無料ブログ作成サービス JUGEM
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| スポンサードリンク | - | - | - | pookmark |
奥津発電所調整池 懸崖水槽

所在地 岡山県苫田郡鏡野町奥津川西

2010.1.9見学

「空中水槽」


苫田ダムの上流、奥津温泉の近くにとても貴重な発電用の調整池があるという。

その調整池は、温泉街を見下ろす山腹のキャンプ場、星の里キャンプビレッジから、さらに林道を300mほど進んだ所にあるのだそうだ。
通常、目的の調整池まで車で行けるのだが、この日はキャンプ場からの林道は雪で閉ざされ、徒歩で向かう事となった。
キャンプビレッシは冬は休業している様だが、管理人の方が居られたので、キャンプ場の駐車場を借りる事が出来た。調整池の事を伺ってみたが、その様なものは知らないと言う。少し不安になる。

林道は一面の雪。
車どころか人の足跡ひとつない雪面。
雪の深さは膝丈程度なのだが、足を踏み出すごとに、表面がバリッと割れ、一歩一歩足を取られ、実に歩き辛い。
蹴散らせるほど柔らかくもなく、上を人が歩けるほど堅くもない最悪の雪面である。

見上げると山の上にコンクリートの構造物が見える。



コンクリートのバットレス。間違い無い、懸崖水槽だ!



心は逸るが、足はもつれるばかり。
おまけに乾いた冬の空気が遠慮なく喉をカラカラにさせる。

息も荒く、だいぶ近くまで登って来た。
残念ながらバットレスの周辺は厳重なフェンスにより立入禁止。



扶壁に登録有形文化財のプレートを発見。
完成は1933年、とても歴史のある調整池は、各地でバットレスダムが造られた1923年から1929年の期間から少しだけ時期を置いて完成している。

この調整池から水圧鉄管が伸び、ふもとの中国電力 奥津発電所で発電が行われている。



この調整池の場所には、元々そこに流れていた谷川は無く、水は全て遠くで取水されたものである。
北西に山を二つ越えた羽出川と曲谷川の合流点から取水された水、それに、およそ10キロほど離れたバットレス恩原ダムから送られる水である。



調整池の全体を眺望できる位置まで来て驚く。
なんと冬の調整池は水が無く、コンクリートの底が露になっていたのだ。

広さは、幅およそ50m、奥行きは180m程度だろうか。
同じように底がコンクリートで貼られている北陸電力 真川調整池より少し狭い程度。
銀色に輝く池の底は、実際よりも広く見える。

写真右手の斜面がバットレス構造の遮水板。池の深さはそれほどでも無く、10mに満たないように感じる。



山側から丸くせり出した部分は余水吐だろう。
一般的なダムの余水吐と違い、洗面台のシンクのあふれ防止穴のようで面白い。

奥に見える建物の辺りに、水圧鉄管への入口があるはずだ。
恩原ダムから送られて来た水も、こちら岸に出口があると思うのだが良く解らなかった。



調整池の周囲にそって、池の1/3程度散策する事が出来る。
振り返ると雪面には自分の足跡だけ。

右手の建物は送られて来た水の落差を利用した発電施設。
位置的に羽出川・曲谷川方面からの水ではないかと思うのだが、詳細は不明。



調整池の奥の方まで行くと、不思議な形の流れ込みがある。
先ほどの発電所から微妙な距離感なので、発電後の水の出口か、それとも、別の流入なのだろうか。いずれにしろ、調整池に水が貯えられると完全に没してしまう部分である。

調整池の周囲はぐるりと全周に渡りコンクリートが貼られ、池の底もコンクリートなのだから、文字通りの水槽であるようだ。



この奥津発電所調整池は、日本ダム協会のダム便覧には載っていない。

河川を堰き止めている事がダムの定義のひとつであるが、この調整池のように元々何もなかった土地に作られた貯水池では、青森の一の渡ダムなど便覧に記載されている例もあるので、ネックとなるのはやはり堤高が15mに満たない事なのかもしれない。



