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楢井ダム

堤高38.2m
G/FNWI 1996年 岡山県営

2011.4.16見学


成羽川の中国電力3兄弟を見学した後、東に向かって車を進め、岡山自動車道賀陽ICの近くにある岡山県営の楢井ダムに来ました。

国道から脇道に入り、湖畔沿いの道を通ってダムサイトに到着です。
天端の端に石灯篭が出迎えていました。



楢井ダムは、洪水調節の他に、上水道、工業用水などを目的とする多目的ダムです。

県営コンクリートダムと言えばこんな形かな・・・と、いった風貌です。
でも、よく見ると軽くバケットカーブが付いてたり、さりげなく通好みの部分もあります。



堤頂長が100mに満たないコンパクトな堤体ですが、堤高は38.2mと意外とあります。
下流正面から観たら、バランスの取れたV字の美形堤体かもしれませんが、残念ながら下流から観るのはかなり難しそうです。



天端の左岸側から観るダム湖。
湖は三日月形にカーブしているので実際にはもっと奥行きがありますが、コンパクトなダム湖です。



左岸を歩きます。

クレストに2門の非常用洪水吐、センターのオリフィスも自然越流式です。
オリフィスには鳥篭みたいなフェンスが取り付けられて、流木やごみなどか副ダムダムに落ちないようにしてありました。



この楢井ダムで僕が一番いいなと思ったのは右岸にある管理棟です。

レンガ色の普通の住宅のような外壁。
湖畔側には芝生の生えた裏庭があり、コニファーが植えられています。
芝生にテーブル出してお茶するのもいいし、ハンモックを吊るして昼寝とかも。
屋根の上のトンガリ帽子の中には何等かの機械が入っていますが、大きな屋根の咽かな雰囲気はパンダコパンダの家みたいです。

ちょっと本気で住んでみたくなる管理棟なのでした。



楢井ダム
★★

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黒鳥ダム

堤高15.5m
G/P 1968年 中国電力

2011.4.16見学


成羽川に連なる中国電力の3連ダム、一番下流にあるのがこの黒鳥ダムです。

ダム名の由来はダムサイト右岸の地名からだと思いますが、黒ずんだコンクリートと高く突き上げたゲートピアの組み合わせは、黒い水鳥を思わせます。
ダム名を直訳すると、ブラック・バード、でも時事ネタとしては、ブラック・スワンって感じでしょうか?。



堤高は15.5m
コンクリートの堤体は低く、主にゲートが水を堰き止めるタイプのダムです。

自称コンクリーターを名乗って来た僕ですが、なぜかこの種のダムにも強く惹かれるものがあります。
もっと大きなダムは他にもあるし、地味でどちらかと言うとダムっぽくないタイプなのだけど。

何故僕がこのタイプに惹かれるのかを考える為に、この種のダムを訪問して、またよく解らないままズブズブと深みに嵌っている気がします・・・。



天端は散策できるようになっていました。
コンクリート舗装の細い通路、二輪車のみ通行可です。



ゲートピアの注意看板。

「昇るな あぶない」



「あがってはいけない」



「降りるな危ない」



「まぜるな危ない」
・・・・。



えーっと、(汗

天端を渡って左岸に来ました。

このタイプのダムは、ゲートが目線の高さで、比較的間近で眺める事が出来ますね。そういう所がいいのかなあ。

あと、このタイプのゲートピアは、巻揚ワイヤーが天端の上を横断しているのも好きです。天端を歩くとワクワクしませんか?。それと、グリスの匂いも好き。



黒鳥ダムで面白いのは、ゲートピアの壁面にこれでもかという大きな文字でナンバーがふってあります。

写真を撮っていたら向こうからジョギングイベントのランナーが走って来ました。
笑顔がいいですね。
互いに挨拶を交わし、手を振ってすれ違いました。



黒鳥、田原、新成羽川と、およそ2~3キロ於きにダムが連なる成羽川。

下流から、黒鳥ダム。



その上流に田原ダム。



そして新成羽川ダム。



こうやって並べてみると、なんだか生物の進化過程のイラスト(猿から現代人に・・)みたいに見えませんか??。

でも、実は3基とも1968竣工の兄弟ダムなのです。
こう見えて本当は同い年なんだから面白いですね。

黒鳥ダム
★★★


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新成羽川ダム

堤高103m
GA/IP 1968年 中国電力

2011.4.16見学

デザインクオリティ。


昔々、高校の部活は文化系でしたが、とても熱心に打ち込んでいました。
今思うと、高校は部活をする為に通っていた気がします

2年の春、新入生が入部してきました。
女子が沢山入部してきたのですがその中で、田中さんと、畑中さんという子が居ました。
二人とも控えめな性格で、背格好も近く、学校からみた家の方向も同じで、苗字もなんとなく似てたので最初の頃はどっちが田中さんで、どっちが畑中さんなのか区別が付きませんでした。
その後、部活の指導をしながら会話をするうちに、よく似ていたはずの二人は、当然ながら全く違う個性を持っている事が解ってきました。

