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都田川ダム

堤高55m
R/FAW 1984年 静岡県営

2010.9.11見学


都田川ダムは静岡県営の多目的ロックフィルダムです。
コンクリートダムでは数々の有名なダムを配する静岡ですが、意外にもロックフィルはこの都田川ダムも含め4基しかありません。

県道から脇道に入ってダムを目指します、道が狭く複雑で、迷いそうですが手書きの案内看板もあり無事に左岸に到着しました。

向うの山に風力発電の風車が見えます。



左岸からの堤体。
細かめのロック材、リップラップの上にも植物が生えています(トピアリーかな?)



天端は車両通行禁止。
地元の方の利用を配慮してか、完全には禁止をしていないみたいです。
実際、時折軽トラックが行き来していました。

左岸にしっかりした駐車場があるので、車を停め歩いて天端に向かいます。



シンプルな天端。
高欄の部分はずっと植込みになっています、緑の高欄。

その為、下流のリップラップは見下ろし辛い感じです。
ここを散歩される地元の方にとっては、リップラップを愛でるよりも、植栽の方がいいですもんね。



湖水たっぷりの貯水池。
水も透明感があり綺麗でした。



右岸にある管理所。管制塔みたいでカッコいいですね。

洪水調節も目的としている都田川ダムです。
土砂降りの中、深夜でも煌々と灯りが灯っている管理所を想像すると、ゾクッとするカッコ良さです(妄想)

手前は監査廊への入口でしょうか?
対岸の左岸にも監査廊の出入り口がありました。



右岸にある洪水吐です。
上下に長く、ちょっと潜水艦を思わせるシルエットとボリューム感です。

一段低い部分が常用吐でしょうか、減勢のブロックが可愛いです。



特徴的なのは、越流式の洪水吐の手前に遮水壁があり、鋼製ゲートの放流設備がある事です。
立木とフェンスが邪魔でよく見えないのですが、赤く塗装した2門のラジアルゲートの様です。

ラジアルゲートなのに昇降はワイヤー巻揚ではなくスピンドルに見えます、案外初めて観た気がします。このサイズの小柄なラジアルゲートではよくある事なんでしょうか??

制御盤も見えますが、手動ハンドルもしっかり付いています。



車でぐるっと移動して、ダムの真下に来ました。
下流に橋もあり、正面から観る事が出来ます。

ロックフィルのダム本体と、洪水吐の間に地山が残っています。
関東なら小河内タイプ、東北なら寒河江タイプ、中部なら牧尾タイプと言う配置です。(勝手に決めてますが)



下流面のグリーンはやはりトピアリーでした。
3文字目が「こ」なので、たぶん「みやこだがわ」



地山を挟んだ洪水吐。
例のラジアルゲートから維持放流がサラサラと流れていました。



都田川ダム
★★

| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム静岡県 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
水窪ダム

堤高105m
R/P 1969年 電源開発

2010.9.11見学

間組ロックフィルの伝承者。


秋葉街道(国道152)から水窪川に沿って山に分け入り山道を登ります。
谷がいっそう深くなり、そろそろかな?と思いつつトンネルを抜けると、目の前に巨大な岩の壁がドーンと現れました。
天竜川水系水窪川 電源開発 水窪ダムです。

トンネルの出口付近に小さいながらも駐車スペースがあり、100m超えの堂々とした堤体をほぼ真正面から観る事ができます。
ここからは放流や取水の設備も見当たらず、シンプルなダムだと思いました。



堤体の左岸まで車で来ました。
周辺に駐車場はありませんが、路肩が広く、道路脇に停める分には問題ないと思います。

正面から見た時にはあまり気が付かないのですが、水窪ダムは大きくアーチ状に湾曲した堤体が特徴です。
また、堤頂部に柵などが無いのも珍しい仕様です。



それに、天端から見下ろす下流面はとても急勾配に感じます。

事実、ダム標準断面図によるいと、下流面の勾配は1:2と通常よりも急勾配となっています。(上流面は1:2.3)

つまり、高くて、急で、柵が無い、マニア的にとっても素敵(?)なダム。
それが水窪ダムなのです。



綺麗なアーチを描く下流面。

コンクリートダムと違い、岩や粘土が素材のダムなので、堤体をアーチ状にするのには、他の理由があります。
ダムの中心部分を少しでも標高の高い上流側にずらす事で、堤体積を少なくする事ができ、建設コストを抑える効果があるのだそうです。
1:2の急勾配も、こういった目的に基づく設計なのかと想像します。

ざらざらした表面のロック材、軽く整える程度に整形されたリップラップは、何処かで見覚えがあります。



はい、下の写真は御母衣ダム左岸の山中にある大黒谷ダムです。
大黒谷ダムは、堤高34mと水窪ダムと比べてふた回り小さな堤体です。でも、アーチ状の下流面、リップラップの表情、天端に柵の無い所まで本当にそっくりです。

あ、どちらも電源開発のダムだ!



