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野反ダム

堤高44m
R/P 1956年 東京電力

2011.5.21見学

天空の楽園。


群馬の未踏物件を巡る今回の旅。
鹿沢ダムの次に向かったのは、東電の発電用ロックフィルの野反ダムです。

2年前に来た時は、8キロ手前の白砂ダムまで来ていました。
その時は、中之条ダムを観て、最後に四万川ダムまで行きたかったので時間の都合で野反ダムは未踏となっていました。

白砂川の支流にそって国道405を登って行きます。
2年前と同じように、プイと向こうを向いて顔を見せてくれない白砂ダムです。
そんな恥ずかしがり屋の白砂ダムを後に、ぐんぐん峠道を登ります。



いつしか、道と併走していたはずの川が消え去っていました。
白砂川は利根川水系なので、水はやがて太平洋へ注ぎます。
これから向かう野反ダムは分水嶺を越え、群馬県のダムでありながら日本海側の信濃川水系のダムなのです。

道幅は広くありませんが舗装はしっかりとしていて快適な道です。
やがて森の表情が変わり、熊笹が茂り低木が目立ってきました、それは森林限界を越えた事を示しています。

短い直線の坂道を越えると、急に、ぱあーっと、視界が開けました。

わーっ!

そこに広がっていたのは、今まで見たことのない美しい高原の湖でした。
野反湖です。

快晴の大空。
標高1500m、天空の湖はまさに空に手が届きそう。
ダムの天端標高1517mは、南相木ダムが出来るまで長い間日本一でした。

長い冬から目覚めたばかりか、周辺には残雪も見えます。

今まで観て来た数百のダム湖の中で、最も美しい湖だと断言します。
ダムへの興味に関係なく、とにかく誰もが一度は訪れてほしい風景です。



ありのままの湖畔のライン。
何処までも穏やかに広がる表情は、これが人造湖だとは信じ難い本当に美しい情景です。

そんな野反湖の湖畔を目で追って、遠くを眺めると・・・。



静かな湖面の一番向こうに見えました。
小渕ダム、石淵ダムに続き、日本で3番目に古いロックフィル、野反ダムです。



湖畔の道路を滑らすようにゆっくり車を進めます。

高山植物のグリーンに、目覚めたばかりでようやく新芽が出た白樺が映えます。

そして向こうには爽やかな青空が・・・・。



・・・・青空が・・・広がっているように見えるでしょ?

実は上の写真は空を見上げて撮った写真ではなく、湖畔から湖面を見下ろした写真でした。青く見えたのは空ではなく湖面。
ちょっと騙し絵みたいな写真だけど、野反湖の美しさを感じてもらえたでしょうか?。



対岸に点々と残る雪が、湖面にオーロラのように映えていました。
グリーンの中を細く横切っているのは遊歩道でしょうか?



すっかり心が洗われ真っ白になって到着したのは、ダムサイト右岸に程近い山小屋でした。自動車はここまで。

広い駐車場には登山者の車が沢山並んでいます。
野反湖の東にある2139mの白砂山の登山口となっています



山小屋の脇からダムに接近遭遇を試みます。
残雪の斜面をスニーカーで滑りながら降りて行くと真近に姿を現しはじめました。

(この日、都心では今年初めての真夏日。松本でも30°以上を記録していました)



一直線に広がるコンクリートの斜面。

堤高44m、堤頂長152.5m。
野反ダムは、コンクリート表面遮水壁型ロックフィルという貴重な型式を持っていて、1953年着手、1956年に完成しています。

このタイプはごく初期のロックフィルダムに数例採用されたのみで、10年もしないうちにゾーン型ロックフィルが現れ、直ぐに姿を消す事になります。

つい最近では、突如、苫田ダムの副ダムである苫田鞍部ダムに採用されたりしていますが、苫田鞍部ダムは、平常時では堤体のほとんどが露出した状態で、大雨で苫田ダムの水位が相当に上がら無ければ水に浸かる事が無く、非常時のみ活躍する堤防に近い働きをするものなので、少々事情が異なるような気がします。