何故、こんなどうでもいい事を話すかと言うと、ダムに興味を持ち始めた頃、まるでその時の、田中さんと畑中さんのように区別が付かなかったダムがありました。

ひとつは阿武川ダム、そしてもうひとつが新成羽川ダムです。


田原ダムの左岸を上流に向かって車を走らせます。
ほどなく新成羽川ダムに到着しました。

パーキングスペースに車を停めると同時に、堤体が見えるポイントにダッシュ!。

ぐわー!!かっこえーっ!!

大きく広げた美しい両翼。
縦横の継ぎ目ごとに異なる表面の色が翼から生える羽根のよう。

凛とした佇まいは、気品と共に心地よい緊張感を持ち、ピンと張り詰めたオーラが漂います。



クレスト中央に6門の洪水吐。
垂直に切り立った扶壁にはゲートのアームが見えています、ラジアルゲートですね



導流壁に沿って視線を降ろします。
堤体の直下は棚のようになっています。

右岸にガントリークレーンが見えますね、そう、この広大な棚の下には発電所が隠されているのです。

越流面のサーフェースにも注目。
センターが隆起した有機的な形状になっていました。



ちなみに、ダムサイトの駐車場で、一刻も早く車から降りてダムに駆け寄りたいと思うのはダム愛好家の性ですが、車からダッシュで飛び降りる時は、慌てずちゃんと「P」に入れて降りましょう。

以前、ダムが見えて興奮のあまりシフトが「D」のまま飛び降りた事が・・・
・・・2度あります・・・。
慌てて無人の車を追いかけたり、自分の愛車に轢かれそうになりますから、くれぐれもご注意を(汗)。

何故、今回のレポートは関係のない話題でやたら尺を伸ばそうとするかと言うと・・・・。

なんと取水口の工事の都合で通常入れるはずの天端に立ち入る事ができなかったのでしたー。
工事は平成23年の5月10日までとの事なので、現在は天端に入れるのではないかと思います。



仕方ないので、別のアングルを探してパーキングから少し歩いてみましたが、あまり良いポイントは無さそうです。

こりゃ、対岸の右岸に行かねばなるまい。
車に戻り、再び下流の田原ダムまで戻って、今度は対岸の右岸から再アプローチです。



田原ダムからの道中。
田原ダムの湖面から古いレンガ造りの壁が覗いていました。
建物の雰囲気から発電所の遺構に間違いありません。

新成羽川ダムと言うからには、旧成羽川ダムと言うのもあるのでは???
と、勝手に妄想を膨らましていたのですが、実在した(!)旧成羽川発電所はこれとは別に残っているそうで、じゃあ、この遺構はと言うと1902年に運用が開始された笠神発電所ではないかと思います。

成羽川は岡山県で最初に発電所が造られた河川ですが、この笠神発電所こそ岡山県最初の発電所なのだそうです。
また、この発電所へ水を送った取水堰堤も田原ダムの湖底に永久保存されているそうです。



思わぬ遺構の発見にわくわくしながら登ってきました。
視界が開けると、まさに目の前に新成羽川ダムがドーンと構えてこちらに睨みを効かせていました。

蛇に睨まれた蛙のように、ただ立ち尽くして眺めるばかりです。



洪水吐のジャンプ台を兼ねる発電所を内蔵した大きな棚。
群馬の園原ダムも似たレイアウトをしていますが、園原よりも低く構えすっきりとしています。(園原+畑薙第一÷2=新成羽川 ??)

