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厳木第二調整池ダム

堤高不明
A/P 1957年 九州電力

2011.11.3見学

ダムの新しい見つけ方。


それは、2度目の九州遠征から帰って、自宅で佐賀県の下田ダムのレポートを書いていた時の事でした。



下田ダムに設置してあった、周辺のダムとの関係図を示す看板。

今回「発見」したダム、全てはこの看板を撮った写真から始まりました・・・。
ブログ記事の資料用に、なんとなく撮っておいた1枚です。



下田ダム(写真中程下)は1930年に造られた九州電力の古い発電用ダムです。
下流(写真右上)には国交省の100m級の大型多目的ダムの厳木ダム、
天山ダム(写真左上)は別の水系ですが、厳木ダムとの間で揚水発電をしている九州電力のロックフィルです。

さてさて、この看板の中に、何か気になる物がありませんか???

ヒントは赤く現在地を示した下田ダム(厳木発電所取水ダム)の辺りです・・・。



この辺りです・・・。
ほら、何かありますよね・・・。

ダムファンなら、みんな大好きなアレです、アレ。



そう、これです!!!。

まさか大きく口を開けた、巨大オタマジャクシじゃないですよね?

この形・・・・。

これって、「アーチ式コンクリートダム」なのでは???。



看板では、発電所に送水している貯水池らしい事は解るのですが、肝心のダム名等は記されておらず、全くの謎の物件です。

ちなみに、国土地理院の地形図も見てみると・・・。
やっぱり、堰堤らしき部分がアーチ風に描かれています・・・。

知り合いのMI6のダブルオー要員に、ダム名称の調査を依頼すると、
極秘ルートからの情報で「厳木第二発電所調整池」であると報告がありました。
さすが少佐、殺しのライセンスを持っているだけあります。

ダム便覧に未掲載なので、15m未満の堰堤ではないかと思われます。
ごく簡素な造りで、水槽のような物ではないか?。
よしんば徳島の高西ダムのような、極小のアーチダムなのではないか?。
妄想に近い勝手な想像が膨らみます、これは確かめなければなりません!。

次に九州を訪れる時は、必ず現地調査すると決めました。



と、言う事で、再びやって来ました。
厳木ダムの上流、一年ぶりの下田ダムです。

地図によると、下田ダム上流から脇道へ入ると、問題の堰堤の付近までは行ける様ですが、ダムサイトまで実際に行けるのか等は全く判りません。正直、出たとこ勝負の行き当たりバッタリです。



地図で目星を付けていた辺りに車を進めると、そこには予想外の展開が待ち伏せていました。

路肩に、少佐の報告にあった名前が書かれた柱を発見。
それに、その脇から怪しい歩道が僕を誘っているのでした。



これは、きっとダムの神が僕に行くのだと言っているに違いありません。
林の木々の中を縫うように続くコンクリートの階段は、未踏ダムへ誘うモーゼの道に思われました。

急勾配の歩道は、朝から色んな所を歩いた足腰をさらに重くしましたが、もう後戻りは出来ません。



2〜300m程、延々と階段を登り続け、ようやく道はなだらかになりました。
どうやら堰堤のある標高に達した模様です。

山腹を水平に移動します・・・。



急にぱあーっと視界が開けたかと思うと、
フェンスの向こうに、何やら大きな建造物が姿を現しました。



車を止めた車道からここまでは、立て看板も含め、立入の規制はありませんでしたが、さすがに周辺はフェンスで厳重に囲われていました。

フェンスにかぶり付きで、その構造物を観ます。
ドキドキ。



フェンス越しに目に飛び込んで来たのは、シンプルなシリンダーアーチ。
その姿、紛れもなくアーチ式コンクリートダムです!!。

しかも、想像していたより、はるかに「ダムダム」しています!水槽どころか、高西ダムよりも遙かに立派なダムそのものです。

残念ながら堤高は目視でも15mには届いていない感じがします、10〜12mか?。
しかし、左右にワイドに広げたアーチは、これをダムと呼ばずに何と呼ぶのか?と言いたいくらい立派です。



そして何より驚いたのは・・・・。

福岡県須惠町の水道水源ダムである、須惠ダムにそっくりな事でした。
須惠ダムは堤高21m、堤頂長144.5mのアーチ式コンクリートダムです。
(下の写真は須惠ダム)



シリンダーアーチの堤体、クレスト中心に開いた2門の余水吐ゲート、その下のタタキによる越流の減勢の方法までもが同じなのです。

もはや違うのは全体の寸法だけと言って良いほど似ているのです。
おそらく、同じコンサルタントによる設計と考えて間違いないと思います。

須惠ダムは1964年の完成、対してこの厳木第二調整池はそれよりも古く1957年に完成していたらしく、どちらかと言うとこっちの方が兄さんみたいです。

天端は入口が施錠され、フェンスの隙間から観るだけですが、山中の無人施設なので仕方ないです。



堤体中心部のクレストゲート。
スピンドルが立っていますが、排砂ゲートのものかと思います。



ゲート部分の堤体下部の穴が、その排砂ゲートと思います。
ちなみに須惠ダムも、水深は少し上ですが、同じ配置で排砂ゲートを持っています。



対岸の左岸に発電所への送水設備。



手前の右岸は、スラストブロック付きです(ちなみに、これも須惠ダムと共通)



大きな円弧を描く天端のライン。
調整池もなかなか立派な広さです。



右岸から下流方向です。
天端には入れないので空ばかりの写真ですが、山の頂上といった感じの所にあり、下流側の視界は大きく開けています。
見下ろす位置に下田ダムがあるのですが、地形の都合で観る事はできません。

そろそろ夕暮が近くなって来ました。
こんな高い所に登って来ちゃって、無事帰れるだろうか・・・足ガクガク 笑。



立て看板にたまたま描かれていたイラストから始まった今回のダム調査。
実際に現地の山奥で待っていたのは、まぎれもなくアーチ式コンクリートダムでした。

全国にわずか52基しか造られていない希少な形式とも言えるアーチ式コンクリートダム。重力式ダムと比べ、セメント使用量が少なく低コスト、堤体積が少ない事から工期も短いなどのメリットがあります。
ダムが大型になるほど、そのメリットも大きくなる半面、小さな堤体では効果も薄く、どちらかと言うと大ダム事業に適したイメージを持っていました。

しかし、コンクリートダムの理想と言えるその形式は、基礎岩盤の条件され合えば、規模の大小に関係なく根本的な優位性は明らかで、ましてや資材の搬入が困難な山中の工事に於いては、そのメリットを大いに発揮できるダム形式と言えます。

堤高15mに満たない河川法の堰堤クラスは、所詮素人のダムファンでは、なかなか情報は掴めませんが、日本の何処かで一般の目に触れる事なく、こんな小型のアーチダムが、まだまだ潜んでいるのは間違いないと感じました。



厳木第二調整池ダム
★★★

| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム佐賀県 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
2012/05/10 5:41 AM posted by: 夜雀
おはようございます。

おおお。
これはクイズに出したら須惠ダムと見分けがつかないと思うくらいそっくりさんだ!!

ほんとに吃驚の相似。

九州電力様、他にも持っていらっしゃるんじゃないかとわくわくします。

いや、絶対、持っている気がするな〜。

   夜雀 拝
2012/05/10 12:20 PM posted by: あつだむ宣言!
お疲れ様です、少佐。その節はどうも。

何故自治体の水道ダムにそっくりな、電力会社の発電ダム。

まさかこんな物件だったとは現地でびっくりでした。

明日からまた、未確認物件の探索に西へ向かいます・・・。
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