再び、水窪ダムの写真。
ダムの下流は、ごつごつした岩盤もあらわな険しい渓谷となっています。
アーチダムが良く似合いそう。

大規模なロックフィルは、正面形状が長方形か逆台形のイメージがありますが、水窪ダムはV字形の谷に造られ、シャープな逆三角形のシルエットを持っています。

ダムの一番下に、コンクリート製の構造物が見えますね。
これが何かは後々解りました。



天竜川水系らしい、グリーンを帯びた笹濁りの貯水池。
発電所への取水口が左岸に見えます。

堤体の中心辺り、ダム本体の上にインクラインが敷かれ巡視艇が置かれていました



右岸には管理所などの施設が集まっています。
管理所横の建物でディーゼルエンジンが唸りを上げていました。発電機?。

右岸には休憩所が開放されていて、丁度昼時とあって建設業者の方がお弁当を広げておられました。その奥にトイレも完備。



ダム湖側を見ると、目線の高さにゲートの巻揚機が並んでいます。



それは非常用の余水吐でした。
トンネル式で、ラジアルゲートが2門。
さっき堤体の一番下に見えた構造物は、トンネル吐の放流口の様です。

むむっ。
これは、やはり御母衣ダム近くの大白川ダムにそっくりです。
大白川ダムは豪雪対策で巻揚機は建物に覆われていますが、それ以外は、とにかく良く似ています。

そう、大白川ダムも電源開発のロックフィルダムなのです。



右岸にあるプレート。

本体施工は株式会社 間組。
実はトンネル式洪水吐が瓜二つの大白川ダムも間組により築かれています。

間組は、丸山ダム(1955年)、佐久間ダム(1956年)、黒部ダム(1963年)と、立て続けに名堤と呼ばれるコンクリートダムを手がけ、「ダムの間組」と呼ばれる事になります。

ひょっとして、御母衣ダム(1961年)、大白川ダム(1963年)、そして水窪ダム(1969年)と、コンクリートダムに続きロックフィルでも100m超級の大規模なダムを連発し、「ダムなら間組」を確固たる物にしたのかもしれません。



電源開発 水窪ダム。
それは同じ電源開発の大黒谷ダムの堤体形状に、大白川ダムの余水吐を持つ、ちょっとイカしたロックフィルでした。

山奥でありながら、ちょっとしたドライブや散策にうってつけなのか、見学中はひっきりなしに家族連れやカメラ片手の見学者の姿がありました(声を掛けてみましたがダム愛好家では非ず)。

佐久間ダムまで来たら、ちょっとだけ足を伸ばして訪れてみては如何でしょうか?。



水窪ダム
★★★★

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灰塚ダム

堤高50m
G/FNW 2006年 国交省

2010.9.5見学


灰塚ダムは2006年完成の新しいコンクリートダムです。
ダムの真下は広い駐車場と公園になっていて、ちょっとした屋外イベントにはうってつけの感じです。

駐車場はこのダム下の「灰塚ダム記念公園」のほかにも、天端の高さにも用意されています。



灰塚ダムで一番の特徴はこの引張りラジアルゲートです。
通常のラジアルと違った、メカニカルな外観も見所です。

この引張りラジアルゲートは堤体中央の「環境用水放流設備主ゲート」に採用されています。
環境用水とは、フラッシュ放流などの出水の再現や、洪水後の長期にわたる濁流の軽減など、自然越流式の洪水吐の弱点を補うものです。



訪れた日は、残暑厳しく、うだるような暑さでした。
広い減勢池に映る堤体も印象的。

クレストに並ぶ自然越流の非常用洪水吐、中心部分に一段低い常用洪水吐が1門、引張ラジアルを挟み、堤体中程に2門あいているのも常用洪水吐(オリフィス)です。



暑さで大変なのはダムマニアだけじゃない様で、堤体の影に何か粒々した物があるなと思って、よく見たら日陰に非難中のハトでした。



灰塚ダムは開かれたダムとして、ダム内部はギャラリーとして開放されています。
ずらり並ぶダムに関するパネル。膨大な情報量なので全て観るにはどれだけ時間があっても足りません。

