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三浦ダム

堤高83.2m
G/P 1945年 関西電力

2011.09.19見学

大同電力のフラッグシップ。


ダムを観て回るようになって3年くらいになりますが、当初からずっと行ってみたい、観てみたいと思っていたダムがあります。
長野県王滝村、御嶽山の山麓にある三浦ダムです。

自宅から3時間くらいの場所なので、その気になったら何時でも行ける距離ですが、ダムへ向かう唯一の道は国有林の専用林道となっていて、ダムの手前8キロに林道のゲートがあり、関係者以外の立入を拒んでいました。

ダム巡りを始めた頃にこのゲートまでは行っていたのですが、
「許可なく車両や歩行者の通行を禁止します。」と明記されていて、がっかりして帰った事があります。(徒歩でもダメだなんて・・・)

なんとか、三浦ダムへ行く方法はないものか?
関電の職員になる?営林署の職員に?王滝村役場に勤める?
唯一、木曽森林鉄道に関するイベントが一般でも林道内に入れるチャンスですが、今年もそのイベントがあるかは不明・・・。ここで唯一の望みの糸は切れたかと思いましたが、別の行事で年に何度か一般の人間でも林道に入れるイベントの存在が解ってきました。

「OSJトレイルランニングシリーズ」

山中を駆け巡るトレイルランのシリーズ戦が、毎年この三浦ダム周辺の国有林を使って開催されていたのです。
しかも、第8戦の大会は、三浦ダムの天端をコースが通過しています(!)

よっしゃー!今から体鍛えてレースに参戦!??

と、言う事で、OSJクロスマウンテンマラソン・イン・王滝2011の当日。

今まで立入を拒んできた林道入口ゲートはフルオープンのウエルカム状態。
この場所も大会のコースに含まれているからです!



と、ここでネタばらし。
40前のおじさんがいきなりトレイルランに挑戦なんて自殺行為です。

ここで、昨年より認定を受けている「ダムマイスター制度」の出番です。
トレイルランの主催事務局様にコンタクトを取り、写真撮影目的に特別にコース内(つまり林道内)への立入許可を頂きました。

いえいえ、決して私利私欲の為にダムマイスターを利用した訳ではありません。
素晴らしいダムを広く知って頂く事がダムマイスターの使命ですので。

それに今回は、歴史ある戦前のオールドダムの天端を、色とりどりのカラフルなウエアを着たランナーが駆けて行く・・・。
すごくいい写真が撮れそう、フォトコンのダムに親しむ部門はもう獲ったも同然。
あれ?やっぱり私利私欲???

なにはともあれ、同じダムマイスターでダム友のひろ@さんも誘い、二人でいざ三浦ダムへ。立入許可は頂きましたが、ゲートからは徒歩で向かいます。

9月の早朝。雲一つない秋空が絶好のレース日和、そしてダム巡り日和。
ゲートから8キロほどある林道は、かつての木曽森林鉄道の軌道を利用した林道なのでほとんど坂がなく平坦。
談笑しながら歩く事しばし、木々の間からとてつもなく大きな壁が姿を魅せました!。三浦ダムです。

堤高83.2m、堤頂長290m。かなり大きなコンクリートダムです。

巨大な古びたコンクリートの塊は、朝日を鈍く反射しています。
白いエレベータ塔が1本、渋い色のコンクリートから浮き上がって見えました。



また少し歩いて、ダム左岸に到着しました。

洪水吐が本体に無い(見えない)シンプルな堤体は、日本のダムではなく、もっと大きな大陸的なものに感じさせます。
ダムに関する洋書に載っていそうな風貌です。

竣工は古く、戦中の1945年まで遡ります。
宮崎の皇帝こと塚原ダム(堤高87m)に次ぐ、83.2mという大規模なこのダムは、福沢桃助率いる大同電力によって計画されました。
やがて日本は戦争の時代に突入し、国の政策により日本発送電に計画は引き継がれ、戦中を通して建設が進められた三浦ダムは、終戦の年に完成を迎えます。



