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河内ダム

堤高44.1m
G/I 1927年 新日本製鐵(株)

2010.10.10見学

石積のロマン。


北九州都市高速大谷ICから5キロ、河内ダムは曲渕ダムと並び福岡を代表する名堤です
河内ダムは、官営の八幡製鉄所によって造られました、現在は新日本製鐵(株)が管理する民間企業所有のダムです。

山間の坂道を登ると石積ダムの左岸に到着します。
周囲は公園化され、古いダムには珍しく観光用の駐車場も整備されています。



第一次大戦後、急増した鉄鋼需要を受け、官営八幡製鉄所の増産の為に1927年に完成しました。製鉄は冷却や洗浄など、多量の水を必要とします。
製鉄は、富国強兵を目指す国力の基幹産業であり、建設には国から潤沢な資金が出されました。

左岸からの下流面です。
切り立った勾配が凛とした佇まいを魅せています。



付近にあった堤体断面図、とても勾配が急です。
この河内ダムに限った事ではありませんが、石積ダムの特徴がよく解ります。

石積ダムは、ダム形式では重力式コンクリートダムですが、マニア目線で鑑賞する場合、現代のコンクリートダムとは全く違ったジャンルだと言えます。



河内ダムの天端は開放されています。
天然石の石畳の路面に、錆色に仕上げたアイアンが風情があります。



そして、何より圧巻なのは石材で緻密に細工が施された高欄の装飾です。
小さな割石がびっしりと埋め込まれているのです。
古い石積ダムは今迄いくつも見て来ましたが、どのダムとも違う繊細で手の込んだ装飾です。

この様な緻密な装飾が、189mの堤頂長の端まで続いています。
思わずため息の出る美しさ。



ダム中心にある取水設備の装飾です。
切石、割石、野面石・・・さまざまな表情の石を巧みに使った装飾は、高欄だけに留まらず、取水設備などクレストの全ての面を被い尽くしています。



これら石貼りの装飾は、単に見た目の美しさだけでなく、コンクリートよりも天然石の方が劣化に強く、恒久的に美しさを維持できるとの考えがあった様です。

美観だけでなく、機能を持った美しさ、それはダムの真骨頂とも言える考え方かもしれません。
時代を越え、訴えかけてくるものを感じます。



高欄の内側に連なるアイアンの装飾は、増設された感じを受けました。
転落防止の安全面から、後になって追加された様に見受けられます。



天端から下を見ると、同じようにびっしりと装飾が施された建物が見えました。
河内ダムの石の装飾は徹底していて、ダム関連の全ての建物に施されています。



写真は左岸の斜面にある建物。
現在は使われていない様ですが、以前は管理所だったと思われます。
こちらは野面石が貼り込まれた野趣溢れる重厚な印象。



天端からの静かな貯水池。
総貯水容量700万㎥は、当時東洋一のダムと呼ばれていました。
湖畔には竣工を記念して桜の木が植えられ、春には見事な花を咲かせるそうです。



貯水池周辺には、それぞれ特徴を持った美しい橋が幾つも架けられていて、その中でも南河内橋は、国内唯一のレンティキュラートラス橋として国の重要文化財の指定を受けています。

橋の近くでは、バーベキューを楽しむ地元の方々の姿があり、河内ダムの湖畔は市民の憩いの場となっているようです。



天端を渡った先、右岸の斜面にある石碑です。
周囲の石垣の積み方にも拘りを感じます。

KAWACHI RESERVOIR.
DESIGNED AND BUILT BY
H.NUMATA.  M.AM.SOC.CE.

このダムの設計者であり建設を指揮した、沼田尚徳氏の名前が刻まれています。
製鉄所の土木部長であった沼田氏は、「土木は悠久の記念碑」という思想の下、この河内ダムを建設します。

そう、河内ダムは美学によって築かれた一つの作品とも言える名堤なのです。
竣工から80年を超え、沼田氏の思想は河内ダムで生き続けており、それは今後100年経っても変わらないと感じました。



この記念碑を見て感じたのですが、記念碑に設計者の名前が刻まれているのは珍しいと思います。
また、英文で刻まれている事から、最初、河内ダムの設計は雇われて来た外国人技術者かと頭に浮んだのですが、読んでみると沼田氏をはじめ、全て日本人だったので、この英文の記念碑には意外な感じを受けました。

これは、沼田氏からの「世界に誇れる素晴しいダムである」というメッセージだと、僕は解釈しました。

また、悠久の記念碑という思想の元、将来、普通に英語が使われる時代が来るのだと、沼田氏が予言をしたかの様にも受け取れ、まさにそれは的中していると言えます。



天端は湖畔からのサイクリングコースにもなっていて、レジャーを楽しむ人々の姿がありました。
ダムの存在を知らずにドライブに来た人々も、吸い寄せられるように車を止め、天端を訪れています。



堤体の左岸から、ダムの真下に向かう歩道があります。
落葉を踏みながら下る事数分、ダム下にかかる橋の上に出ます。

ここのコンクリート造りの薄い橋も、ダム建設と同時に架けられた貴重な橋なのだそうです。



堤高44.1m。
見上げる河内ダムは、石積ダムとして最大規模の立派なダムです。

着工時は国内最高峰のダムとなる計画でしたが、アメリカの技術を導入し工事の機械化を勧め、一歩先に53mを築堤した大井ダムにそのタイトルを譲る事となります。
一方、河内ダムは昔ながらの人力作業を中心に、延べ90万人という大工事でしたが一人の殉職者を出さなかったそうです。
官営工事として潤沢な予算が出され、安全管理が整っていたとも思われますが、
製鉄所の土木部長の指揮のもと、家族的な現場環境だった事が、沼田氏の奥さんが手造りの差し入れを度々持参していた等のエピソードから伺えます。



河内ダムと周辺のダム施設は、土木学会認定の「選奨土木遺産」の認定を受けていて、美しい装飾だけでなく、周辺は見所にあふれています。

ロマンと言う言葉は、気恥ずかしくてなかなか使える時がありませんが、この河内ダムほどロマンと言う言葉が似合うダムはありません。
できれば時間に余裕を持って、ゆっくり散策される事をお勧めしたい河内ダムでした。



河内ダム
★★★★★

| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム福岡県 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
2011/02/01 2:30 AM posted by: りえま
たまりません河内ダム♪
石積展示場ですかっ。
是非時間たっぷり取って見学したいです。



2011/02/01 12:47 PM posted by: あつだむ宣言!
こんちは。

陽気の良い日に、お弁当持参でのんびりしたいダムです。
周辺の橋とかも観たら、丸々一日居てもokですよ。
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