また、とてもパンフレットが充実していて、知りたい内容に合わせて
・灰塚ダム建設における技術的な特徴
・環境用放流設備の目的と放流方法
・ハイヅカ湖における水質保全対策
・動植物の保全対策
・ハイヅカ湖で自然を楽しもう
・ハイヅカ湖における外来魚対策
と、共通の表紙デザインで、沢山の冊子が用意されていました。
(思わず沢山もらって来てしまいましたが、本当は知りたい項目だけ持ち帰るスタイルかと)



ギャラリーの奥のエレベーターも開放されていて、天端と自由に行き来出来ます。

ギャラリー階でエレベーターを呼ぶと、天端階にあったエレベーターが降りて来ました。
ドア越しに楽しそうな話声が聞こえます、天端から誰か乗って来るみたいです。

するするとエレベーターが到着し、静かに目の前でドアーが開きました。

!!!

開いたドアーの向こうは空っぽで、誰もエレベーターに乗っていません。

さっき聞こえてきた人の声は・・・・。
瞬間、背筋が凍ったのはギャラリーの冷たい空気のせいでは無い様です。

恐る恐るエレベーターに乗り込み、天端に向かいます。
ドアが閉まり、密室の中に僕独り。

すると、何処からか太い男の声で不敵な笑い声が・・・・
ぎゃーっ!!



広島FMにびびりつつ、抜けそうになった腰をはめ直して天端に到着しました。
(エレベータにFMを流す目的は防犯だそうです、あせった〜)

堤体の越流部が薄くて、意外と鋭い形です。
天端通路が下流側にオフセットしていて、その造形を存分に鑑賞できます。



二車線&歩道の広い天端。

雲の形がすごくいい日でした。
時々天端を抜けてゆく風が、辺りの熱気を吹き飛ばして、とても気持ちがいい。



天端から見下ろすと、減勢池の中に雲が捕まっています。
風が止むと、水面は鏡の様で、いっそう鮮やかな空が閉じ込められていました。



灰塚ダムは堤高50m、堤頂長196.6mと、決して大きな堤体ではありません。

しかし、ハイヅカ湖と命名された貯水池は、複雑な形状でとても広く、小さな堤体で大きな貯水池という効率の良いダムの手本とも言えるダムでもあります。

また、2箇所の流れ込みにはそれぞれ川井堰堤と和知堰堤の2基の小堰堤が築かれています。
これは、洪水調節区域の裸地を減らし、荒地になるのを防いだり、出水時に泥流を本湖に入れる前に沈殿させる等の役割があります。

これはハイヅカ湖の東側にある川井堰堤。
越流部のデザインがとても洒落ています。
堤高13.5m、堤頂長146m、型式はなんと台形CSGです。



こちらは、ハイヅカ湖の南側にある和知堰堤。
堤高などのスペックは解りませんでしたが、川井堰堤と比べて小振りの様に感じました。
でも、低いながら導流壁、減勢池、副ダム、それに魚道と一揃いそろっている立派な小堰堤です。



越流部もやはり凝ったデザイン。
北海道の古いコンクリートダムに有りませんでした?こんなの、違うか?。

この和知堰堤によって上流に広がる人工の湿地帯は和知ウエットランドと呼ばれ、水生植物や水生生物をはじめ、魚や鳥達の楽園が造られています。



とにかくあらゆる所に見所いっぱいの灰塚ダムです。
ファミリーで訪れても良し、じっくり見学するも良し、魅力に溢れるダムでした。

灰塚ダム
★★★★

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高暮ダム

堤高69.4m
G/P 1949年

2010.9.5見学


沓ヶ原ダムを後に上流にあると言う高暮ダムを目指します。
沓ヶ原の貯水池を過ぎるとその先には集落や民家はなく、一車線の狭道が続きます。



沓ヶ原ダムから6〜7km、高暮ダムまでの道はずっとこんな感じの道です。
すれ違いが出来る待避所も少なく、ガードレールが無いので早朝や日が暮れてから向かうのはお勧めできません。