さらには、この懸崖水槽の構造があまりに特殊である事も挙げられるだろう。

懸崖水槽の懸崖とは、所在地の地名ではなく 「懸崖造り」 と言って、崖などの斜面に柱を立て建物を築く建築方法の事である。
山奥の寺院などに見られる懸崖造りは、有名どころでは京都 清水寺の舞台などかある。

その懸崖造りの調整池。外観からは3階建のビルのようなバットレスがそびえる、高い所で地面より14mほどある。
実はコンクリートの調整池の底は、無数のラーメン構造のコンクリート柱によって地面から浮いた状態で支えられている。

これが懸崖水槽と呼ばれる由縁なのである。

驚愕なのは、さらに地下に16mほど、貯水池を支える無数の柱が埋没していると言う事だ。
埋め立てられた土砂を取り除くと、高い所で30mに及ぶ高さの扶壁や柱の上に、広さ50m×180m、深さ数メートルの貯水池が、空中に高々と持ち上げられているのである。



奥津発電所調整池 懸崖水槽。

貴重なバットレス構造の調整池を、さらに懸崖造りで築き上げた。
奇跡のような建造物が、だれも来ない雪の中でじっと春を待つ。


special thanks  「雀の社会科見学帖」 夜雀 様
現地で情報ご提供頂き、ありがとうございました。

| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム特別編 | comments(3) | trackbacks(0) | pookmark |
社口ダム

堤高16.2m
G/P 1954年 中国電力

2010.1.9見学

アーミーナイフ。



社口ダムは、湯原ダムの下流にある中国電力の発電用ダムです。

左岸側に3門のラジアルゲート、右岸には自然越流の余水吐があります。
左岸の端にあるのは排砂ゲート、さらにその横から河川維持放流がされていました。

川幅いっぱいに各設備を並べたスタイルは、小型のダムですが独特の機能的な品格が漂っています。

自然越流部分のそっけないほどのシンプルさや、ピア上部が狭いクサビ形のゲートピアがよりクールさを演出しています。



小柄でありながら、全ての機能が揃う。
そんなアーミーナイフを思わせる社口ダムでした。

社口ダム
★★

| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム岡山県 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
湯原ダム

堤高73.5m
G/FP 1954年 岡山県営

2010.1.9見学

湯けむりの向こうに。


岡山県 湯原ダムの広大なダム湖は中国地方で最大規模を誇っています。

まずは、ダムサイトからいつもの様に天端を歩く。
大きなゲートピアが目を引く。両脇には螺旋階段。



丸山ダム形のスタンダードな重力式コンクリートの湯原ダム。
クレストには6門のローラーゲートが並びます。

天端からゲートピアを見上げると、巻揚げプーリーが何時もと違う見慣れない方向を向いていました。良く知らないだけで、巻揚機もさまざまなタイプがある様です。



左岸にある管理棟。
敷地が狭いのか、ダム湖にせり出して建てられています。景色は良さそうですが底冷えしそうですね。



天端から下流を眺めると、下流の河川の一画に、湯気が昇っている事に気が付きました。

あ、お風呂だ。



そうか、たしかダムを見ながら浸かれる露天風呂って読んだ事があるぞ。
訪れた現地で驚く事を期待して、予習はあまりしないので、時々こんなボケのようなサプライズがあります。後で下に行ってみましょう。

湯原ダムのクレストで気になったのは、この「襟元」の形状。
これって藤原ダムに良く似ていますね。
藤原ダムに訪れた時は、鋼板でカバーしてると思ったのですけど、表面にコンクリートの保護剤を塗布して塗装で仕上げていたのかも。本当の所はどうなのかなあ。