また、壁面はスクリーン状の構造物が並び、どうなっているのか詳細がつかめずミステリアスです。

手前のトンネル状の穴は仮排水でしょうか?。



ほぼ正面からの堤体。
睨みを効かしていた6門のラジアルゲート。

ゲートが小さく見えますが、新成羽川ダムは堤高103m、堤頂長289mの大きなダムです。特に103mの堤高は、重力式アーチダムでは国内1位の高さを誇ります。

事業者は中国電力、ダム目的は発電の他に工業用水にも使われています。



じわじわと坂道を登り、表情の変化を楽しみます。

通常はこちらの右岸からもダムサイトや天端に行く事が出来るはずですが、県道から脇道に入るダムサイトまでの道は中国電力の私道の為、この日は例の工事の都合で通行禁止となっていました。

残念。



堤体の下部に太い水圧鉄管が露出し、滑らかなボディのアクセントとなっています。

コンクリートから突き出した、剥き出しの金属パーツ。
こういう部分もダムの魅力のポイントではないかと。

観ていたら、頭の中が痺れてきました。
ダムジャンキーには毒だね、このカッコよさ。



ずっと以前から観たいと思っていた新成羽川ダム。

重力式の重厚さと、優美なアーチ式の特徴を併せ持つ重力式アーチ。バランスも良く、美しい滑らかなボディ、独創的な発電所のレイアウト。
ひとつのオブジェとして鑑賞しても、この新成羽川ダムのスタイルはかなりの完成度ではないかと思います。

また、どう眺めても、細部に目を凝らしても、装飾的な部分はどこにも存在していません。それなのに、僕の心を鷲づかみにするクオリティの高さはいったい何処から来るのか。

全ての要素はダムの機能に裏打ちされ、一切の無駄も、スキもありません。
このダムを設計された方の高い志と、優れた美的感覚をひしひしと感じるのでした。



新成羽川ダム
★★★★★

ちなみに、もう阿武川ダムとは区別が付きますョ(笑)


おまけ。

新ダムメニューとして開発した「新成羽チャーハン」です。
仕上げにレタスを加えてひと炒め。

熱を通して、しんなりした葉物野菜のレタス入り。
しんなり葉・・・・しんなりは・・・



えっ?

新成羽は、「しんなりは」じゃなくて、「しんなりわ」だってぇ!?

がびちょーん。

おわり。

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田原ダム

堤高41m
G/P 1968年 中国電力

2011.4.16見学


小坂部ダムを観た後、再び河本ダムの正面を通過して県道を南下します。
成羽川を渡る橋まで来ると右手に現れるのが田原ダムです。

成羽川には2~3キロおきに中国電力の3基の発電用ダムが並んでいます。
田原ダムは真ん中のダムで、下流に黒鳥ダム、上流は新成羽川ダムです。



堤高41m、堤頂長206m
コンクリートダムとしては中規模の高さですが、ボトムの長い広大な下流面は、独特の堂々とした佇まいがあり、とても魅力的に見えます。

この田原ダム。
何処かで見覚えありませんか?

どこだっけなーと思っていたら、ダム技術センターのフォトコンテストで最優秀賞の作品が撮影されたダムでした。
http://www.jdec.or.jp/00top/03info/photo_bin/photo_con_awards.html

次回のコンテストの募集を告げるポスターにも写真が使われているので、ダム管理所の掲示物で時々目にしていたダムなのでした。



控えめなグレーのゲートが返って迫力があります。
米空軍の機体色みたい。

ラジアルゲートのアームはNトラスですが、縦軸が等ピッチなので、斜めの鉄骨の角度が徐変して独特の美しさがあります。

越流面のボリューム感、スッキリとした角ばったゲートピア。
甘すぎず、辛すぎず、まさにいい塩梅です。



ダムサイト右岸より田原ダムの横顔。

勾配がややなだらかに見えます、錯覚かな?。
この辺りが堂々と見える要素になっているのかも。



天端は自由の立入できます。

車のタイヤの跡が見えますが、車両通行可なのかは不明です。
もし通行可能だとしても、普通車できりきりの幅です。



ダム本体の付近が最も広く、川幅よりも上下の長さで容量を確保している貯水池。
およそ2.5km上流の新成羽川ダムまで、蛇行しつつもほぼ同じ川幅です。



6門あるクレストゲート。
上下とも金網のフェンスがある為、あまり眺望は良くありません。

ゲートごとに回転灯がついています。
ゲートを開き、放流する時にはくるくる回転したりするのでしょうか?。



フェンスの隙間から撮影。

副ダム的なものは無いみたいですが、ブロックが並んでいます。
越流面の直下にもありますね。



下流側右岸に発電所です。

遊牧民タイプの可愛い丸い建屋です。
内容物が丸い水車なので、発電所の建屋は案外この形がスタンダードなのかも。



下流河川の反対側に制水門のような設備が見えますね。

地形図を観てみると、発電に使った水をそのまま放流せずに下流の黒鳥ダムの貯水池上部までバイパスで通すトンネルがあるみたいです。



継目が放射線状に延びてカッコイイですね。
少し身長が足りませんが、なかなかの男前ダムだと思いました。

次はいよいよ新成羽川ダムに向かいます。



田原ダム
★★★★

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小坂部川ダム

堤高67.2m
G/AP 1954年 農林水産省

2011.4.16見学


河本ダムでのほほんとした後は、新成羽川ダムに行く前に小坂部川ダムに寄り道する事にしました。
下流の町からほんの2~3キロ山に入った場所なので、ダムまで楽勝だと思っていました。