但し、アスファルトの舗装は途切れる事なく続いていますし、急激なアップダウンも無いのでこの日もロードレーサーの集団に出会いました。



崖側の樹木が途切れ、高暮ダムが姿を見せました。
このアングルが下流面を観る唯一のポイントです。



堂々とした姿。
完成は1949年、戦時中の資材不足により10年を費やし、竣工は戦後にずれ込みました。

高暮ダムは、細く狭いダムまでの道と比べて、驚くほど大きく立派なダムです。
建設には三次から索道が張られ物資が運ばれてたとの事です。



優雅なラインの導流壁が目を引きます。
有機的な曲線のそれは、植物の茎や葉を思わせます。



しかし、優しく見えるのは遠目で見た印象で、目を凝らして観察すると、その肌は粗く、酷くざらついた荒々しいものです。

丸く開いた穴は排砂用です。



クレストには非常用洪水吐が5門。
横長のラジアルゲートが時代性を感じさせます。

天端通路の高欄にはオールドコンクリートダムらしいアーチ形の抜きが見えます。

期待出来そうです。



峠道を登って、ダムサイトに到着しました。
右岸に見学者用の駐車場も確保されています。

右岸から堤体を観ます。
堤体は一段下に降りた高さにありました。



天端の入口、門柱にあたる高欄端の装飾。

稲妻のマークは日本発送電の社章でしょうか?
その下の銅版は要目表が刻まれていました。



いよいよ高暮ダムの天端に足を踏み入れます。
集落も何も無い山奥のダムなので、天端は立入禁止かもしれないと思って来たのですが、あっけらかんと受け入れてくれました。



素晴しい天端。

堤頂の幅は3〜4m弱、高欄のアーチ形の意匠がクラシックです。
一定間隔で柱状の装飾があり、ガス燈風の外灯が立てられていました。
照明器具自体は新しい物で、アーチの中にはめ込まれた珊もステンレス製に置き換えられていました。天端の細部は部分的にレストアされている様です。



下流を見下ろします。
堤高69.4mは、戦前〜戦中に建設されたダムの中では7番目に高いものです。

下流から良く見えなかった右岸の導流壁も、左岸と対称形状の様です。



下流は深い山林。
正面の山腹にさっき通って来た道筋が見えますが、他には何も見えません。



左岸の導流壁。
立体的に大きくうねる導流壁は、内側に倒れこんだ独特の形状をしています。



左岸からの横顔も貫禄充分。
左岸には発電所への送水設備がありました。



親柱のデザイン。
シンプルですが、重厚かつモダンな意匠です。



神之瀬湖と呼ばれる貯水池。
静かで深く沈んだグリーン、裸地とのコントラストも印象的。



左岸にコンクリート製と思われる遺構が水面から覘いています。
建設プラントの跡かもしれません。



クレストゲートの巻揚機を収める建屋は比較的新しい建物の様です。
大規模な改修が行われていると感じました。

ゲート部の貯水池側の高欄。
水を切るピア先端の造形が、そのまま高欄の高さまで立ち上がっていました。



再び右岸に戻ります。
右岸の地階に部屋があります、監査廊などに通じるのかもしれません。



一部剥がれかけた石垣風の装飾は、比較的新しく見えました。
クレストゲートの巻揚機や、高欄の装飾と同時期に改修されているのだと思います。



よく観ると、地階の部屋の下の壁面にも、薄っすらと石垣風の装飾が見られます。
痛み具合から、こちらは竣工当時のままだと思われます。

改修部分が石垣に見立てた薄板を貼り付けているのに対して、此方はコンクリートの表面に溝を刻み、目地に見立てたモルタルを埋め込んだと思われます。

高欄の品の良い装飾と相まって、実は当時としては飛びぬけたデザイン堤体であった事が伺えます。



駐車場から観る堤体。

巻揚機の改修工事で建屋が大きくなったのか、貯水池側へ軽くクランクした天端の曲がり角だけ鋼管の高欄となっています。

高欄のレベルまであるゲート間の扶壁がよく解ります。



ダムサイトにある日本発送電の慰霊碑。
此方は日本人の殉職者が祭られています。

これとは別に朝鮮人労働者の慰霊碑(追悼碑)があるとの事で、辺りを探したのですが見つける事が出来ませんでした。
帰宅後の調べて、その慰霊碑は右岸の少し離れた場所にあった様です。



今は静かで美しい高暮ダムですが、このダムについて避けて通る事の出来ない史実があります。

高暮ダムは、戦時中の人手不足から、騙したり、拉致するなどで故郷から連行されて来た朝鮮人らによって築かれました。
この地で強制労働を強いられた朝鮮人労働者は少なくとも2000人以上と言われています。

日本人の労働者も居ましたが、不当な低賃金で、トロッコ押しなどの重労働や、隧道掘りなどの最も危険な労働を強いられました。
過酷な労働や虐待に絶えかね逃亡者も多く、今世紀に入ってからも周辺から複数の白骨が見つかっています。