湯原ダムの下は、沢山の温泉旅館が立ち並ぶ活気ある温泉街が広がっていて、狭い路地には他県ナンバーの温泉客が溢れていました。

街が狭いので、日帰り客は川の中に作られた駐車場を利用する様になっています。
湯原ダムが出来て、激しく氾濫する事が無くなったんでしょう。対岸の旅館も川面近くまで施設があります。
温泉街特有のリラックスした空気も漂い、川面とほとんど高さの変わらない駐車場からは、街全体が無防備に油断してる様に思えましたが、それがこの湯原温泉の雰囲気なのでしょう。



こうして見るとダムの巨大さが良く解りますね。
写真右下の東屋が露天風呂です。天端から見て男湯だけかと思えば、実は混浴露店風呂でした。
ここから先はカメラ自体の持ち込みも厳しい様です。

温泉好きのダム愛好家に是非お勧めの湯原ダムでした。

湯原ダム
★★★

| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム岡山県 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
佐治川ダム
堤高46.5m
G/FNP 1971年 鳥取県

2010.1.9見学



恩原ダムを後に、もう少し寄り道をしてみる事にした。
恩原湖からさらに北上し、辰巳峠を越えると鳥取県である。

関係ない話だけど、「とっとり」なら、「鳥取」じゃなく、「取鳥 」だと思う。

恩原湖から直線距離で5km程度だが、いつのまにか川の流れが逆になっている。
県境の辰巳峠は瀬戸内海と日本海との分水嶺になっているようだ。

うっすらと凍った名馬湖。
対岸に白く丸い形の取水塔。湖面の模様とよく似合っている。



天端は車両も通行できるが、対岸の管理棟の敷地が狭そうなので、天端の手前に駐車して歩く事にした。



何処からか、カラカラと音がする、なんだろうと思えば、欄干の下に置かれた、回転灯の回る音だった。しかも対岸まで等間隔で幾つも並んで回っている。
車の事故防止?除雪の目印?



管理棟のある左岸まで来ました。
監査廊への入口がユニーク。しかもドアに「階段〇〇段」と、シールが貼られていました。



再び天端を引き返します。
天端から下流を見る。クレストの大きなラジアルゲートの下はスクエアな感じのジャンプ台になっていました。ジャンプ台の導流壁が嵩上げされていますね。

それに何か、放流がある様ですね。白い飛沫が見えます。



んんんっ・・・?
何処から出てるんだこの水?
あれっ。ジャンプ台の側面にドアーがあるぞっ?



回転灯といい、この放流といい、謎が謎を呼ぶ佐治川ダム。
後から解ったのだかダム下へ降りる道もあった様だ。恩原ダムと同じでまた訪れる必要がありそうだ。

佐治川ダム
★★
| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム鳥取県 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
新作発表!。

今日は、新しいダム皿を描いてきました。



大人の事情で詳細なレポートを自粛した仙台市水道局の青下第2ダム。
この後、釜で焼かれて自宅へは来月届きます。

| あつだむ宣言!(清水篤) | - | comments(3) | trackbacks(0) | pookmark |
恩原ダム

堤高24m
B/P 1928年 中国電力

2010.1.9見学

ダムマニアの道。


本当は今回予定していなかった恩原ダム。冬季は雪に埋もれ、見学困難という話を読み聞きしていたからだ。
でも、現地で苫田ダムからそれほど遠くない事が解ると、直ぐにウズウズして来た。
・・・よし、行こう。

国道179号津山街道を北上。苫田ダムの辺りでは気温は低いものの雪は無かったが、路肩に積雪があると思った途端、どんどん雪の量が増え、恩原ダムの付近では1m近い積雪量となった。