ところが、

集落の外れから、1車線の狭道が断崖の中腹を地形をトレースしながらぐねぐねと・・・。
山の表情は険しく、待避所もほとんどない狭道を、対向車が来ない事を祈りつつひたすら登って行きます。

やがて谷川の木々が途切れ視界が開けました。
小坂部川ダムに到着です。



クレストには3門のラジアルゲート。
飾り気のないグレーの塗装色が返って只者ではない迫力を醸し出しています。



それに、なんという荒々しい肌。
コンクリート表面の渋さ加減はMAXレベルです。



ぐねぐね狭道をフィニッシュしてダムサイトに到着しました。
ここで初めての対向車、今日は運が付いています。

クレストゲートですが、割と最近工事が行われていたみたいです。
オリジナルの扶壁の上に新しいコンクリートが増設されています。

ゲート型式は変更されていないと思いますが、アームの支点部分が下流方向にオフセットしている様です。



ダムの下には発電所がありました。
狭い敷地にびっちりと収まっています。



よく見ると、ダム側の斜面は石張になっていました。

1954年竣工と、戦後組の小坂部川ダムですが、工事の着手は戦前の1940年まで遡ります。
戦中には中断していたのかもしれませんが、14年という工期は当時のダム建設としてはかなり長期だと思います。

この石張りは、工期の最初に造られた古い部分なのかと想像。



ダムの右岸には管理所があり、少々の駐車スペースもあります。
天端は車両進入禁止(渡った対岸は行き止まりです)

プランターが並び、パンジーやチューリップが迎えてくれています。



天端から下流を見ます。
厳しい地形、深い谷の小坂部川です。
工期14年が難工事であった事を思わせます。



急峻な地形で、ダムサイトにもほとんど平坦な場所がありません。
管理所は岩盤の上に懸崖構造のように建てられています。
坂本ダムなどのアーチダムのダムサイトをイメージさせる急峻さです。

時代が時代なら、ひょっとしてアーチ式で造られたかも。



静かな湖畔。
沢山の水を湛えています。

農業用のかんがい用水を目的として、このダムは建設されました。
ダム湖は美穀湖と名付けられています。



ダムの左岸よりに、半円形の古風な外観の取水設備。
網端の張り方に小技が効いています。



対岸の親柱には凝ったデザインの照明が備わっていました。
多分竣工当時からのものだと思います。

農業用のコンクリートダムは、必ず何処かにこんな感じの装飾が施されています。
古いダムの装飾部分には、当時の人々のいろんな思いが詰まっている気がします。



ダム左岸の下流側。
岩盤をくりぬいて倉庫のようになっていました。
(一部はトイレかな?現在は使えません)

建設プラントの跡を利用したものかと思います。



天端から左岸を見上げると、そこにもプラントの遺構が覗いています。

周辺の木々が成長して、朽ちたコンクリートを覆っています。
完成からの長い年月を感じます。



風格ある渋い肌。
小坂部川ダムはオールドダムファン必見の男前ダムでした。



小坂部川ダム
★★★★

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河本ダム

堤高60m
HG/FIP 1964年 岡山県営

2011.4.16見学


千屋ダムの後は、同じく県営ダムの河本ダムに向かいます。
国道180から県道に右折、川沿いの道を進むと、河本ダムは唐突に姿を現します。

T字の川の合流点にあるので、車を走らせながら不意に真横を見ると、いきなりダムの真正面が現れるのです。
この感じ、高根第一ダムによく似ています。高根第一の場合、うっかりしているといきなり後ろを取られるので、もっと驚きます。

いずれにせよ、脇見運転にならない様に要注意。



真正面からの河本ダム。
2門のクレストゲートは完全に堤体に埋まっていて、クレストはとてもスッキリしています。

川原まで降りてゆっくり眺めた後は、ダムサイトに向かいます。



右岸の道を登ってダムサイトに来ました。

下流面の勾配が異様に切り立っています。
そう、河本ダムは国内でわずが13基という、中空重力式で造られた希少なダムなのです。



クレストの高欄の高さから、一気に急勾配が始まっているのも、シャープな印象を強調しています。



天端は車道になっています。
朝の河本ダム、散策してみましょう。



お水たっぷりの貯水池。
ダム目的は発電、工業用水に加え、洪水調節も行っています。

左岸には取水設備と一体に管理所があります。



天端から下流を観ます。
さっき登ってきた右岸の道沿いには沢山の桜が植えられ、見頃を迎えていました。



写真を撮っていると、天端の掃除におじさんが来ました。
特にごみが落ちている感じでもないので、毎朝の日課となっているのでしょうか?。

「おはようございます」
先に声を掛けて下さったのはおじさんでした。

「桜を撮りに来たの?」 
「いえいえ、ダムを撮らせてもらっています」
「何処からです?」
「岐阜から来ました、先ほど千屋ダムを観て来ました、この後は新成羽川に行こうと思っています」