ダム本体の打設では、上からシュートで落とされるコンクリートに人が巻き込まれても、そのまま救出する事もなく作業は続行され、堤体の中に埋められる者も居たと、逃走して生き延びた方が証言しています。

戦争さえ終われば故郷に帰れる。
叶わなかった願いと亡き骸が堤体の中に永久に閉じ込められている・・・。

見学から帰って、自宅で強制労働の事を調べているうちに、戦争の被害者だとが、尊い犠牲だとか、そんな言葉は平和ぼけした今日の日本人のうわ言でしか無い様に思えて来ました。


天端を散策していた時に、一家で来ていた家族連れとすれ違いました。
少し派手めの服装と、話す言葉から韓国人である事は直ぐに気が付きました。

たまたまの偶然なのかもしれません。
でも、直感的に、その家族に対して偶然以上の物語性を感じていました。



高暮ダムには、またいつか再訪したいと思います。
次は必ず湖畔の慰霊碑も観ておきたい。

そして、天端を靴を脱いで素足で歩いたら、何かが理解できるかもしれない。

そんな事を今思っています。



高暮ダム
★★★★★

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沓ヶ原ダム
堤高19.5m
G/P  1942年 中国電力

2010.9.5見学

島根県を後に、広島の沓ヶ原ダムに来ました。
県道の路肩に車を停めて堤体に向かいます。



竣工は1942年。
現在は中国電力が管理していますが、元々は日本発送電が造った発電用ダムです。

以前、四国のダムを巡った時に、このタイプのゲートピアを「四国形」と勝手に命名しましたが、「四国・中国形」と改めねばなりませんね。



堤体の真下は公園のように整備され(雑草が多かったですが)、すぐ目の前までお近づきになれます。

中心部に上下に薄い4門のローラーゲート。
両脇は越流式の吐のようになっていますが、ローラーゲートの上端とほとんどレベルが変わりません。
ここから越流する時は同時にローラーゲート上もオーバーしてしまう感じなるので、実際に越流する様な事は無いのかもしれません。
手前の左岸端には排砂ゲートがあり、維持放流が行われていました。

色あせた赤色の管理橋はとても趣があります。



ダム下の謎の遺構。
用途は皆目検討も付きません。



表面をよく見ると、長い年月を風雨に曝された為か、金属製の網が露出していました。



県道に戻ってきました。
管理棟や取水設備も左岸の道路脇に密集しています。



道路に面してバスの停留場。
ごみ収集のステーションも兼ねています。



さらに、停留場の屋根の下には郵便受がありました。

かつて、職員さんが常駐していた頃の名残なのかもしれません。
職員住宅が配達に不便な所だったりして、個人宛の郵便も、ここで受け取っていたのかも。
(僕の勝手な空想で、根拠はありません)



天端には特に立入を拒む物はありません。
ちょっと意外な感じ。



鉄骨トラス組の管理橋を進みます。

こんな感じの天端は初めて歩くかもしれません。
なんかとても幸せ。



のんびりとした貯水池。
上流には高暮ダムがあります。



通路の上をゲート操作のワイヤーが渡っています。

色あせたペイント、年季の入ったコンクリートの肌、苔とカビ。
沓ヶ原ダムの天端は、グリスの匂いがしました。



沓ヶ原ダム
★★★

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浜原ダム

堤高19m
G/P 1953年 中国電力

2010.9.5見学


三瓶ダムを後に浜原ダムへ、国道から脇道に入り右岸下流から向かいます。
林が途切れ視界が開けると、遠くに浜原ダムが見えました。

でかい!

それが浜原ダムの第一印象でした。ここから堤体までまだ1.5kmほどあります。
堤高は19mしかありませんが、堤頂長は361.4mもあり、12門のローラーゲートが勇ましい姿。

こういった大河川形のダムは、市街地などに観られるタイプですが、浜原ダムは右岸に数軒民家があるだけの静かな山間にあって、その事も大きく見える要因なのかもしれません。



堤体右岸に到着。
右岸には記念碑や駐車場があります(写真のミニバンの場所以外に)。

いままで全国の色々なダムを観て来ましたが、バス釣りに出会うのは何故か近畿〜中国地方だけです。



天端の道路は重量規制があります。
デミオ号はなんら問題ありませんが、いつもの様に歩いて散策します。



浜原ダムの断面図。

堤体の越流部は低いのですが、ゲートピアがとても立派。
それに形状も複雑です。



男性的な力強いゲートピアを見上げます。
左右に鉄骨の補強が入る独特の形状は、遠くから浜原ダムを見た時に、よいアクセントになっています。



山林と朝の空を映す美しい湖面。
浜原ダムの貯水池は上下に長く、曲がりくねった形をしています。



左岸には12門のローラーゲートとは別に2門の排砂ゲートがあります。
左岸から1号排砂ゲート、2号排砂ゲートの順番。2号ゲートは維持放流を行うゲートとなっています。