幸い、国道の除雪は完璧で何の問題もなくダムサイトに到着。
ところが、困った事に国道からダム本体まで、除雪どころか職員の方が訪れた形跡もなく、雪は積もり放題。



念の為に冬用の長靴は持ってきたのだが、深い雪に無理に突入してジーパンを濡らす訳にも行かず、少しずつ雪を踏みつけながら道を付ける事になった。

少しづつ、少しづつ雪を踏む。力を入れすぎると、ずぼっ!と穴が開いてしまうので自分の体重を支えられるぎりぎりの堅さになるように。



地道な作業の結果。10数分かかり無事ダムマニアの道が開通。
天端に近い辺りは日当たりの関係かアスファルトが露出していた。



右岸には余水吐。
ゲートの支柱はあれど、ゲートは有らず。
下流面が垂直なバットレスなので、ここから溢れた水は山の斜面に彫られた水路を流れ下る。



ゲートの支柱になりげなくプレートを発見、登録有形文化財の証。
近くで見たいのだけど、雪が・・・・。

恩原ダムの竣工は1928年、現存するバットレスでは笹流ダムに次ぐ2番目に古いダムである。



ついに、バットレスダムの天端に到達。
天端は普段から開放され自由に往来できるようだが、ここも雪に埋もれている。
足跡ひとつ無いので写真では雪の深さは解り辛いが、コンクリートの高欄上の積雪を参考されたし。

歩ける天端は必ず歩く。
ダム巡りを始めてから自分に課したルールであり、去年1年間で合計60kmほどダムの天端を歩いて来たが、今回、初めてそのルールを守る事が出来なかった。無念。



天端からの恩原湖。
一面凍結した湖は、さらにその上を雪が覆う。遠くの岸まで完全な平面。

恩原ダムは、丸沼ダムに続いてバットレスダムで2番目にダム湖が広い。
湖の右岸にはスキー場があり、ここまでゲレンデに流れるBGMが聞えてきた。



さて、国内現存数6基と言う大変希少なバットレスダムである。
是非とも下流面からその姿を拝みたいのだったが・・・・。

普段は、ダムの下へ行けるらしいのだが、今回は積雪により、その道さえ見出す事が出来なかった。
国道からも、道路脇の林に阻まれ、これが限界。



ぐるりと恩原湖を周回してみた。除雪が良好なのはスキー場までで、そこからは圧雪の路面となった。

バットレスダム特有の遮水板のスロープも一面の雪で覆われる。
湖の周囲は穏やかな山林が広がり、雪に覆われる冬だけでなく、四季を通して美しい自然を見せてくれるだろう。

次回は三滝バットレスを見た後に足を伸ばし再訪する事としよう。
雪の無い季節に。



恩原ダム

| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム岡山県 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
苫田ダム

堤高74m
G/FNAWIP 2004年 国土交通省

2010.01.09見学

パーフェクト。



苫田鞍部ダムを観た後は、もちろん本命の苫田ダムへやって来ました。
1月初旬の冷え込んだ朝、穏やかな湖面。

天端はそのまま車で通行出来ます。
夜間はゲートが閉められ通行出来ない様なので、とても早い時間に訪れる時は注意が必要です。

取水設備などの建物が低く抑えられ、とてもスッキリとした天端。街路灯の柱のような物もありません。
凍ったアスファルトは半端なく滑るので、サマータイヤの方は要注意です。
まずは、車を停める為、そのままパーキングがある右岸まで進みます。



駐車場に車を停め、目前のラビリンス式洪水吐を観て驚く前に、度肝を抜かれたのが管理棟のデザイン。
展示施設も併設された管理棟は超が付くモダン建築。建物だけでなく、駐車場からのアプローチや、展望テラスなど、空間が総合的にデザインされています。当然バリアフリー。
手前側の半地下にある展示室へは、モダンすぎて入口が判らず、開かないガラス窓の前で自動ドアが開くのを待ってしまいました。(恥



安藤忠雄風のモダン管理棟の凄い所はデザインだけではない。ノアの箱舟のような建物を支える柱には、最新の免振技術が使われています。
ダムの頭脳として完璧な地震対策です。



すっかり管理棟ばかり観ていましたが、ここで改めてダム本体を眺めます。
丁度、朝日が堤体に射してきました。
2004年竣工のまだまだ新しいコンクリートが朝日に輝きます。