なだらかなバケットカーブからせりだしたクレストの形状。
オールドダムとしては、異例とも感じるシャープな造形です。

そして、思わず声を上げて驚いてしまったのは真近で初めて目にする高欄のデザインでした。高い部分と低い部分が交互に並ぶ凝った造形。

コンクリートでこんな凝った装飾を施すのは、そうです、間違いありません。
この高欄は、この三浦ダムが大同電力によって計画、設計されたダムである証だと直感しました。

電力王と呼ばれていた福沢桃助は、自身が携る木曽川水系の発電用ダムにそれぞれ異なった、凝った意匠を施した事で知られています。



完成から65年以上経ち、コンクリートは物凄い表情を生み出しています。
ざらざらした肌、分厚い苔。



そんな迫力ある堤体と比べ、真っ白で滑らかに見えるエレベータ塔。

傾斜のある下流面よりも鉛直なエレベータ塔が白いのはよくある事ですが、あまりにもその差が激しいので、表面保護剤などが塗布されているのだと思います。

よく観ると、エレベータ塔のコーナー部分にもさりげなく段差が付けてあり、塔をすっきりと見せるデザイン処理が施してあります。



大きな下流面。
ざらついた肌。
大型のオールドダムの魅力、アフターバーナー全開。



林道からそのまま繋がっている天端道路を歩きます。

定間隔で高さを切替えている高欄。
低い部分に付いている鋼管の手摺は後から追加した様にも感じました。



その高欄には、所々に四角い穴が抜いてありました。
穴の側面には配線を通していただろうダクト穴もあります。

これはかつての照明が設置してあった名残ではないかと思います。
堤体を下から見上げた時のクレストの飾り照明と、天端道路の灯りを兼ねた照明器具が高欄にビルトインしていたのだと思います。

同じ手法の照明が上椎葉ダムの高欄にもありますが、上椎葉はこの三浦からずっと後のダムです。
大同電力の力を誇示するかのように、とても凝ったデザインが施されていたのだと思います。



このような凝った仕掛けの高欄を観るのは下流側だけとなっています。

天端の貯水池側は、端から端まで冬季通路が貫いています。
この通路の為、天端から貯水池は一切目にする事は出来ません。
天端のやや右岸寄りに通路とは異なる建屋があり、発電所への取水設備に関する建物だと思います。



エレベータの近く、鋼管のガードに囲われているのは地震計でした。
ガードに結ばれたポールは、除雪の目印でしょうか。



天端から下流を見下ろします。

真下にある大きな建物は発電所。水が勢いよく湧き出していました。
一見すると減勢池や副ダムに見える水面は、発電所から出た水の導水路で洪水吐とは一切関係ありません。



導水路の先には3門のゲートを持つ水門。
水はここで直角に右折し、導水トンネルに導かれ、8キロ下流にある滝越発電所へ送られる仕組みとなっています。
滝越発電所は、林道入口ゲートの丁度川を挟んだ対岸に見る事が出来ます。

全ての水が導水トンネルで王滝川をパスする為、三浦ダムから下流は枯れ川になってしまいそうですが、ここからすぐ下流に別の谷(白谷川)が王滝川に合流しており、滝越までの川の水が枯れてまう事はありません。



ダムの真下は広場のように埋立てられ、平坦になっています。

ダム便覧の情報では、ダム建設の工事従事者は延べ210万人にも上り、建設現場には労働者の街が出現したとあります。
この広い平地はかつての街の跡地を思わせますが、現在は水門と発電所へ通ずる冬季通路の先に、職員宿舎といくついかの木造の建物を見るだけとなっています。