さらに左岸端にある魚道も、維持放流設備を兼ねています。



左岸から天端とゲートピア。
東の山の尾根から朝日が射してきました。



朝日の匂いがします。
湖面に映えるゲートピアが神秘的。



左岸には発電所への取水設備があります。
またもやスクリーン裏から撮ってみたりして。



ステンレスの配線ダクトに朝日が反射して眩しく輝きました。

はっとするカッコよさ。

胸が躍る瞬間。



維持放流の飛沫は朝日に照らされ、ダイヤモンドダストのようにキラキラと舞い上がりました。

沢山シャッターを切った割りに、一枚もいい写真が撮れませんでしたが、僕の頭のCCDには鮮やかに焼きついています。



ずらり並ぶゲートピアの壁。
先端の形状は鋭く精悍で、軍艦の舳先をイメージさせます。



日の光に、ゲートの巻揚機を収める機械室も輝いて見えます。

上下に長く、蛇のような浜原ダムの貯水池。
浜原ダムは、頭部(ゲート、もしくはゲートピア)の数は違いますが、ヤマタノオロチを彷彿とさせます。



朝7時に到着して、気が付けば時計は9時30分を周っていました。
2時間半も、どこで如何していたのか、振り返ってみるとよく解らないほどあっと言う間でした。

今回のダム巡りのメインは、千本貯水池・三成・志津見、それとこの後に向かう広島の発電用ダムだったのですが、浜原ダムは予想外のダークホースでした。



浜原ダム
★★★★

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三瓶ダム

堤高54.5m
G/FNW 1996年 島根県営

2010.9.5見学


出雲大社近くの道の駅で車中泊をして、遠征2日目は県営の三瓶ダムからスタートです。出雲大社も石見銀山もスルー。またしてもダム100%の旅となりました。

早朝の三瓶ダムに到着、まだ朝日は射していません。



天端を左岸から。
駐車場は両岸にあったと思います。



左岸にある管理所。
ちょっと山小屋風の外観です。



複雑なコンクリートがカッコいいです。
クレストに越流吐を並べているダムは、フーチングの上に導流壁があるので、こんな風に導流壁が一直線に観えるのがいいですね。



右岸のフーチング。
こちらもごちゃごちゃしてて、鑑賞物としてよろしい。



右岸のリムトンネル上にレリーフ。

こういった装飾は、この時代のダムからの特徴ですね。
ダム本体は、無機質で、どちらかと言うと無個性なものが多いのですが、反面、こういった飾り物が増えました。

機能部分での効率化を推し進めると同時に、判り易く直接的な装飾で愛されるダムを目指し始めた時代なのかもしれません。



三瓶ダム
★★

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来島ダム

堤高63m
G/P 1956年 中国電力

2010.9.4見学


志津見ダムで太陽が西の山に隠れてしまいましたが、まだもう1基行けるっ!っと車を飛ばして上流にある来島ダムに向かいます。

国道184から脇道に入り、くねくねとした狭道の先に木島ダムが現れました。
左岸に管理所があり、ちゃんと見学用のパーキングもあります。

車から降りた途端、「しゅごーしゅごおーっ」っと、何処からか水音がします。
放流中かな?と、思ったのですが、その音は何故かすごく近くから聞こえます。



む、なんだこれ?

音はここから響いて来ます。

エアー抜き?。



んー。

解らん。



謎のラッパ管は正体不明ですが、とりあえず散策を始めます。

低い位置から結構な勢いの河川維持放流が行われています。
水が綺麗ですね。



またもや気になるものを発見。
今は使われていない遺構みたいです。



すごい階段!。



貯水池は複雑に入り組んだ形なので、天端から見える部分はほんの一部です。



発電用のダムですが、水位が低いです。

2006年7月、神戸川流域を豪雨が襲い、来島ダムの下流で大きな被害をもたらしました。
現在、下流には洪水調節を主目的とする志津見ダムが建設されつつありますが、木島ダムに於いても洪水期は通常よりも2m水位を下げるなどの運用が行われているそうです。