天端を散策します。
取水設備の屋根がテラスになっていて、そこから眺めるラビリンス式洪水吐。
ジグザクの越流部分は前後に深く。天端通路はダム軸から下流側へオフセットした位置にあります。
その為、下流面よりこちらのダム湖側の方がコンクリートの複雑な造形をしっかりと鑑賞できます。



鋭角なラビリンスの先端。
あらゆる土木建築の中で、こんな造形を魅せるコンクリートはこの苫田ダムだけでしょう。
越流部分を乗り越えた水は、垂直の壁を落ちる感じになるので、流麗と言うよりも、豪快な放流になるのではと思います。



クレストの洪水吐と共に、苫田ダムで特徴的なのが堤体中央に置かれた引張式ラジアルゲート。
圧縮よりも引張に強い鋼材の特性を活かす構造なのだそうです。
堤体保護にステンレスが貼られていますね。



この2門ある引張式ラジアルゲートの間には、ガラス張りの一室があり、堤体内エレベータを使って中に入る事が出来ます。
外観からはゲートの機械室かなと思えば、一般見学用に仕立てられた展望室なのでした。
結露取りのハンディワイパーまで用意される細やかな配慮に感激です。

FNAWIP 治水・利水に多くの目的を持つダムですから、是非多くの人に足を運んで見学して頂きたいです。



ダム湖側の予備ゲート群。
苫田ダムは、引張式ラジアルの他に、2門のコンジットも装備しています。
毎秒20㎥までの放流は利水放流設備から、それを上回り毎秒100㎥までは引張式ラジアルの水位維持放流ゲートが加わり、さらにそれ以上となれば、一番下のコンジットが開けられるようです。



天端から望む奥津湖。
ダムにより建設された代替道路も、極力自然の山の斜面を残した、環境に配慮したものに見えます。



照明が高欄に埋め込まれ、管理棟に負けないモダンな天端。
このくらいシンプルにまとめないと、複雑な形状の洪水吐なので煩雑な印象になってしまうんでしょうね。

ビルトインした照明の下には開口部があり、天端の足元を照らすと同時に、夜間、下流から堤体を見上げた時のアクセントとなる仕組みです。デザイン上手過ぎです。



最後にダムの下へ降りてみました。
車でかなり迂回する必要がありますが、芝生の広場があり、正面に架かる橋からダムを眺める事が出来ます。
副ダムから溢れる利水放流が美しいです、天然石を配置した下流も良いですね。

堤体を眺めると、ラビリンスにばかり目を奪われますが、よく見ると中心付近の4門は通常の自然越流式の洪水吐となっています。




従来のダムのイメージ覆す、スタイリッシュなデザイン。
それを裏打ちする最新鋭の技術。そして見学者への配慮。
どこにもスキを見せない完璧なダムなのでした。

苫田ダム
★★★★★


おまけ。
パーキングのトイレもこのお洒落さ。
これがダムなのですか?そう、これもダムなのですよ。

| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム岡山県 | comments(4) | trackbacks(0) | pookmark |
苫田鞍部ダム
堤高28.5m
R/  2004年  国土交通省

2010.01.09見学

2010年、最初のダム見学は岡山の苫田ダムから始める事に。
苫田ダムへの道すがら、まずは鞍部ダムが現れたので見学する事にしました。

今年のダム初めの記念に、特別に僕も影でブログ初出演。
と、言うか初めて使う広角レンズで、影が入ってる事に気付かなかっただけかも。



ロックフィルの苫田鞍部ダム。河原の石のような天然の丸石で化粧されています。
他より大きな石を並べて描いているチェック模様は、苫田ダムのラビリンス式洪水吐をモチーフとしているんだそうです。

