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柿原水源地第二貯水池堰堤

堤高15m
G/W(廃止) 1951年 宇和島市水道局

2011.4.30見学

ラディカル・バットレス。


バットレスダム。
それは、オールドダムファンにとって、宝石のごとく光り輝く憧れのダム型式。
立ち並ぶ扶壁と梁、遮水壁が造る独自の造形が一番の魅力ですが、現存数6基と圧倒的に数が少ない事や、険しい山道を歩く事となる富山の2基をはじめ、どのダムも簡単には訪れる事ができない地にある事が、ロマンに満ちた魅力の根源となっています。

柿原水源地第二貯水池堰堤を初めて知ったのは、たまたま見ていた1冊の本でした。
INAX出版 「とっておきの風景 水辺の土木」



全国の希少な橋や堰堤などの土木遺産を、伊東孝教授の解説と、西山芳一先生の美しい写真で綴った1冊。
本章とは別の対談形式の記事の中に、500円玉ほどの小さなモノクロ写真といっしょに「バットレスダム」として紹介されているダムがありました。
それが今回訪れる事になった柿原水源地第二貯水池堰堤です。

記事の中では詳細には触れず、愛媛県宇和島市にあるとだけ記されていました。

愛媛県・・・。
やっぱりバットレスダムへの道程は遠く険しい。
だが、ひょっとして幻の国内7基目バットレスダムではないのか?。

と、言う訳で現地に飛んで確認して来ました。

場所は須賀川ダムの「脱ぎ捨てたパンスト形」貯水池の、片足のインレットを少しだけ遡った場所です。



手前にあるのが柿原水源地取水堰(洗い堰)
大正時代に造られた宇和島市の上水道、この洗い堰はその時に築かれた取水堰だと思います。

その上流にもうひとつ、人工の構造物が見えます・・・。



無骨な壁が両岸に茂る木々の向こうから睨みを効かせています。
これが、柿原水源地第二貯水池堰堤なのかっ!。



どきどきしながら右岸の道を歩きます。

横から観る取水堰。
堤高は目測で5mにも満たない小さな堰です。丸く整った野面石がきっちりと積まれていました。
堰全体はゆるいアーチ状になっていて、苔生した両岸の表情も趣があります。

大正時代の古いものなので、ひょっとしたら内部まですべて石積の石工ダムかも・・・と、思いますが真相は不明です。



取水堰を横目に林の中を歩きます。
元々は自動車も通れる道だったと思うのですが、長年積もった落ち葉と腐葉土でふかふかした道です。

数十メートルも歩くと視界の先に分厚いコンクリートの扶壁(バットレス)が見えました。



落ち葉の道からコースアウト、茂った枝をくぐると幻のバットレスはもう目の前。



見上げるとそこには、今まで見たことの無い異様なダムがそびえ立っていました。
垂直に切り立ったコンクリートの壁、それを極太の扶壁が支えています。

どうも、この扶壁で壁を支える構造が、水辺の土木の中でバットレスダムと紹介された所以で、丸沼ダムや、笹流、真立のようなバットレスとは異なる物でした。
言うなれば「バットレスもどきダム」、型式としては重力式コンクリートが正しいようです。

でも、そんな事はどうだっていいと思えるこの色香!!。
7つの無骨なバットレス、その表面はざらざらと乾燥し深いしわ模様が刻まれています。



その、乾いた象の足のようなバットレスの間に入ってみました。

目の前は遮水壁。
意外な事に、壁の表面は一面水苔で覆われていました。

実はこの堰堤はトップオーバー型の全面越流タイプで、結構な頻度で堰堤上を水が越えて行く様です。



そのまま振返って、苔に覆われた遮水壁を背に下流側を観ます。
バットレスに負けない凄い存在感の凸凹した叩きが広がっています。



大小さまざまなブロックを積み重ねた不思議な光景。
木曽川の大井ダム下流左岸のブロックをスケールダウンした感じでしょうか?
それでも一段一段は50cmくらいの段差があります。



何段も飛び降りるように下まで降りてみました。

叩きの下は堰堤と同じ川幅で、数十メートル下の洗い堰に繋がっています。
左手に湧き上がっているのは貯水池から取水設備を通って来ている水です。

ボコボコと湧き上がる水と一緒に水の粒子が舞い上がり、辺りは新鮮な水の香りでいっぱいです。



段差を降りて見上げます。

岩盤を削ったような荒いコンクリート。
不規則ながら一定の方向に向いた無数の段差、立ちはだかる扶壁、壁。
水の香りに包まれて、まるで海底遺跡に迷い込んだ錯覚を覚えます。

これば凄い堰堤だ!。

コンクリート表面に凍害防止剤を塗布され、滑らかで女性的な肌の丸沼ダムや富山のバットレスダムとはまるで違う、男性的な剥き出しの肌。

なりふり構わず打たれたブロックはコンクリートアーマー。

戦闘的な扶壁式堰堤〜ラディカル・バットレス。



興奮ぎみにしばらく周囲をぐるぐる徘徊。
その後、ブロックに腰掛け幾度となく堰堤を見上げます。

堰堤の正面形状は川幅いっぱいに広がったスクエアな形状。堤高は15mと河川法でダムを名乗れる高さがあります。
凸凹した叩きの下の水面にもコンクリートの面が沈んでいて、15mの下半分は基礎地盤から叩きの厚みかもしれません。(扶壁付きの壁自体の高さは6~7m?)
そう思うと、よりいっそう不思議な堰堤に思えて来ました。(断面形状ってどんなんだろう)

下から見上げる堰堤。
左岸寄りに丸い高欄がチラっと見えています。

一息ついて落ち着いたので、貯水池側に移動します。



落ち葉ロードをザクザク登って堰堤の右岸に来ました。
天端は壁の頂点にすぎず、人は歩く事が出来ません。



ほぼ垂直の下流面に比べ、上流側は少しだけ角度が付いていました。
岐阜の大洞防災ダムや、尾道の門田貯水池堰堤に近い形状です。

形状からすると砂防堰堤に近いのですが、水道水源地として造られました。
また、すぐ上流に既に既存のダムがあり、砂防堰堤としての役割は最初から無かったと思われます。

ますます謎が深まる柿原水源地第二貯水池堰堤。



向こう岸に見えるクラシックな取水塔。
1951年完成なので、完成当時から少しレトロなタイプだったかもしれません。

上流面が鉛直であれば堤体に張り付いた半円形の取水設備になると思いますが、上流面に勾配がある為、独立した塔になったと推測。

こちらから観ると貯水池の中に孤立している様に見えますが、向こう側に橋が架かっています。



愛媛県、宇和島市の山間に不思議なダムがあります。
柿原水源地第二貯水池堰堤。
長い名前が示す通り、この上流に第一貯水池堰堤もあります。

1951年に完成したこのダムは、その後1975年にすぐ下に須賀川ダムが完成した為、現在は一線を退いています。



柿原水源地第二貯水池堰堤
★★★★

※堤高や竣工年等の情報は、夜雀さんの雀の社会科見学帳を参考にさせて頂きました。ありがとうございました。


おまけ

堰堤の付近は古い浄水場跡が公園になっています。
水路には新鮮な水。

中を覗くとカワヨシノボリが居ました。
僕の家は長良川の源流に近い所で、家の前はアマゴやイワナも釣れる渓流ですが、チチコ(地元ではチチコと言う)はすっかり姿が無くなりました。

何気ない水路にこんな魚が居るなんて、とても水が良い証拠です。

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