3門のラジアルゲート。
ゲートに直接、目盛が取り付けられています、角度ではなくてメートル表示の様です。



クレストゲートの下にも何かありますね。
河川維持放流の取水口でしょうか?。

ちょこちょこ気になる点が散らばる来島ダムです。



一度国道に戻り、集落の狭い道を下って行くと、堤体をほぼ正面から見る事が出来ます。
内側に倒れこんだ導流壁がいいですね、色っぽいです。



来島ダム
★★★

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やりすぎテーマパーク。

今日は養老公園にある「養老天命反転地」に行ってきました。

この養老天命反転地、一言で説明するのは難しいです。
http://www.yoro-park.com/j/rev/map001.html

園内は急斜面&危険がいっぱい。
オープン当初は転倒者続出、怪我人が相次ぎニュースにもなりました。

なんたって、芸術作品なので、「危険」とか、「足元注意」なんて無粋な標識はありません。
その代わり、無償でスニーカーとか、ヘルメットを貸し出してくれます。

今のご時勢、「危険なのは見たらわかるやろ」って言う姿勢がスバラシイ。

以前来た時よりも、随分と木が成長してます。



前回、まだバブだった娘は、結構に気行ったご様子。

決してカメラが斜めなのではありません。(植木が真っ直ぐでしょ)
家族の手前にあるのはむこうを向いてますがキッチンです。
なぜが流し台が場内のあちこちにあります、地面に埋まってたり、壁にめり込んでいたり。

これら芸術作品の意味なんて解りません。
走りまわったり、飛び降りたり、限界に挑戦してみたり、コケた人を見て爆笑したりするテーマパークなのです。(鑑賞方法、たぶん間違ってます)



養老天命反転地の後は、折角なので有名な「養老の滝」を観に行きました。
(居酒屋じゃないよ、本物の滝です)

おお、これはさぞ名のある有名な砂防じゃなかろうか。
近くにデレーケ設計の砂防もあるらしいのですが、この砂防は特に説明もなく、よく解りませんでした。



天命反転地から歩いて1.6km 無事養老の滝に到着。
紅葉シーズンとあって賑っていますが、滝の直ぐ近くにも砂防を発見。

この砂防堰堤・・・・・天念岩盤削り出し?!

いやいやいや。そう見せてるだけ?
でも、宮ヶ瀬副ダムみたいな模造岩盤だと、本当の出水でぶっ飛ぶよね・・?
(立入禁止で近寄れず、詳細不明)

| あつだむ宣言!(清水篤) | - | comments(6) | trackbacks(0) | pookmark |
志津見ダム

堤高85.5m
G/FNIP 2010年 国土交通省

2010.9.4見学


重力式コンクリートダムの格好良さって何だろう。

黒々とした肌、重厚で堂々とした堤体。
見上げればクレストには鋼鉄のゲートが牙を剥き大空に吠え掛かる。

たしかにクレストゲートを持つコンクリートダムはカッコいい。
でも、カッコいいのと、個人的に好きな物は必ずしも一致する訳ではない。

福井県 山原ダム


群馬県 小森ダム



京都府 由良川ダム



新潟県 黒又ダム



山形県 梵字川ダム



これら僕が個人的に偏愛して止まないダムたち。

「全面越流式」

クレストゲートを持たず天端通路さえ廃した「ストイックなコンクリートの壁」

コンクリートを愛でるのに余計な物は要らない。
いや、何も要素が無いからこそ、コンクリートは一枚岩のような塊感とマス感を持って観る者に迫ってくるのだ。(と、思う)

だから、僕は全面越流式が好きだ。

でも、一つ惜しむべき事がある。
全国には沢山の全面越流式のコンクリートダムが存在するのだが、基本的にこれら魅力的なダム達はどれも皆「背が低い」のである。

河川法のダムに満たないローダムのスタンダードな姿でもあり、晴れて15mを超え、立派にダムを名乗る堤体でも多くは堤高20m台。
まれにもっと背の高いものもあるが、それでもせいぜい40m級といったもので、クレストに鋼鉄のゲートを持った華のあるダムに比べて、どうしてもマイナーな存在である事は否めない。

以前、テレビ番組の出演依頼があった時、打合せの中でディレクターからこう聞かれた事がある。「もし、自分好みでダムを造るなら、どんなダムを造りたい?」
その時は、「琵琶湖の出口に巨大なダムを造って、琵琶湖を嵩上げしたい」と、適当に一般受けしそうな事を答えたが、僕の心中では密かにこう語っていた。