冬晴れの朝、気温は低いけど、澄んだ空が気持ち良いです。



堤体下のリップラップと少し離れた所に地下への入口があります。
鞍部ダムには放流や利水の設備はありませんから、堤体の監査廊への入口でしょうか。



右岸の車道から堤頂部まで登ってきました。ダムサイトには駐車場も完備。
堤頂部分は未舗装ですが、車両通行禁止ですし、対岸の左岸で行止りなので、なんら問題ありません。未舗装と言ってもすごく平坦なので、砂の下にはコンクリートで舗装がしてあるかもしれません。

霜柱をザクザク言わせながら堤頂部を歩きます。

下流側とダム湖側で高欄のタイプが違いますが、それには理由があって、このロックフィルダムは、コンクリート遮水壁を持つタイプなのです。



フラットなコンクリートの斜面。
近年のロックフィルの中では、遮水壁を持つのは珍しいかもしれません。

湖面は遮水壁から遥か手前、地山の下に見えます。
この苫田鞍部ダムだけを見たら、もの凄く水位が低く見えますが、これで通常の様です。

苫田鞍部が満水の時は、きっと苫田ダムではラビリンスから放流してるような状態ではないかと思います。
苫田鞍部ダムにしたら、200年に一度という見せ場なのに、ギャラリーはみんな苫田ダムのラビリンスに釘付けなんでしょうね。そう思うと、鞍部ダムはちょっと可哀想なキャラクターです。



堤頂部から下流側。ダム下には公園が広がっています。
遊具などの設備は、まだまだこれからなのかもしれませんが、グランドもあり野外イベントなどにも利用できそうです。
先ほどの地下への入口も見えます。



堤頂部を左岸まで行くと、実際工事に使用したものでしょう、スリップフォームという建設機械が展示されていました。

スリップフォームは、元々道路の舗装用に考案されたものだそうで、機械に設置された鋼製型にコンクリートを投入しながら機械を前進させ、締固めをしながら断続的に平坦なコンクリート面を作ってゆく方法です。
道路以外では、飛行場の滑走路、水路や分離帯の防護壁などにも使用される工法なのだそうです。



苫田鞍部ダム
★★
| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム岡山県 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
呑吐ダム

堤高71.5m
G/AW 1987年 農水省

2009.11.28見学

名は体を表わさず。


呑吐(どんど)ダム。まず、その名前が面白い。

山形の梵字川(ぼんじがわ)、栃木の土呂部(どろべ)と並び、日本3大オモシロ名ダムと勝手に称号を与えていたが、先日ダム便覧で、高知に「ジル蔵池」を発見して、その地位は少しだけ怪しくなった。

地理的には山陽自動車道の三木東インターから南へ数キロの位置にあり、ダム湖であるつくはら湖を山陽自動車道が横断しており、高速上から堤体は見えないが立派な管理棟を視野に入れる事が出来る。

ダム本体は、下流の真正面に架かる橋より、呑んべぇの様なダム名とは裏腹なバランスの取れた端正な姿を見る事が出来る。

紅葉の山里に映える白い壁、赤い3門のクレストゲートが凛々しい。
これでスッキリとした青空があればまた印象も違うのだが、寒風が吹く夕暮れのダムは少し寂しげに見えた。



天端を歩く。
車道になっている天端は、ドライブに来た家族連れがダムからの景色を眺めていた。
全面にスッキリとした直線基調のデザイン。真直ぐに、そして長く減勢工が伸びる。



同じ部分を右岸よりから。
管理道路やガードレールが風景にリズム感を与えている。

ちょっとカッコよいんじゃないですか、呑吐ダム。



呑吐ダム
★★★


おまけ
ダムを正面から観ていたら、左岸の手前に何かいっぱいある、それが、とにかくいっぱい。
スターシップトゥルーパーズのバグみたい(怖っ



で、思わず立ち寄ってしまいました。
ヤンマーは赤、クボタはオレンジ、イセキは青。他の色は無いのかトラクター業界。



と、言う事で、2009年度のダム巡りは、12月はいろいろと忙しくしていた為、この呑吐ダムで終了となりました。

2009年、沢山のダムと、沢山の仲間と知り合う事ができました。
2010年は、ご近所のダムはほとんど行き尽くしてしまったので、以前ほど新規の見学は無理かもしれないけど、引き続いていろいろと見学して周りたいと思っています。

| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム兵庫県 | comments(7) | trackbacks(0) | pookmark |
山田池

