲートピア。
ダムではなくて、もっとメカニカルな別の構築物にも感じます。



発電所部分のクローズアップ。

スクリーンと、コンクリートと、複雑な階段。
それらが水面に浮かんでいます。

何故だか、USJのウォーターワールドのアトラクションを思い出しました。
映画の「ウォーターワールド」は観ていないのですが、たぶんこんな感じの建築物が出てくるのかと勝手に妄想・・・。



てくてくと歩いて、さっき見えていた物の近くに来ました、かなり大きなものです。
制水門のような物には間違いないと思うのですが、はてさて?。



ワイヤーで水中に上げ下げできる事は理解できるのですが・・・。



レールの方向を見ると、丁度川口ダムの中心にある発電所辺りに向いているのですが・・・。

・・・・・。

いやいや、まさかねぇ?。



帰宅して地形図を見ると、右岸からダムの下流に直接送水する送水管がある事が解りました。
例の制水門(?)が送水管に関係しているかは依然不明ですが、ダム本体に関わっていると考えるよりは現実的な気もします。

それとも、ひょっとして、フロートの様になっていて、作業船で曳航して使うものなのかも?。

こういったよく解らないダム設備は、いつも自分の想像を超える代物だったりするので、ついつい突拍子もない空想をしてしまいます。

右岸のこの周辺は、湖畔沿いに公園になっていました。
ダム湖の名前はあじさい湖。



再び、ダム本体に戻って来ました。
下流方向に歩くと、ダムが良く見える場所がありました。

この手のローラーゲートと高いピアが連なるタイプのダムは、物件によっては華奢で線が細い印象のダムもあるのですが、この川口ダムに限っては非常に重厚で、厳ついコンクリートダムらしい堂々たる姿をしています。



発電所から下流の岩盤補強の表情も魅力的。
この凸凹の下流に発電所からの水の出口があります。



徳島県の県営発電所 川口ダム。
重厚なコンクリートの魅力あふれる、男らしい逸基でした。



川口ダム
★★★★


おまけ。

堤高30mのダムで、ど真ん中に発電所を造ると川口ダムの様になりますが、もっと高く、堤高70mを超えるとこんな感じになるのでしょう。
写真は群馬の薗原ダムです。




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旭川ダム

堤高45m
G/FNWP 1954年 岡山県営

2011.4.16見学

十人の侍。


日山ダムの後は、旭川ダムに来ました。
堤高45m、堤頂長は212m。
旭川ダムは、堂々とした佇まいが魅力的な県営ダムです。



県道から脇道に入って、川沿いの道でお近づきになります。
クレストには10門のラジアルゲート。
黒々としたコンクリートの色、質感、まさに男のダムです。

向こうの山に太陽が沈みかけていました。



丸い越流部のマス感、力強いピア、滑らかに下流面に溶け込む扶壁。
昭和のコンクリートダムの魅力をフル装備です。

夕日の逆光を受けるクレストゲート。



再び左岸の県道に戻り、坂道を登ってダムサイトに来ました。
湖畔沿いに広い駐車スペースがあり、周辺にはレジャー客目当ての飲食店や、レンタルボートの桟橋などがあります。

手前には発電用のスクリーン。それとは別に対岸にも取水塔が見えます。



歩いて天端を散策します。
写真左が下流側、貯水池側にはフェンスが張られ、ズラリ巻揚機が並んでいます



フェンス越しに巻揚機。鋳物の重厚感がいいですね。



フェンスがあり眺望は良くないのですが、バンザイショットでフェンスの上から撮影。

ボートの舳先のようなピア先端部です。
この川のずっと上流には湯原ダムがあります。



右岸から観た「舳先」です。
手前のオーバーハング部分のカーブも素敵です。

とにかく、いたる所が昭和の魅力フルスロットルな旭川ダムです。



下流側を見下ろすと、右岸付近はこんな感じで壁に囲われたエリアがありました。
堤体の一番下に何か水没して隠れている感じもしますが、詳細は解りませんでした。



右岸の様子です。
バッチャープラントの躯体が残されています。

水面近くにも、何やら放流口のようなものが見えています。
1972年の水害を契機に、治水・利水能力の向上を図るべく、新しく放流設備が増設されました。
右岸の取水塔で取られた表面水は、堤体直下に掘られた地下トンネルを通って、下流の取水口へ送られます。
工事はダム機能を損なう事なく進められ1984年に完成しています。



右岸沿いにちょっとだけ歩いてみました。
バッチャープラントの遺構の下から撮影しています。

発電所から堤体にかけての滑らかな造形がこれまた趣があります。



岡山県の南北を貫く旭川。
1934年の室戸台風では犠牲者およそ500人、浸水家屋50.000戸という未曽有の水害が発生していました。
これを受け、県は治水を目的とするダム計画を進めましたが、戦争により事業は中断に追い込まれます。
そして戦後間もなく、県百年の計として岡山県の総力を上げて旭川ダムはついに完成します。
それは1954年の事でした。

ちなみに、この年は黒沢明の「七人の侍」が公開された年だそうです。

旭川ダムのクレストゲートは侍の人数よりも少し多いですが、沈む夕日を背に、じっと下流を見つめるゲート達には、流域の県民を守る侍の魂が宿っているようにも見えるのでした。



県民を守る十人の侍。

旭川ダム
★★★★

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