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綾北ダム

堤高75.3m
A/FP 1960年 宮崎県営

2011.11.5見学


田代八重ダムを後に、綾北川を下って行きます。
長細い綾北ダムの貯水池、曲がりくねった湖畔道路を進んで行きます。

昨夜からの雨は上がり、霧も晴れて来ました。

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田代八重ダムからおよそ10km、綾北ダムが見えて来ました。

綾北ダムは、洪水調節を主目的として、発電も行っている宮崎県営の多目的アーチダムです。
クレストセンターに大きく空いた2門の非常用洪水吐。
その両脇に間隔を開けて、コースターゲートが見えます。

車を停め、写真を撮っていたら、何処からか犬の鳴声が聞こえて来ました。
静まり返った朝の湖面に、犬の声が反射して響いています。

IMGP1848.JPG

車でダムサイトに到着しました。
出迎えてくれたのは、ダム管理所の愛犬でした。

湖畔に車の音がすると、吠えて職員さんに知らせるみたいです。
こちらから声を掛けると、すぐに静かになりました。賢いいい子です。

陸の孤島のような場所にある綾北ダムです。
九州に熊は居ませんが、猪や猿避けに飼っているのかもしれません。

IMGP1891.JPG

高速のインターからおよそ2時間、ようやく辿り着いたという感じです。

今回の九州遠征は、過去の遠征で未踏となっていた物件をメインに巡っています。
5基のアーチダムを有するアーチ王国宮崎県、これでようやくコンプリートです。
(大分の北川ダムも観たので、離島以外は九州のアーチもコンプ達成)

IMGP1882.JPG

さて、コンプリートする事よりも楽しみにしていたのは、綾北ダムが他のアーチダムでは有り得ない超個性堤体という事もありました。

鮮やかな朱色に塗られた怪しい物体が、湾曲したアーチ面にへばりついています。

IMGP1869.JPG

ななな、なんですかこれは!

不思議な、不思議な、放流設備。
何故だか急に、高2の生物で習ったT2ファージを思い出しました(見比べると全然似てないのですが)。

IMGP1853.JPG

実はこれ、コンジットゲートなのでした。
アーチダムなのに、あえてラジアルゲートと言うのか実に変態的!

IMGP1865.JPG

鮮やかなペイントで怪しさ2割増し!
(グレーとかもっと地味な色だと、もう少しおとなしく見えると思うのですが・・・この色は確信犯?)

ゲート室の屋根も壁も同じ色ってのもミソですね。

IMGP1857.JPG

ゲート室の下は紛れも無くラジアルゲートが付いています。

通常アーチダムのコンジットはローラーゲートと決まっているような物ですが、そこをあえてラジアルにするかっ!。面白すぎ!。

アームの支点は、堤体から伸ばされた鋼製の太いフレームによって支持されています。
扉体の両脇からコンクリートの扶壁が立ち上がっていますが、導流壁であって、ゲート本体とは分離しています。

なんだか重力式の高圧ラジアルが堤体から飛び出しちゃった感じで、スケルトン模型とかのイメージです。

IMGP1897.JPG

ゲートの下はコンクリートのジャンプ台になっています。
こうまでしてコンジットにラジアルゲートを使いたかったのか!?。

IMGP1859.JPG

特徴ありすぎのコンジットに目を奪われぎみですが、アバットのコンクリートの表情も緊張感があってマニア的になかなかよろしい・・・。

最下層のキャットウォークが、ジャンプ台の下に入りこんでいます。
いいなあ、あそこに行ってみたい・・・。

IMGP1893.JPG

少し下流に目を向けると、副ダムもちゃんとアーチになっていました。
なかなかグラマーな感じの副ダムです。

IMGP1864.JPG

手前(右岸)のコンジットも全く同じ造りです。

コンジットの放流時には、左右のジャンプ台で飛び出した放水が空中で交わってクロスファイア(集中砲火)状態になるそうです。

IMGP1872.JPG

右岸のコンジット辺りを観ていたらパイプ状の物が・・・プラムラインですね。

アーチ式の堤体のコンジットに高圧ラジアルゲートを使っている不思議な綾北ダム。何故この様な凝った構造をしてまでラジアルゲートを採用したのでしょうか?。

調べてみると不思議な見た目とは裏腹に、実に単純明快が答えが解ってきました。

IMGP1878.JPG

綾北ダムは1957年に着工、完成は1960年です。
当時は戦後の高度成長期の真っ只中で、ダムに於いても貯水をより有効に活用する事が求められはじめていました。
そこで考え出されたのが、高圧下での大容量調整放流設備、すなわち「コンジットゲート」です。

実は、綾北ダムこそ我が国で初めてコンジットゲートを装備したダムなのです。

これはアーチ式では勿論、重力式コンクリートダムを含めても、初めての事でした。(確認の為にダム便覧で綾北より古いダムを全てチェックしました・・・)

なにせ我が国で初めての試みであり、高圧下の放流ゲートは実績がなく、綾北ダムのゲートはアメリカの高圧ラジアルゲートを技術導入し設計の基礎としました。
しかし、ゲート支持部の荷重集中など、アーチダムでの高圧ラジアルゲートの採用は構造上の難点もあり、その後アーチダムのコンジットには高圧ローラーゲートが使われる様になります。

つまり、
「選んでラジアルにしたのではなく、最初だったので選択肢がラジアルしか無かった」

と、言う理由がこの不思議なゲートの真相のようです・・・。

IMGP1880.JPG

日本初のコンジットゲートは、他には類を観ない超個性派ダムとして、ダム史の1ページを飾っています。

綾北ダム
★★★★

| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム宮崎県 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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