また、このタイプのダムは、ロックフィルに分類されていますが、実際はアスファルトフェイシング(FA)に近いものと言えるでしょう。



ダムの周辺は、とても自由でのどかな雰囲気が溢れています。

野反湖は日釣券を買えば誰でも釣りを楽しめます。
ニジマスやイワナが狙えるそうで、孤高のフライマンから、日向ぼっこのファミリーまで、いろんなタイプの釣り客が居ます。

なんて観ているうちに近くの釣り人がニジマスをゲット。
(今までいろんな湖で釣り人を見たけど、実際に目の前で釣れたのは珍しい)



とてもシンプルな表情の堤体には、右岸端に余水吐が付いています。
バスタブ形の横越流でもなく、堤体に唐突に切り欠いてある独特の余水吐です。

特に規制する物も無く、もう少し近寄ってみる事にしました。



足元に注意して歩み寄ると、こんな近くまで来てしまいました。

荒くざらついた肌。
しかし、竣工年の割にコンクリートが白く見えます。
真南に向いているのでよく乾いてカビや苔が生さないのかと思います。



残雪を登って余水吐に上がってみました。
流石にここから先は立入禁止です。

余水吐の上に橋が架かっていて、丸いトンネルの先からスロープになっています。



山小屋まで戻ってダムサイトの管理道路を歩くと天端に行く事が出来ます。

洪水吐を逆方面から。
ミズバショウを思わせる柔らかなラインです(何故か仙人谷ダムにも見える・・)



右岸からの野反ダム。

荒々しいブラックロックと、中程に犬走りを持つ姿は岩手の岩洞ダムを思い出しましたが、確実に異なるのは今まで見た事の無いような急な傾斜角度でした。



崖のような急斜面。

同じ表面遮水のアスファルトフェイシングの多々良木ダムもとても斜面が急でした。この急斜面は、表面遮水型の特徴であるのかもしれません。

また、古い世代のロックフィルでは御母衣ダムなども傾斜が急です。
投石工法という点で野反と御母衣は共通点があり、そういった工法によるものかも。



模造木の手摺の下流側に比べ、異常にプリミティブな上流面の手摺。
冬季は除雪した雪を捨てれるように、ひっこ抜ける様にしてあるのかと想像・・。

それに、改めて見ると上流面もとても急角度です。

鉄筋コンクリート遮水壁の野反ダム。
上流面の様子は、バットレスダムそのものである事に気付きました。

1937年の三滝ダムを最後に日本のバットレスダムは終焉を迎えますが、20年の時を経て鉄筋コンクリート遮水壁を持つダムは、ロックフィルとして復活を遂げたと言う事でしょうか?。

遮水壁を入り組んだ梁と柱で支えるバットレスダム。
遮水壁をロック材で支える表面遮水ロックフィル。

異なるのは遮水壁をどう支えるかの違いだけです。
実は、案外近い親戚だったのかも。

(はい、いつもの妄想です)



それにしても心地よい野反湖の情景。

湖面には網端も何も有りません。



ずっと向う、はるか数キロ先まで視界を遮るものはありません。

250mm望遠で見えたのは、最初に野反湖を目にしたパーキングです。
(上から2番目の写真の撮影ポイント)



すっかり美しい景観にここが発電用ダムであった事を忘れていました。
我に返って発電用の施設を探しますが、発電所も取水設備も、それらしい物は見当たりません。

それもそのはずで、野反ダムには直接付随する発電所は持っておらず、下流数キロにある東京電力渋沢ダムの水源地が役割なのだそうです。
また、渋沢ダムへの送水も導水路ではなく、下流の天然河川に放流する事で水を送っているとの事です。

天端から真下を見ると堤体の下に放流設備があるみたいで、コンクリートで河床が保護されていました。運が良いと渋沢ダムへの放流が観られるはずですが、本日は出ていません。



ダムの下流は何処までも森が続いています。
下流500m辺りに長野との県境があり、あの辺りはもう長野県だと思います。



森林限界を超え、空に手が届きそうな天空の楽園。
そこには、日本のダム史を語る貴重なダムがありました。

四季を通じて、きっと美しい姿を魅せてくれると思います。
是非一度は訪問される事をお勧めしたい野反ダムでした。



野反ダム
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