天端を歩いて右岸まで来ました。
ダム本体の右岸端には余水吐があります。



余水吐はローラーゲートが2門。
ここに来て、ようやくゲート越しに貯水池の水面が見えました。

しかし、色こそブラックですが、関電といえばラジアルゲートのイメージなのですが・・・。



ゲートピアに残る円弧状の戸当り?。いったい何の為の戸当りなのか?
遺構であるのか?それとも保守などで使う現役の物であるのか、全く不明。

現在では見ない型式のフラッシュボードの名残ではないかと思いました。



ゲートから下は、ほんの少し開渠の部分があり、トンネル式の余水吐となっています。
トンネルは、右岸の山を貫通し王滝川へ注ぐ白谷川へ繋がっています。



トンネル式の余水吐で注目したのは、暗渠の入口部分の装飾です。

アーチ状の間口の中心のデザイン。
明らかに石積アーチの飾り石を模したレリーフとなっています。
もちろん、全てコンクリートで出来ていますから、この形状にする構造的な理由はありません。

石積の装飾美を残したコンクリートの造形に、人の美的感覚の変化よりも早いスピードで変化した、当時の土木技術の変化が読みとれます。



右岸端の高欄。
親柱の上にあるのは人感センサーです。

親柱の上が四角く抜いてありますが、やはり照明等が入っていたのだろうと思われます。
柱の角に彫り込まれた段差は、エレベータ塔のコーナーと通じる造形で、ダムの細部にわたり、デザインがトータルでコーディネートされていた事を伺わせます。



ダム本体の右岸端に、堤体を俯瞰するように立派な慰霊碑が祀られていました。



慰霊碑の後ろを周ると視界が開け、大きな三浦湖が姿を表しました。

雲ひとつない快晴、穏やかな湖面。

Blue & Blue.
湖水は青空を映す鏡、いっそう青く輝き、水面を境に二つの青空が広がっています。

山々が低く感じますが、標高1300もある高地です。
天上の巨大湖といった三浦湖です。



複雑な形をした三浦ダムの貯水池。
ここから見える湖面はほんの一部でしかありません。



右岸から見る三浦ダム。
余水吐が極端に端に寄っています。



オールドダムに多い半円形状の取水設備。
しかし、相当に大きなもので迫力さえ感じるものです。



対岸には管理所、少し離れてボート庫、インクライン。



さらに視線を左にやると、建設プラントらしき遺構が湖面から覗いているのが見えました。



余水吐ゲートを上流から・・・。

ローラーゲートの戸当りとは別に、円弧状のレールが見えます。
実は、現在のローラーゲートは後に改修をしたゲートで、元々はラジアルゲート(テンターゲート)であったそうです(Hisaさん、情報ありがとうございます)。

関電といったら黒いラジアルゲートがイメージなので、なんとなく納得。
(大同時代や、日発時代のゲートがブラックだったかは謎ですが)

ゲート下流面側の戸当りが何なのかはHisaさんでもはっきりとは解らないとの事ですが、フラッシュボード説が有力です。



今日のトレイルランは、午前7時にスタートして、ダート林道を大勢のランナーが駆け巡ります。
コース総延長42km(!)、三浦ダムの天端はスタートから33km地点となっています。
ダート林道をフルマラソン。あり得ません・・・。

ちなみに、7月に開催されたシリーズ第6戦はここを舞台に制限時間24時間、コース総延長100kmの大会も開催されています。さらにあり得ません・・・。

現在、午前9時。
まだまだ先頭ランナーがやって来るには時間があります。

ひろ@さんと、三浦湖右岸を散策してみる事にしました。



ダムまで舗装だった林道も、貯水池から先は、わだち掘れ掘れダートです。
道なりにしばらく歩くと、林道は右岸の山を登り、余水吐のゲートを俯瞰できる場所に来ました。

木々に邪魔をされて、残念ながらダム本体は見えません。

しかし、視線を上げると・・・そこには御嶽山。



元々山岳系のひろ@さん曰く、これだけ御嶽が綺麗に見えるのは珍しいとの事。

日頃の激務で、この日は少々お疲れモードだったひろ@さんですが、綺麗な御嶽を観た途端にテンションが急上昇、むやみに山の斜面に登ってみたり、ちょっと面白い事になっていました(笑)。



ぶらぶらと林道を散策していたら、いきなり、びゅんびゅんとランナーが駆け下りて行きました。トップのランナーです。

は、速いっ!

