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戦前のハイダム型録


個人的な好みを言うとフィルダムよりもコンクリートダムが好きです。
その中でも大型のオールドコンクリートダムは、石張堰堤と並び僕の大好物と言えます。

題して「戦前のハイダム型録(カタログ)」
今まで実際に訪れた戦前のオールドダムを、堤高順にベスト10でまとめました。
戦前の範囲ですが、細かく区分すると〜1941までが戦前、終戦の1945年までが戦中とも言えますが、ひっくるめて1945年以前に完成したダムとしました。

この時期を代表する大型ダムは、ほぼ間違いなく発電専用のダムだと言えます。
発電の為だけに建設されたダムたちは、絶対的な機能主義を前提としつつ、戦争へと突き進む大きなうねりの中で、まるで国家高揚を謳いあげるかのように、力強く、威厳に満ちたディテールを併せ持つ事が特徴です。


第1位
堤高87m
耳川のエンペラー 塚原ダム(1938年)宮崎県

その堂々たる姿は皇帝と呼ぶに相応しい威厳に満ちた堤体です。
西洋の砦を思わせるクレストの造形、そして何より滑らかで美しい堤体表面が、観る者に高貴な印象を与えます。

ダム建設には、日本のコンクリート研究の先駆者であった吉田徳次郎氏が顧問として参加。コンクリートの配合や骨材の選定など、現代のコンクリートの基礎とも言える技術が凝縮されています。
ちなみに吉田徳次郎氏は少し前にアップした広島の「鉄筋コンクリート船」の産みの親でもあります。

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第2位
堤高83.2m
大同電力のフラッグシップ 三浦ダム(1945年)長野県

福沢桃助が計画し、ニッパツの手よって完成した木曽川最上流に待ち構えるラスボス。
非越流の巨大な堤体が醸し出す迫力は、日本離れしたワールドクラスのサイズ感。
それは電力王・福沢桃助の夢のスケールを物語っています。

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第3位
堤高79.2m
庄川のダム神 小牧ダム(1930年)富山県

石井頴一郎氏によりコンクリート内部発熱に関する本格的な研究が実施され、耐震設計論で名高い物部長穂氏や、後に小屋平ダム(下記10位)をデザインする山口文象氏も建設に参加するなど、いろんな意味で話題が尽きません。
巨大な曲線重力式はアーロックダム(1916年アメリカ)を参考にしたもので、具体的な計算はされていないものの、アーチ効果を期待したものと言われてます(基礎岩盤に現れた断層を避けるにも都合が良かったとも)

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第4位
堤高73.5m
吉野川のオールドジェントルマン 大橋ダム(1939年)高知県

貴族的な印象のクレスト部。
「若い頃はブイブイ言わしたもんじゃよ」
そんな事を語ってくれる、素敵な老紳士です。
現在は稲村ダムという若い相棒をコンビを組み、生涯現役を貫いています。

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第5位
堤高73.2m
庄川ワンダー 祖山ダム(1930年)富山県

高さ73mの本堤は国道から奥まった所にあり、そこに辿り着くまで、流木設備の遺構が残る副堤など、ちょっとした探検気分が味わえる物件です。
3位の小牧ダムの上流にあり、セットで訪問される事をお勧めします。

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第6位
堤高67.4m
広島の秘密電気工場 立岩ダム(1939年)広島県

早朝の薄暗く深い霧の中を延々走って辿り着いた事もあり、とにかくすごい山の中にあったという印象があります。
周囲は民家はおろか何もなく、ただひっそりと静まり返っています。
深い山の中、だれに見られる訳でもないのに、ただ黙々と任務を遂行する・・・。そんな発電専用ダムの鏡のようないじらしい姿に、涙腺が緩むのを抑えきる事ができません。

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第7位
堤高64m
千頭ダム(1935年)静岡県

このダムのみ未踏の為、写真はありません(ごめんなさい)
過去の資料でしかその姿を見る事はできませんが、実は64mもある事に驚きです。
元々徒歩でしか行けない物件、さらに水害や地震による災害により現在は立入厳禁となっています。
さいはての地に多いこのジャンルの中でも、とびきり訪問難易度の高い(訪問不可能)物件です。


第8位
堤高62.1m
石張の楔 帝釈川ダム(1931年嵩上)広島県

なんとここで、元「石張ダム」がランクイン!
60mを越える堤高にして堤頂長わずか35mと言う、日本一縦長のダムとしても有名です。
全面的な再開発により、石張当時の姿は見る影もありませんが、急峻な谷に打ち込まれたクサビのような姿は今のなお健在です。
ダム本体までは歩道を伝い徒歩でしか行く事が出来ませんが、景勝地とあり遊覧船に乗って湖上からダムを観る事もできます。

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第9位
57.5m
日発スタンダード 岩屋戸ダム(1942年)宮崎県

上流の上椎葉ダムが放つ後光が鮮烈すぎて、その影になってしまい、いまひとつ印象の薄い物件ですが、よく見ると、有機的な堤体導流壁、臼状にラウンドした減勢工など、ニッパツらしい特徴に溢れたダムでもあります。

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第10位
堤高54.5m
名堤のオーラ 小屋平ダム(1936年)富山県

魔境・仙人谷ダムと揃いの、戦前を代表するデザイナーズダム。
黒部トロッコからはその上半身しか観賞できない事が本当に残念。
間違いなく、日本を代表する名堤のひとつではないかと睨んでいます。

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さてさて、堤高ベスト10は以上ですが、参考に1945年には着工済で、終戦直後に完成した背の高いダムを紹介しますと・・・。

長沢ダム(71.5m 高知県)

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高暮ダム(69.4m広島県)

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相模ダム(58.4m神奈川県)

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などがランキングにくい込んできます。
小河内ダムや有峰ダムなども戦前着工組ですが、ジャンルとしては少し異なる感じですね。

それでは次回もまた、別ジャンルでダムカタログとして紹介したいと思います。
乞うご期待。



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