目的が桜じゃなくてダムだと聞いて少し残念そうな感じ・・・。
とても桜を大切にされているんだと思いました。

「お掃除ご苦労さまです、ダムの職員さんですか?」

「いやいや、わしはただの泊のおっさんや」

そう言って管理所に戻って行かれました。



再びアングルを替えて下流面を見学。

クレストゲートから下の大きくカーブした越流部は、平面的な非越流面と全く違った表情です。
真っ直ぐに伸びたスクエアな減勢池、副ダムの所だけ導流壁が外側に開いています。

って、眺めていたら・・・。



じょぼじょぼじょぼ・・・。

唐突に放流(???)開始。

さっきのおじさんからのファンサービス???

ちなみに、本当の放流管はその上にバルブがあります。



質素ながら堅牢そうなゲート室。
外壁の一部は縞鋼板で造られています。

天地に低く造られたゲート室は壁面に開度を示すゲージがありました。



左岸の管理所辺りから。

水位が高いですね、頼もしいです。
7月1日から9月30日までの洪水期は利水容量を下げて洪水調節容量を確保しているようです。



中空重力式の河本ダム。

それを意識すると、なんとなく足音が響くような気がします。
(本当はそんな事は無いと思います。ダムに酔ってるだけです 笑)



無精ひげのように、鉄筋が露出していました。
天端の路面はビルのように鉄筋コンクリートなのかと思います。

中空重力式のダムは、外観上は中空だとは解りません。
HGの証を発見か??



再びダムの右岸へ。

フーチングにある階段。
途中で立入禁止になりますが、少しだけ降りる事が出来ます。

びしーっと真っ平な下流面。
この中身は中空なのですよ。



風にあおられて、桜の花びらが舞っています。

風が弱まると、花びらはダムの表面に舞い降りて、急勾配をコロコロと転がり、コンクリートの継ぎ目に溜まっていました。



岡山県営の中空重力式 河本ダム。
シャープな風貌とは裏腹に、どこかのんびりとして優しいキャラクターのダムでした。



河本ダム
★★★★

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千屋ダム

堤高97.5m
G/FNWIP 1998年 岡山県営

2011.4.16見学


全国47都道府県で最もダムが多いのは?
答えは190基を誇る北海道ですが、面積の広大さを鑑みると、2位(169基)の岡山県が実質的には日本一のダム王国だとも思えます。(大半がアースですが)

今までこのブログでは500基以上のダムをレポートして来ましたが、その内、岡山県はわずか5基。
これじゃああんまりだ、と、言う事で、4月のとある土曜日に岡山へ向かいました。
いつものように日帰りですが、今日は周れるだけ巡ってみようと思います。
最初に訪れたのは中国道新見ICから10キロ程の所にある、県営の千屋ダムです。

堤高は100mの大台にわずかに届かない97.5m。
でも、集落の外れにそびえ立つ巨大ダムは、実際の数値以上の迫力があります。



左岸の道を登ってダムサイトへ。

1998年竣工と比較的新しい千屋ダム。
南東に向いている事が良いのかコンクリートにもまだ若々しさが感じられます。



両脇を自由越流式の洪水吐で固め、クレストセンターにはローラーゲート4門、さらに2門のオリフィスを配備。

ごちゃつきそうな部分は、シャープな導流壁の造形でスッキリ魅せています。



左岸には管理所。
駐車場から近い一部分は展示施設となっています。

小さな建物に見えますが、奥行きがあって実はかなり大きな建物です。



お洒落でしょ。
こじゃれたレストランみたいな感じ。

この辺りから只者でない感がヒシヒシと・・・。



展示内容はダムの目的や設備の紹介など、一般的なものなのですが見せ方が凄い。

ダムの模型が電動で真っ二つに割れ、片方がズズズと地下に埋没して放流設備の断面を見せてくれます。

うわー、秘密基地だっ!

