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ダムA (仮名)

堤高 15m以上
G/利水 民間企業所有


ダムを管理する事業者を分類すると、大きく分けて3つに分けられます。
まずは国や地方自治体、それに水資源機構などの、公共事業によるダム。
二つ目に電力会社が管理するダム、全国10社の電力会社や電源開発のダムなど。

そして3つ目が、民間企業が所有する社用ダムです。
金属の精錬や電気化学工場で使用する電力供給であったり、工場で使用する工業用水を補給する目的で、民間企業が事業主となって、所有、管理しているダムです。

企業所有のダムは、それ自体が企業の施設や私有地などの所有物であり、ダムの管理はその企業活動の一環として行われている事業なので、見学には特に注意する必要があります。
さらには外来魚の密放流や、一部の心無い釣人によるトラブル、さらにはゴミの不法投棄など、ダム管理上の問題は多く、それらに費やす費用は企業活動上の障害であり、関係のない者は出来れば訪れてほしくないと言うのが、ダム管理者にとって正直な所なのではないかと察します。

(勿論、企業所有のダムであっても文化財としての価値や、観光資源として積極的に開放したり、花見シーズンなど期間を決めて公開されているダムもあります。
また、ダムが幹線国道脇にあるなど、部外者と遮断とするのが物理的に無理なダムもあり、状況はさまざまです。)

前置きが長くなりましたが、今回取上げるダムはそういった企業が所有するダムのひとつです。
堤高は15mを超えている現役のダムでありながら、日本ダム協会のダム便覧にも載っておらず、ネット上にもほとんど情報が無い事から一般には全く知られていないとても珍しい物件です。

今回のレポートは特別編として、ダム名、所在地、その他具体的な情報は全て伏せる事にしました。
このダムについて、ネットで詳細を公表する事による影響が予測できないと思ったのが主な理由です。
いつもダムファン(特に初心者の方々)のダム訪問ガイドのつもりでブログを書いてますが、今回だけはご了承頂きたいと思います、ごめんなさい。


さて、本題のダムですが、上記の通り、某民間企業の所有する、利水専用のコンクリートダムです。

某年某月、場所は日本の何処か・・・。

その堤体を一目見た時、雷に撃たれたような衝撃が僕の体中を駆け巡り、湧き上がるように一気に鳥肌が立ったのを覚えました。

洪水吐などの放流設備を持たず、只々巨大なマスコンクリートの塊。
その下流面は全面が水墨画の黒雲を思わせる重厚な表情に覆われていて、見上げる僕を圧倒しました。
そこには、どこか異様とも感じさせる不思議な世界が広がっていたのです。

IMGP9941.JPG

その訳は、ただ単純に古いコンクリートだからと言う事だけではありませんでした。

のっぺりとした下流面の形状。
そう、このダムにはコンクリート打設の継目という物が一切無いのです。
横継目はおろか、水平に痕跡を残す打継目すらありません。
それは今まで訪れたどのダムともまるで異なり、文献の中でも見た事も、聞いた事すらなく、全くの未知の姿なのです。

表面は平坦ではなく不規則に大きく波打っており、下流面全てが法面に塗布するような吹き付けコンクリートで覆われていると言う事以外、全てが謎に包まれています。

いったいこのコンクリートダムが、どのように建設され、そしてどのような経緯を経て、現在の姿になったのだろうか?。
その不思議な外観と、そこに秘められているであろう史実への興味が湧き上がります。

IMGP9944.JPG

しばらくダム真下で茫然とした後、少し移動します。

堤体を斜めから観ると、その独特の形状もより良く判ります。
全体を黒雲に見せていた染み模様に見とれてしまっていた事もあり、ここで改めて堤体の全体像を冷静に観察する事が出来ました。

ダム便覧に未掲載であるものの、堤高は軽く15mは越え、目測ながら20m強と言った所ではないかと思います。

天端から始まる下流面の傾斜はきつく、天端からほぼ垂直から始まり、ゆるやかなバケットカーブを経てやはりきつめの下流面勾配へと繋がります。
堤体の断面形状や、独特の存在感から発散される雰囲気は、僕が好きで観慣れている石張堰堤に限りなく近い姿をしています。

帰宅後、このダムを所有する企業の社史から竣工年を知る事が出来ましたが、堤体のシルエットや、非常用洪水吐が横越流式である事、さらに取水塔の真下に底樋を持つ事等の特徴から、ダムの完成年代は推測して頂きたいと思います。

IMGP9957.JPG

左岸に登って来ました。
堤体は既に日陰になっていましたが、夕暮の斜陽に湖面が輝いていました。

コンクリート打ちっ放しの天端通路が、ダム全体の塊感を助長させます。
まさにコンクリートの塊といった姿です。

写真を撮影している場所は全て自由に立ち入る事が出来ますが、当然ながら天端は堅く閉ざされています。
ここで偶然、地元の方に話を伺う事が出来ました。

以前は貯水池を囲うように遊歩道もあり、天端も歩道として開放されていたそうです。
当時は立派な鯉等を釣る事も出来たのですが、外来種の密放流後はマナーの悪化が深刻となり、結果として現在のように閉鎖されてしまったのだそうです。