予想より早い時間に、そしてスピードも速い!、体脂肪も少なそう!!。



我々も山を下りてダムに戻って来ました。
いつのまにか空には沢山の雲が浮かび、先程とは違った雄大な風景を造っていました。



やがて、ぱらぱらとランナー達が天端に現れはじめました。
どのランナーも背中には給水ギアを背負っています。林道を走る過酷なレースです

しかし、思ったよりもランナーが少ない・・・?
ランナーの募集には500名とあったのですが、実際参加したのは100名未満の様です。
そして、皆、ウエアが地味・・・。

色とりどりのウエアを流し撮りしてみようと企んでいたので、ちょっと計画が外れてしまいました。さようならダムに親しむ部門(笑)。



カメラを向けるとポーズを決めてくれるランナーも。

「がんばってー!」自然と応援してしまいます。

後続のランナーの中には天端で足を止めて風景を観たり、持参したコンデジで記念写真を撮ったり(僕が撮ってあげました)、和やかな雰囲気がありました。



ちょっと俯瞰位置からの三浦ダム。

ひろ@さんが三脚にカメラを固定して、こんな動画を撮っていました。
http://www.youtube.com/watch?v=6Scx1-d6NAk



天端でしばらく過ごした後、ダムの下も行ってみました。

開閉所の向こうに大きなコンクリートダム。
田子倉ダムにそっくりな光景です。



手前は長い管理通路。
雪が沢山降る所なので、この通路が無かったら発電所へ辿り着くだけで半日仕事になりそうです。

ダム下の広い敷地が、雄大なイメージをさらに強調します。



朝一はあんなに晴れ渡っていた空も、ダムを見上げておにぎりを食べる頃にはどんより曇ってきました。

重厚なコンクリート。目立つ縦継目を下から上に辿ると、高さの異なる高欄の切替部分に繋がっていました。

白いエレベータ塔。青いカビの模様が曇天の空に染みてアンニュイ。



最後尾のランナーが三浦ダムを通過した頃、僕らも三浦ダムを離れました。

近くても、観たくても、なかなか会う事が許されなかった三浦ダム。
再訪を誓って後にしました。



大同電力のフラッグシップ、三浦ダム。
★★★★★


おまけの後日談。

見学当日は最初から林道ゲートが開いていたので、脇の看板を良く見なかったのですが、三浦ダムから戻った後に見てみると、看板は真新しい物に建て替えられていて、内容も数年前に諦めた時と異なっている事に気が付きました。

な、なんと、
「車両や歩行者の通行禁止」から、「車両等の通行禁止」に変っているではありませんか!。
つまり、歩いてなら入れるようなったのか?。



気になったので、王滝村に問い合わせてみると、あっさり「徒歩ならOK」との回答。
おお!なんと!!。

実際、村のホームページからリンクしているレジャー施設では、ハイキングルートとして紹介されています。
「看板が変わって、徒歩なら入れるようになったのですか?」と尋ねると、看板の詳しい事は村では解らないとの事でしたので、直接、中部森林管理局にも尋ねてみました。

以下が森林管理局様からの回答です。

>風景写真の撮影や一般的なレジャーを目的に、徒歩で入林していただく場合は問題ありません。
>ただし、林道は事業実行中の車両が通行しますので、十分注意をしていただく必要があります。
>国有林への入林に当たっての留意事項は下記をご覧ください。
http://www.rinya.maff.go.jp/chubu/apply/nyurin/index.html
>安全で楽しい行楽となりますよう祈念いたします。
 
と、言う事で、以前は訪問が困難だった三浦ダムが、ずっと身近になり、高瀬渓谷の高瀬ダムと並び、ハイキングで訪問するには絶好の物件となりました。

途中で照明の一切ない真っ暗なトンネルがありますから、ライトをお忘れなく。
林業や工事関係など、意外と車も通っていますから、真っ暗な一車線のトンネル内で背後から迫るトラックの爆音は相当な恐怖です。
車からもトンネル内に人が居る事が見えるように、ライト、出来たら反射材の着用をお勧めします。

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