カッコ良すぎて、社会見学に来た小学男子には、逆にダムの事は頭に入らないかも
ギミックが力作すぎる悲劇。



左岸には駐車場の他に石碑など。
このモダンな建物は巡視艇の格納庫です。



自由越流式の非常用洪水吐は、左岸側4門、右岸側7門の計11門。

何故こんなに沢山ずらっと並べるかと言うと、沢山あった方が越流部分の長さを沢山確保できるからです。
必要な放流量を確保したいのなら、大きな開口部の洪水吐をドカンと開ければよいとも思えますが、越流部の長さを長くすればするほど、同じ放流量でも越流部分の水の厚みを薄くできる。

つまり、洪水吐の開口部の天地を薄くする事が可能となり、それは最終的にはダムの堤高を低く抑え、省コンクリート、省コストに繋がると言う訳なのです。

うーん、なるほど。



千屋ダムの目的は洪水調節の他に、河川維持、水道、工業用水それに発電と多岐にわたります。

洪水吐の中から下流の集落が見えました。
なんとなく、象徴的な風景。



天端を歩きます。
90年代に竣工したダムらしい、装飾的な天端です。



クレスト中心にそびえ立つゲートピアです。

クレストゲート4門、オリフィス2門、それに堤体下部にあるコンジット用のコースターゲート。合計7門のゲートが行儀よく効率的に1列に並んでいます。



千屋ダムの名所となっているのは、2箇所にある赤い屋根付き展望スペース。
ダム設備としての役目はなく、純粋な展望台です。
他にもクレスト中心部に屋根なし展望テラスが用意されています。

壁には清流を泳ぐ渓流魚のレリーフ。
魚や水鳥などのモチーフでダムを飾るデザインは、今までどちらかと言えば否定的だったのですが、千屋ダムのレリーフは出来も良く、なかなか良いなと思わせます。(原画を展示施設で見る事も出来ます)

動植物のモチーフはダムのハード的な面では関係がありませんが、防災や河川維持を目的とするダムとして、実はとっても強い繋がりがあります。

「ダムは環境破壊じゃないよ」
「環境を守る為に、ダムを作ったんだよ」

と、言う事を訪れた方々にイメージして頂けるよう、こういった装飾は有効かもしれません。

渓流を泳ぐ魚のモチーフを通じて、コンクリートダムと、環境と、人とを結びつける事が出来るのかも。
今回、千屋ダムを訪れて、ダムの装飾に対する考えを改めました。



天端から下流を見ます。
減勢池に突き出しているのはコンジットゲートの建屋です。



歩いて右岸まで来ました。
端正な出で立ちの千屋ダムです。



赤いトンガリ屋根の展望台、中心にある展望テラス、手前の四角い建物はエレベータ棟です。
この3箇所の台座部分だけ、型押しコンクリートで石積風に仕立ててあります。
また、さらによく見ると、これらの建物の外壁には水平方向にラインが刻まれ、他の部分とは違った印象になっています。

その背後にあるゲートピアは、必要な大きさを確保した上で、壁を極力薄く、下部を絞るなどの形状で重い印象にならないような配慮が伺えます。



クレストに施されたこれらのデザインの意図は、ダムを下から見上げた時に解りました。

沢山の放流設備が並び、一見すると物々しい雰囲気になりそうなクレスト部ですが、自然と視線が赤いトンガリ屋根に集まって、背後の大きなゲートピアの存在を和らげています。

千屋ダムは集落の端にあり、沢山の家々から見える場所に建設されています。
災害から守る為の大切な施設ですが、すぐ下に住んでおられる方々にとって毎日その姿を見るのは、玄関先に常に非常持出袋を置いているような、軽い緊張感を持たれるかもしれません。

千屋ダムの特徴的なクレストのデザインは、非常用洪水吐の存在を軽減し、優しい表情にする為の配慮ではないかと感じました。
(※ あくまであつだむ宣言!の個人的な推測です。オフィシャルなものではありません)