堤高27.3m
G/A 1923年 兵庫県営

2009.11.28見学

遺跡のごとく。


神戸市北部の丘陵の中、ひっそりと石積みの古いダムが潜んでいるらしい。
ダムまでは、遊歩道で山を越えるしか手段が無いのだと言う。
その遊歩道も、一部は雨水による土の流出などで荒れ、険しいものだとか。

晩秋の昼下がり、山田池を目指す。
遊歩道の登り口は、呑吐ダムの湖周道路脇に唐突にあるのだが、あまり目立たない為注意しないと車では通り過ぎてしまうだろう。
それよりも、周辺に車を停めて置くスペースがまるで無いので、数百メートル離れた湖畔の駐車場か登り口まで歩く事になる。

遊歩道はいきなりの急勾配、道と言うよりも崖を這うがの如く。黒部ダム直下の旧日電歩道を思い出した。
そんな急斜面も長くは続かず、やがて山陽自動車道の騒音も聞えなくなると、耳に届くのはザクザクと落葉を踏む足音だけとなる。
ずっと登り続けていた歩道がやがて下り坂になると、目指す山田池は近い。

心臓が激しく鼓動するのは、延々山道を歩いて来た事だけでは無い。
林の隙間から陽光を反射する湖面が見える。歩道は山田池の湖畔へ誘ってくれた。



整然と布積みされた切石。円形の取水設備や、四角い柱の高欄が、中世の古城の佇まいを魅せる。

上下に薄い3門の余水吐。
重厚な石造りの橋脚のようなディティールには、明らかな様式美が宿っている。

美しい。



休憩する間も無く、天端を目指す。歩道はそのまま天端へ案内してくれる。
天端からの貯水池。
人の手によるものが何一つ見えない山田池。晩秋の西日が湖面を照らす。



取水設備の赤いアコーディオン扉から内部を除く。
同じ色に塗られたバルブが見える。
それと、床一面に鮮やかなグリーンの苔が絨毯のように生えそろう。強烈なコントラスト。



事前に頂いた情報によると、ダムの直下に降りる道があるらしい。
写真を拝見すると、下流の左岸側からの撮影の様に伺える。
だが、天端から左岸下流は直ぐにガレた崖となっていて、到底降りる事は出来そうに無い。

対岸の右岸なら、下流に降りられそうな道があったので、迷う事無く降りてみる事にした。



直線的な下流面、午前に見た千刈ダムのような裾のドレープは無く、男性的な重厚感が漂う。

両岸から覆う木々がこの古いダムの歴史と、下流に完成した呑吐ダムにより、第一線を退いた現在の山田池というものを物語るようだ。

さらに驚きの事実が待ち受けていた。
減勢池から下流へは、送水トンネルにより地下を水が流れる仕組みになっていた。
つまり、山田池のダム下には露出した河川が無く、よって、そのまま歩いて両岸を行き来できるのだ。

小さく、細く見える送水管。
そういえば、天端の余水吐もとても小さい。
地形図を見ると、山田池の貯水池は四方を山に囲まれ、ダムが築かれる以前も河川といえるほどの川は無かったのではないかと思う。
収水範囲も広くない様なので、大雨などでも一気に水位が上昇する事は無かったのではないだろうか。




山田池。

辿り付くには荒れた歩道でしかアクセス出来ず。電気さえ引かれていない、当時のままの設備は現在どの様に運用されているのだろうか。
それとも、下流に新しいダムが完成した事により、誰もいない森の中で静かに余生を送っているのだろうか。



山田池
★★★★★

| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム兵庫県 | comments(1) | trackbacks(0) | pookmark |