IMGP9959.JPG

コンクリート打ちっ放しの通路。
細い鋼管の手摺。
これ以上、省く物の無い、極めて簡素な天端。

天端に雨水の排水溝さえも無く、天端に降った雨水が吹付けコンクリートの波打った下流面に直接流れ出す事で、あの得も言われぬ黒雲模様を生み出していると言う事が解りました。

そして気になるのは、堤体全体から感じる石張堰堤によく似た雰囲気(オーラ)。
下流面の勾配、それに本体非越流とし、貯水池から横越流としている非常用洪水吐など、石張堰堤のスタンダードとも言えるレイアウトを持っている点です。(川筋や地形から横越流とする根拠が見当たらない)

ここで石張堰堤ファンの僕が推測をするならば、当初、このダムは石張堰堤として築堤されたものの、後の改修により表面の石の上から、もしくは石を斫り撤去した後、吹付けコンクリートを塗布したのではないかと言う、大胆な推測をしてみたいと思います。

但し、先程、話を伺った地元の方(年頃は私と同じ40歳前後)によると「ずっと昔からこの姿だった」との事でした。

IMGP9970.JPG

石張堰堤の上をコンクリートで覆ってしまう事例は、少ないながらも実在すると僕は考えていて、他のダム物件でも現在調査を進めています。
しかし、このダムがそれに該当するかは、この時点では何とも言えません。
また、上流面は通常の型枠整形と見られたので残念ながらその可能性は低いと思われます。

それでは、あくまで素人の空想ですが、もう少しだけ現実的な推測をしてみたいと思います。

このダムを所有する企業は、自社グループ内に独自の工事部門を持っていそうな大企業である事を踏まえると、設計から施工まで、全て自社の手によってダム建設が行われたのではないかと推測します。

そこにダムファンとしてのロマンを添加するなら、築堤方法は当時既に主流であった型枠整形としたが、手本として参考にしたダムが古くからの石張ダムであった為、洪水吐のレイアウトや、堤体のシルエットが石張ダムに酷似してしまったのではないか?、そんな空想が浮かびます。

さらに、その後の改修工事も全て自社にて施工した結果、日本の何処のダムとも異なり、どのコンサルタントやゼネコンとも関連を持たない、現在の独自の姿になったのではないだろうか?(言うなればコンクリートダムのガラパゴス化現象)

吹付けコンクリートの波打った表面は、部分的に補修を繰り返した結果、表面の吹付け層の厚みに変化が付いたのではと思われます。

勿論、これらの推測は空想に近いもので事実とは多分に異なるとは思うのですが、そんな事も想像したくなる、謎めいた魅力に溢れるダムである事だけは、疑う余地のない事実と言えます。

IMGP0015.JPG

このダムは、日本の何処かに実在する現役のダムですが、今回のレポは中途半端な情報で、ダム巡りのプランとして役立てる事が出来ずごめんなさい。
ですが、ダムに興味を持ち、全国のダムを調べて行けば、必ず行き当たると思います。

日本全国にはいろいろなキャラクターのダムがありますが、詳細不明のこんな物件があっても面白いな、なんて思って頂けると幸いです。

Aダム(仮名)
★★★★


| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム特別編 | comments(6) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
2013/06/05 7:43 AM posted by: 夜雀
レポートお疲れ様です。
ふむふむ。
そういう考察に至りましたか。
勉強になります。

今度帝都に行った時に土木学会図書館に行く時間があったら該当資料がないか調べてきますね。しかしこの時代の堤体は例の台帳級の文献でないと載っていないような気もする。

考察を裏付けられる資料があればいいなぁ。

   夜雀 拝
2013/06/05 11:19 PM posted by: あつだむ宣言!
お疲れさまです。

考察というよりも妄想爆発のレポでした。
なので勉強になったなんて恐縮です。

こういった企業所有のダムが、まだまだ日本の何処かに潜んでいるんじゃないかと思います。
だからダムって面白いんですよね〜。

帝都で何か出ましたら宜しくお願い致します!。
2013/06/06 6:34 AM posted by: denwaban@南九州出張中
公開判断を一部クローズドにすると(賢明な判断かと)こうもミステリアスなダムになるんですね。
古い、という事ですが却って近未来のダムっぽく見えるというのが興味深いです。
企業所有のダム、という事ですが用途が限定されると既存のダムのスタイルにこだわる必要がなくなるんでしょうね。
面白かったです。
2013/06/06 12:37 PM posted by: あつだむ宣言!
denwabanさん、こんにちは。
九州のダム、寄ってこれそうですか?(笑)

なかなか個性的なダムでした。

今でこそ、企業が独自にダムを作っちゃうなんて事は無理かもしれませんが、戦前ならそういう事例もありうるのかな?なんて思います。

2013/06/06 8:58 PM posted by: マック
お久しぶりです!

なんか秘密結社の要塞に見えます(苦笑)。

悪っぽい雰囲気を感じたのは…
私だけか(^_^;)
2013/06/06 10:02 PM posted by: あつだむ宣言!
マックさん、ご無沙汰してました。

はい、ヒーローか悪役かと聞かれたらヒールです(笑)

でも、主人公よりも悪役のほうがカッコいい事はよくある事ですよね〜。
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