優しいコンクリートダム。

千屋ダム
★★★★

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石田川ダム

堤高43.5m
R/FN 1969年 滋賀県営

2011.4.2見学


この日、午前は別の用事があり、午後からの余った時間でぶらっと琵琶湖の湖北にドライブに出かけました。

奥琵琶湖パークウェイ、レンタルボート屋、お昼を食べに行く湖畔のロッジ、テントを張った入り江・・・。
湖北は古い思い出も多く、とても好きな場所なのでした。



琵琶湖の北西にある今津から山の方に進路を変え、ダムに向かいます。
山間の集落に入ると急に空気が冷たくなりました。

集落の奥をずんずん進むと、路肩の残雪の上に落石がゴロゴロと転がっています。
つい最近崩れた雰囲気に少しドキドキしながら慎重に進みます。

ダムサイトの「アルファロメオのマークの蛇」みたいな、ぐねぐねしたカーブを登り到着しました。
滋賀県営の石田川ダムです。



残雪の残る駐車場でダウンを着込み散策開始。
4月に入っていますが、この地はまだまだ冬眠から覚めたばかりの様です。

ダムサイト右岸に管理所やモニュメント。
続いて、トンガリ帽子が特徴的な洪水吐ゲート。

トンガリ帽子は一見ファンシー調に見えますが、雪深い地にあってマジ物です。



洪水吐の設備から連続して取水設備がドッキングしています。
無駄の無いレイアウト。

石田川ダムは洪水調節と既得のかんがい用水の補給(河川維持)などを目的としています。



寒そうな空、山々にも残雪が残っています。
突然の訪問者に、驚いた水鳥がばたばたと飛び立ちました。



山の中にあるダムですが、ダムサイトに休憩所もあり、ちょっとだけ公園化もされています。

天端の通路も部分的に石畳みが使われていたり、ウッド調の手摺などか使われています。
中央にはテラス風に仕立てたエリアなどもあり、とても凝ったデザインとなっています。



リップラップは軽く整形してあるのですが、使われている岩が鋭く尖った「ガレガレ感」たっぷりのハードなもので、天端のフレンドリーな印象とは少し違って見えます。



しかも、天端の端っこには、ごっつい大岩が並べられています。
ハードロック・石田川。

手摺を境界にコントラストが激しすぎ。
いかにも安全地帯という天端から見るリップラップは、奇岩が有名な観光地に来たと言う感じです。



非常用の洪水吐の脇には、利水用の放流口があるみたいです。
冷たそうな透き通った水を放流中。

洪水吐はジャンプ式のように見えますが、地山に埋め込んだ形になっていて、しかも減勢池が見当たりません。
減勢池どころか、ジャンプ台の真下は地山の土地になっているのですが・・・。

しかも、アルファロメオの蛇の真横近く・・。



って事で近寄ってみたら、こんな所まで来てしまいました。
通常なら減勢池のある所です。

この場所は、車道のすぐ脇なのですが特に規制もされていない感じです。
但し、一面に鹿糞だらけなので、凸凹したソールのシューズだとお土産を沢山頂くので注意が必要です。

実際にクレスト放流がされる時はどうなるのか・・・。
ちょっと不安にもなりますが、そもそも、この石田川ダムの場所は、そんな天候の時に一般人が来れるような場所ではありません。



ユニークなゲート施設。
険しい表情のリップラップ。
真下から見上げる事の出来るジャンプ台。

中規模ながら特徴や見どころの多い石田川ダムでした。



石田川ダム
★★★

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永楽ダム

堤高40m
G/A 1967年 大阪府営

2011.3.26見学


新滝の池のすぐ近くには、アースダムの滝の池や、ロックフィルの稲倉池などがあるのですが、そろそろ日が暮れそうなので、2キロほど西にあるコンクリートダムの永楽ダムにやって来ました。

下流左岸の狭道を進むとダムの真下に到着。ちょうど職員の方が帰宅の為施錠をしておられました。
挨拶をして門の外から写真だけ撮らせて頂きました。
(敷地内は日中であっても立入禁止ではないかと思います)



一度下流に戻って右岸から天端へ向かいます。
永楽ダムは集落の少し奥まった所にあります。



路肩に車を停めて散策します。
天端の幅は3m弱くらいでしょうか?自動車は侵入禁止です。



天端に一歩足を踏み入れた時から、妙な違和感がありました。

どうも、高欄がやたらと高いのです。

普通にカメラを持って撮影。
コンクリ高欄の高さは胸元から肩くらいまであります。



なので、下流の様子を撮影するのも一苦労です。
クレストからの細い導流壁の脇に、水槽のようなものが見えます。



ダムの真下には浄水場がありました。
ダム目的は農業用水だったと思うので、ちょっと意外でした。

そういや、淡路島の上田池も農業用のダムだけど浄水場があったと思います。



天端を歩いて左岸まで来ました。

下流面を見ると段差があります。
この段差は右岸側にもあって、中央だけ堤体が少し厚くなっている様です。



再び右岸に戻ります。

クレストには、小さなローラーゲートが1門。
開閉の駆動が少し変わっていて、二本一対のラックで昇降する機構でした。
このサイズのゲートなら、この方がメンテナンスが容易なのかなと思いました。