「全面越流式で、堤高100m」

そう、これが僕の考える、美しく、かつ重厚、何よりもコンクリートの魅力を余すところ無く鑑賞しうる究極のダムの姿である。
そして、今、そんな僕の理想とも言えるダムが産まれようとしている。

島根県 斐伊川水系神戸川 国交省が建設を進める 志津見ダムである。



氷河のような真っ白なコンクリートが傾いた日差しに輝く。

堤高85.5mは理想とする100mに僅かに及ばないが、今迄誰も見た事の無い風貌と共に、全面越流式の魅力を知らしめるには充分なインパクトである。



中央に2門の常用洪水吐。
堤体がシンプルな分、デフレクターのシャープさが際立って見える。



ユニークな形状の突起、エアー抜きのような穴も見える。
突起はこの穴に越流水が流れ込んだり、塞いだりしない為だろうか。



大きく丸められた天端下流面。

曲面の表情は有機的な優しい丸みではなく、無機質で冷たくクールな造形に感じるのは、志津見ダムが最新鋭のダムである証だろう。
それは、CADによる緻密な設計と、忠実に寸分の狂いも無く整形する高い技術が成し得る最新鋭のダムの表情ではないだろうか。



この丸い天端の上に橋脚を並べ、天端通路の橋を架ければ、よくある非常用洪水吐が並ぶコンクリートダムになるかと思えば少し違う様だ。

下流面を良く見ると通常のコンクリートダムと比較して明らかに勾配がきつい。
まるで石積堰堤を思わせる下流面の急勾配、特に天端のRエンドからの勾配はほぼ垂直と言えるほど切り立っている。

ダム本体に近づくに連れ、さらに今迄見た事のないものが見えてきた。

志津見ダムの最大の秘密は天端部分にある。



天端の頂上に幅広の溝。
実はこの志津見ダムは全面越流の非常用洪水吐でありながら、同時に天端に通路を持つ、今までにない画期的なコンセプトのダムなのである。

構造の簡素化、しいては建設コストの軽減というこの新方式は、サーチャージを越え水が越流する場合、直接天端通路の上を水が乗り越えて行くという、実に大胆な方式なのである。

真っ白なコンクリートの舗装。
いや、決して舗装ではない、これは露出した志津見ダムの肉であり、肌そのものである。
ひと塊の岩から削りだしたような彫刻的な天端通路は、従来のダムには無いソリッドな異空間である。



通路の下流端には側溝があり、グレーチングが敷かれているようだ。
越流後、天端に残った水の排水の用途だと思われる。

ひょっとして下流面の二つの穴は、天端の排水口かと思うが真相は不明。



高欄は水勢に耐えるべく、とても分厚く、そして低く見える。
試験湛水が完了し晴れて竣工を迎えても、天端は一般には開放されないと感じられた。



非常時には完全に流れに飲み込まれる天端。
対岸の右岸には道路が無いので、その前には必ず此方に戻っていないと、水位が下がるまで対岸で完全に孤立してしまう事になる。
但し、見たところ対岸には何も施設や設備が無いので、まずそんな事は起きないだろう。(ひょっとして右岸とは監査廊で通じているかもしれない)



広大な志津見ダムの貯水池。
ダムサイトから見える湖面は全体のほんの一部で、上下にとても長い貯水池である。

志津見ダムの目的はFNIPと多岐にわたるが、総貯水量の80%は洪水調節に当てられ、実質的に防災ダムと言えるものである。



あまりに個性的な堤体を観ているうちに、太陽は西の山に隠れてしまった。

垂直に切り立った正面。
2門の常用洪水吐は可動ゲートの無い自由越流式であるから、現在の水位から天端までが洪水調節量となる。
中程に見える四角い塊は河川維持などの放流設備だと思うが、洪水調節時には丸ごと水没してしまう事になる。



この志津見ダムを便覧で知ったのは丁度一年前の事だ。その時は、椅子から転げ落ちるほど驚愕し、そして興奮した。

さらには丁度試験湛水が始まっている事を知り、春には満水になり、やがて訪れる全面越流の瞬間を密かに楽しみにしていたのだが、冬季の降水量が予想を下回り、満水を待たず洪水期を迎える事から湛水試験は延期、それまで上げていた水位は再び常満まで下げられた。

つい先日の発表では、現在、来年春の満水に向けて再び水位を上げつつあるそうである。

堤高85.5mからの全面越流。
志津見ダムはどのようなパフォーマンスを魅せてくれるだろうか。



重力式コンクリートダムの未来形、そして我が心の星。

志津見ダム
★★★★

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