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新中地山ダム

堤高35m
G/P 1959年 北陸電力

2011年6月某日見学

有峰の異端児。


ダムマニア界のバンコラン少佐こと、雀の社会科見学帳の夜雀さんから、ある日メールが来ました。

「ついに新中地山を見せてもらう事になりました。
 滅多に無い機会なので、独りで見せてもらうのはもったいない。
     あつだむさんは家が近くなので、良ければ来ませんか?」

そうです、新中地山ダムと言えば、切り立った有峰の地形にその姿は外部からは見る事が出来ず、さらに、ダムへの唯一の道は立入禁止の為、今迄誰一人としてしっかりとその姿を観たことのない、まさに幻のダムなのです。
夜雀さんは、この新中地山を観るために、何年にも渡り交渉を進めていました。
美味しい所だけつまみ食いする様で恐縮しつつも、即答「行きます!」と返事をしました。

新中地山ダムは、全く外部から見えない事もあり、余り有名なダムではありません。北陸電力のキング、有峰ダムの下流約5キロ、有峰林道小見線沿いにあるのですが、林道がトンネルに入っている所にあるので、一般の人はそこにダムがある事すら気が付いていないでしょう。
しかし、新中地山ダムは、とても特殊なコンクリートダムだという噂は、ダム愛好家の中で都市伝説の様に語られていました。いまようやくその謎が解けようとしています。

6月某日、こうしてダム愛好家数名が集まり、北陸電力様のご案内で見学させて頂きました。

立入禁止の門が開けられ、まず見えて来たのは白く大きな建物です。
和田川第二発電所です。まだダム本体は見えていません。



発電所の裏を通ってダム本体へ向かいます。

レーザービームのように鋭く急斜面を貫く水圧鉄管。上流の有峰ダムから水が来ています。

有峰ダム周辺は、有峰と祐延ダムを頂点に、数多くの発電所が建設され、それらは沢山のダムや調整池で結ばれています。
カクテルグラスのタワーに注がれたシャンパンのように、頂上からスタートした水はいくつものグラス(発電所)を経由して下流へ送られ、やがて富山湾に注ぎます。

夜雀さんがwDN関西に於いて、
「ダム目的の利水の中で、発電だけは他とは違うと考えている。なぜなら、発電は他の利水目的と違い、水を消費するのではなく、利用しているだけだから」
と、語っておられました。
有峰をこよなく愛する夜雀さんらしい考察です、有峰の現地に行くとその事が良く解ります。



水圧鉄管を過ぎるといよいよ新中地山ダムの本体が現れます。

で、出たー!

そうです、語られて来た新中地山の伝説とは、
「下流面が完全に土砂に埋まっていて、コンクリートの堤体全くが見えない」
と、言う噂でした。

うわーーー!!
うおーーーーーー!!!

見えた事で驚くのではなく、見えない事に驚くという、かつてない感覚。

とにかく、凄く珍しいっ!
・・・と、思うのですが、その驚きをぶつける対象物が地中と言うもどかしさ。



ダム本体右岸から天端。

これが天端と言っていいものか・・・?
新中地山ダムは、堤高35m、堤頂長71.7m。
しかし、目の前にあるのは幅1m強のコンクリート舗装の道・・・?。

今まで、群馬の真壁ダムや、山梨の頭佐沢ダムなど、下流面が土で覆われているダムは見たことがありましたが、それらと埋まりっぷりの次元が違います。
完全に天端レベルまで埋められているので、下流側の高欄がありません(!)



コンクリートダムの下流面に盛られたという土砂は、天端の高さで広く、平坦に慣らされています。

その上を少し歩いてみたのですが、盛土の端は自然の山林に溶け込んでいました。



振返って、ダム本体方向です。

自分の立ち位置は通常のコンクリートダムであれば、ダム下流の地上35mの空中にあたる位置です。なんだかとても不思議。

かなりの量の土砂ですが、これらは全て発電所建設時の採掘土砂なのだそうです。
そして、ここに土砂を盛る事は当初からダム本体の設計要素に盛り込まれていて、その為、新中地山ダムの堤体は重力式コンクリートダムとしてはとてもスリムで堤体積も少ないのだそうです。

つまり、コンクリートダムと、アースダムのハイブリット?
そんなダム型式はありませんが、他に事例が無いので分類されていないのかも。

野生動物なら、オカピとか、コビトカバとか、珍獣と呼ばれるキャラクターです。



何が何でも下流面を撮ってやる!

と、言う執念のショット(笑)

見えているコンクリートの下流面は天端から下へ10センチ程・・・。
下流側に高欄が無いので、背後の高欄は上流面の物です。




左岸には取水口、次のカクテルグラス(新中地山発電所)へ水のバトンが渡されます。

堤体の左端には2門の余水吐ゲート。
3門ある様に見えますが、手前の少し小さいゲートは湖面に漂流する雪の塊を流す流雪ゲートと呼ばれる雪国スペシャル装備です。



余水吐を下流から。
写真左の四角い穴が流雪ゲートの吐口。

2門の余水吐はゲート上部に壁のある独特の形状です。
湖面が流雪で覆われたり、凍ってしまっても水が出せるように水面から少し下から放流する様になっているのかも。(?)
有峰ダムに近い、折立ダム(堰堤)でも同じゲートを観た事があります。

2門のゲートの間に壁があるのも特徴的。



ゲート間の壁は直ぐに途切れて、その先はスロープとなっています。
雪が非常に多い場所ですがトンネル吐ではなくオープン。

妙に色っぽい形、壁面の表情もいい感じ。



さらに、この新中地山ダムにはもう1箇所、余水吐があります。
貯水池左岸に見える越流式のスリットとゲートがそれで、こちらはトンネル式なのですが現在は運用されていないそうです。



上の写真のゲートの上に来させて頂きました。
和田川第二発電所、でかいです。
屋上に開閉所等の設備があり、大きいだけでなく、ぎゅっと凝縮しています。

上からの発電所の水がダム湖に直接流れ込んでいる情景は、この周辺のダム特有です。



発電所の高欄。
僕はこんな感じのコンクリートが好き。



高欄から下を観ると、水車を回した水が轟音を立てて貯水池に流れ込んでいました。

凄い勢い。

そして、水の透明度も凄い。

やっぱり何度来ても、有峰っていいよなあ・・・。



本当に下流面が埋まっていた幻のダム、新中地山ダム。

その予想を超える見事な埋まりっぷりと、随所に見られる特徴的な設備に関心ずくめのダム見学となりました。



新中地山ダム
★★★★


おまけ。

珍獣 コビトカバ
西洋世界にその存在が知られてまだ100年くらいしか経っていないとか。
日本では、上野と東山と白浜アドベンチャーしか居ません。
今年、いしかわ動物園が飼育を始めるらしいので凄く楽しみです。


| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム富山県 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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