夕暮れの静かな貯水池。
うす暗くなってきた事もあるのですが、なんだかうすら寂しい感じのダム湖です。

北風が吹いてきました。寒っ。



おまけに、なんと雪まで降って来ました。
今日のダム巡りはこれでおしまいにして、帰路につきました。



永楽ダム
★★

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新滝の池

堤高26m
G/A 1995年 大阪府営

2011.3.26見学


阪和自動車道 泉佐野JCTのすぐ近く、「新滝の池」はあります。
重力式ダムなのにアースダムを思わせるダム名も印象的ですが、何よりこの新滝の池には他のダムにはない特徴があります。

阪和道の高架を潜ってすぐに駐車場。
都市近郊とあって不法投棄対策の為か、ここから先は自動車では行けません。
後は徒歩ですが、目指す新滝の池はもう目の前です。



そう、新滝の池は「赤い堤体のダム」として、マニアの中では有名な物件なのです。(誰だっ? ○〇○専用とか言ってる人は! 笑)

先に訪れているマニアの方々の写真よりも木々が成長していますね。
自慢の赤い堤体も隠れ気味となっていました。



天端は自由に散策できます。

大きくカーブしたアーチ状の天端。
重力式コンクリートダムなので、曲線重力式の堤体となります。

色が赤い事だけじゃなくて、実は特長いっぱいの新滝の池。



面白いのは、フィルダムのような洪水吐が採用されている事です。

100年前の黎明期のコンクリートダムならスタンダードな仕様ですが、最近のコンクリートダムでは例が無いのではないでしょうか?。



洪水吐から下流に細く長いスロープが伸びています。
その先に見えるのは阪和自動車道、車の騒音が聞こえる距離です。



吐の上から下流面を見ます・・・?

そこに有るはずのコンクリートの下流面がありません。
下草の生えた土の斜面。
おまけに沢山の木々が植林されています。

な、な、なんじゃこりゃ!。

このダム、アースダムじゃないのかっ???????????・・・。
頭の中は、ムーミンの「にょろにょろ」のように疑問符が行進中。



天端を歩いて左岸に来ましたが、やっぱりアースダムに見えます。

うーむ。

天端をあっち行ったり、こっち行ったり、何度も往復してこのダムが一体何者なのか考えます。
頭の中はフル回転、ハムスターエンジン全開、滑車高速回転中・・・。



茂った下流面の木々の下。

土堰堤のようになっている一番下にはコンクリート製らしき段差があり、「土の流れ止め」のような構造を思わせます。

植林された土堰堤はフェイクで、その内部にはしっかりとコンクリートの堤体が隠されている様です。

冷静に考えれば、アースダムの上にコンクリートの天端を乗っけるような野暮な構造はあり得ないのですが、とにかく初めて見る不可思議な下流面に面食らってしまいました。



なんとなく落ち着いた所で左岸から堤体を眺めます。
湖畔にはベンチも置かれています。

よく見ると、赤色の部分は型押しコンクリートで、石積風の仕上げとなっていました。
水面とのコントラストも美しく、目が慣れると逆に通常の無機質な打ちっぱなしコンクリートが妙に味気ないものに思えて来ました・・・。

ぼやっと頭の中に思い浮かんだのは、赤レンガの装飾が美しい、山口の廃ダム・桂ヶ谷堰堤でした。

赤い色ばかりが有名な新滝の池ですが、実はとんでもなくデザインコンシャスなダムだった事に、この時、はたと気が付きました。



下流面を覆う土の地面、そこに植え込まれた樹木。
これは決して残土を処理したとかではなく、景観に配慮した「デザイン」そのものだったのです。

それが分かると、この不思議なダムへの疑問がスルスルと解けて行きます。
下流面に樹木を植える為に、堤体は非越流式となり、洪水吐もフィルダムのようなタイプと言う事か。
なんという拘り!。

また、赤い堤体は、植込まれた植物の緑色と補色の関係にあり、堤体は植物を、植物は堤体を引き立てる効果があります。

この新滝の池ように、人工の素材であるコンクリートと、自然の植物とが、完全に共存したデザインのコンクリートダムは他では見たことがありません。
「新滝の池」という、ダムと言う言葉の付かない名称からも、強い拘りを感じる事が出来ます。

もしも、日本中のコンクリートダムがこんなデザインを採用していたら、ひょっとして何かが変わるかもしれない。
そんな事を思わせる、素晴らしいデザインのダムだと感じました。



新滝の池
★★★

ちなみに、この新滝の池、赤い色が示す通り、設計は泉南農業公園調整池ダムと同じ共生機構株式会社さんなのだそうです。
つくづく面白い会社だなと思いました。

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