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正善寺ダム
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2011.10.28 Friday 12:21
堤高47m
G/FNW 1984年 新潟県営
2011.6.11見学
正善寺の涅槃仏。
北陸道を新潟から富山方面へ向けて走ると、唐突に姿を見せるコンクリートダムがあります。
上越ジャンクションから富山方面に約2キロ、連続するトンネルの、ほんの僅かな隙間に見えるのが正善寺ダムです。高速からダム本体まで直線距離で300m弱と近い事もあり、初めて観た時はとてもインパクトがあった事を覚えています。
一度、ゆっくり観てみたいと思っていましたが、写真で見る正善寺ダムは、よくある普通の自治体ダムといった風貌で、特別な期待はしていなかったのですが、まさか、あんな事になっているとは・・・。
その時は夢にも思っていなかったのでした。
上越インターを降りておよそ12キロ、雨のダムサイトに到着。
右岸に管理所があり、駐車場からファーストコンタクト。
な!!
なんだこのダム!!
車を降りて第一印象から目が点になってしまいました。
お分かりでしょうか?
そうです、このダム、やたらと下流面の勾配が緩いのです。
今まで観て来たコンクリートダムとは、明らかに傾斜の角度が違います。
異様に緩い下流面は、とてもリラックスしてると言うか、油断してるって言うか・・・。
例えるなら、ダムが横になってぐーぐー寝てるみたいに見えるのです。
それも、涅槃仏を思わせる穏やかな眠り・・・。
堤体の傾斜としては、コンクリートダムよりもフィルダムのイメージなのです。
第一印象でいきなり驚かされましたが、この後、さらに驚愕する事になります。
それは、管理所付近に掲示してあった堤体の図面でした・・・。
!!!!!!!!!!
こ、このダム、なんかとっても変ーーーーーー!
例の緩やかな下流面。
たしかに1:1.0(つまり45°)という異様に緩い勾配という事が解りましたが、そんな事は、このダムのほんのディテールに過ぎないのでした。
勾配だけじゃなくて、断面もまんまフィルダムみたいなのです!
こんなの他で観たことも聞いた事もありません!!
不思議すぎるにも程があるっ!
しかし、一体なぜこんな変わったダムに??
特別な工法のテストケース?
案外、知らないだけで新潟では流行ってる??
完成した後に、川の上下流を間違えて造った事に気が付いてやり直した???
(冗談デス)
あほな妄想を膨らませつつ、抜けた腰をはめ戻して、ふらつきながら天端に向かいます。
車止めの柵がありますが、徒歩で歩くには問題ありません。
異様に緩い下流面ですが、天端から観ると、横から観たときほど不思議な感じはありません。
ダムの規模からすると、やや小振りな減勢工が見えます。
下流の河川は直下で右に急カーブ。
視線の先に北陸道が見えます。
行き交う車の音もよく聞こえる距離です。
高速道からこの正善寺ダムか見えるのは、ほんの数秒だけです。
天端を渡って左岸に来ました。
この水位だと、正面(上流面)の勾配は見えませんが、水中には下流と同じ勾配1:1.0の堤体が沈んでいるのです。
うーん、謎だ。
上流面にも勾配があると言う事は、単純に堤体積も大きくなる訳で、ほぼ同じ大きさの大野川ダム(新潟県 1979年竣工)と比較してみると・・・。
正善寺ダム 堤高47m / 堤頂長 187.3m 堤体積 20.3万㎥
大野川ダム 堤高47m / 堤頂長 183m 堤体積 11.4万㎥
おお、やっぱり想像どうりのヘビー級。通常のダムよりも2倍近い体積です!。
中空重力式やバットレスが、羨ましくて化けて出るほどの贅沢堤体。
比較しても意味ありませんが、中空重力式の木地山ダムと比べると・・・。
木地山ダム 堤高46m / 堤頂長 168.2m 堤体積 6.4万㎥(!)
堤体の形状だけでなく、取水設備も珍しいタイプになっています。
上流面に勾配があるので、スタンダードな取水設備は設置できなかったのでしょう。
フロート式の表面取水で、このワイヤーの先に取水口があり水位に合わせ上下する仕組みです。(上の断面図にも略図が記されています)
フロート式と言うのだから、浮きの様な物でぷっかり浮かんでいるかと思っていたのですが、実際には水中に没していて、ワイヤーの先には特に何も見えませんでした。
何故この正善寺ダムが上下に勾配を持つに至ったか?
多分、ダムサイトの地盤があまり良くなくて、ロックフィル向き(?)の地盤だけど、コア材(もしくはロック材)の採取に問題があって、コンクリートダムのまま、敷幅が異様に幅広の設計になった・・・って、感じかなあと思う。
そんな事を、いつものダム友に話していたら、その話が何故かあの中村靖治先生の耳にまで入り、なんとダム友を通じて解答まで返って来ました!!。(中村先生、恐縮です・・・汗)
中村先生はこの正善寺ダムの事も良くご存じで、上流にも勾配を持つ不思議な形状は、地盤が好ましくないので、フィレット(!)を付けているだけで、設計としてまったく不思議な事は無いそうです。
なんと、あの斜面は左右の岸を結び、地盤から天端まで伸びた変形フィレットだったのでした。
いやはやなんと、ダムってのはちゃんと近くまで行ってみないと、何が隠されているか解らないですね。まさにダムめぐりの醍醐味って感じでしょうか?
中村靖治先生、この度はどうもありがとうございました。
正善寺ダム
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