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曲渕ダム

堤高45m
G/W 1923年 福岡市営

2010.10.10見学


曲渕ダムは福岡市営の水道用ダムです。
国道から脇道に入ると立木の隙間から石積ダムの姿が見えました。

竣工は古く1923年。当時は堤高31.2m、堤頂長142m、総貯水容量142万㎥。
設計施工は、長崎、佐世保の近代水道を設計した吉村長策氏です(九州の水道ダムでは、すっかりおなじみですね)。



その後、人口増加による水不足を受けて、1931年から1934年にかけて拡張工事を行い、堤体を6m嵩上げ、堤高は37.27mとなります。
また1978年からは堆積した土砂の浚渫、さらに平成に入り1993年には再び堤体改良工事を実施して、現在の堤高45m、堤頂長160.6m、総貯水容量260万㎥となりました。

堤高45mは、現存する国内の石積ダムでは最も高い堤体となります。

堤体の石積を観察すると、中腹のやや上辺りで草が生えている部分があります。
多分、この辺りから下が大正時代の竣工当初の石積だと思われます。



脇道を登って堤体の右岸に来ました。
満水の静かな貯水池。



対岸を見ると・・・。
これは越流式の余水吐ですね。



道路脇のダム管理所(福岡市水道局曲渕水源事務所)。
ダム本体はこの管理所の敷地の奥にある為、公道から天端の様子を伺う事は出来ません。

また、管理所の敷地内は関係者以外立入禁止となっています。
今回は許可を頂き、敷地内から見学させて頂きました。

(福岡市教育委員会の市の文化遺産を紹介するHPでは、ダムの天端は開放と紹介されています。いずれにしても、天端を見学される時は管理所を訪問して、許可を頂く事をお勧めします)



管理所の奥に進むと、曲渕ダムの天端が真っ直ぐ伸びていました。

うわーっ。

目の前の天端に思わず声を上げていました。
何故なら、これほど美しい天端は今迄見た事が無いと一目で直感したのです。

対岸までストレートに伸びた天端には、美観を損なうような障害物は見えません。
岸際は広くなっていて、シンメトリーに置かれたダム名を記す重厚な親柱。
嫌味なく、さりげなく立てられた外灯。

こんな空間が自宅にあったらいいだろうな。
テーブルを置いてお茶でもしたら美味しいだろうな。
ランチとかしても最高だね。
もし、大金持ちになったら、この天端を真似て別荘を建てよう。

妄想癖がある僕ですが、そんな事を思うダムはこの曲渕が始めてです。



重厚で格調高い高欄は総花崗岩(御影石)造り、上部の手に触れる場所はピカピカに磨かれています。シンプルなスリット状の装飾にも品があります。
また、色の違うベージュの路面は、この色の天然石が敷かれています。凄い。(レンガやタイルでは無い!)

デザインの基調はダムが竣工した1920年代に先端であった、アールデコの幾何学的な特徴を感じます。
この天端が竣工時のオリジナルのデザインを忠実に再現したものかは解りませんが、90年前の石積ダムの天端を、平成の時代に再現したものである事は確かで、この天端を歩くと、まるで大正時代にタイムトリップしたかのような錯覚さえ覚えます。

歴史を感じる古びた天端ではなく、真新しいものである事が実に新鮮なのです!。



ダム中心部の取水設備。
現代的な取水設備は、平成の改修工事で刷新されたものでしょう。

従来の取水設備よりも建物は大きくなったと思うのですが、天端の歩道幅に合わせてスッキリと収められていて、美しい天端への配慮を感じます(建物が歩道にはみ出していては台無しになっていたと思う)



他のどの石積ダムにも無いのが、この現代的な取水設備だと言えます。

下流から見た取水設備。
テラス状に少しだけせり出した天端、直線的で品の良い高欄など、平成のリデザインはよく吟味されていて、クラシックな石積ダムのクレストに、現代の建物を全く違和感なく収めています。



左岸まで進むと余水吐の越流部が見えてきました。

この部分も平成の改修で手が加えられていると思うのですが、ちゃんと石積の仕上げとなっています。



左岸のダム碑。
これは1931年からの嵩上げ工事の時の物の様です。

周囲は一面青々とした苔に覆われ、雨と土の匂いがしました。
ここは水源地の森です。



森の中から見たダム左岸。

すごくいい感じじゃないですか?
ダムじゃないみたいでしょ?
でもダムなんですよ。

余水吐の水は、この真下をトンネルで抜けた後、ダムの下まで導流路を流れます。



シンメトリーって、美しい形の基本ですよね。
右岸・左岸、そして上流側・下流側でそれぞれ対称にデザインされた天端。

完璧です。



先程からぱらついていた雨が次第に上がってきました。

厚い雲の隙間から、右岸の山に朝日が当たり、湖面に映えています。
この後、虹も観る事が出来ました(朝の虹は不思議な感じでした)



静かな貯水池。
対岸には道も無く、水源地の森が広がっています。

貯水池の水も透き通っています。



天端から下流。
ダムの下は公園となっています。

通常でも下から見上げる事が出来るようなのですが、素晴しい天端を散策して舞い上がってしまい、下から見るのをすっかり忘れていました。



管理所辺りから眺める曲渕ダム。

クレストの白っぽい花崗岩が森の中に映えています。
堤体の表面は雨の汚れで黒ずんでいますが、全て花崗岩で出来ている様に見えました。



さらによく見ると、積まれている切石の形状は一種類ではなく、通常よく目にする長方形の間知石のほかに、正方形の石も使われています。
クレスト付近は全て正方形の石ですが、それ以外は長方形の中に正方形が混在する凝った積み方となっています。

2度の嵩上げにより、竣工当時の姿を想像する事は難しいのですが、曲渕ダムは竣工当初からかなり美観を意識したデザイン性の高いダムであった事がこの石積から伺えます。



重厚な国内最大級の石積ダムに、大正の香りを感じる新築の美しい天端。
現代の基準でリニューアルされた新しいダム設備。

名堤を発見した、驚きと興奮の曲渕ダム見学でした。



曲渕ダム
★★★★★


ちなみに、曲渕ダムは、あつだむ宣言!が選ぶ2010 MVD を受賞したダム。
思えば2009年のMVDも、同じく重量式コンクリート、非越流形、水道ダムの小河内ダムだったので、個人的にこのジャンルのダムが一番好みって事なのかも。

| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム福岡県 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
2011/01/27 9:47 PM posted by: 安部塁
こんばんは、曲渕ダム拝見しました。
本当に味わいのある石積です。
少しずつ手を加えながら大切に使われてきた痕跡が伺われます。

私が訪問した時にも右岸に『立入禁止』の張紙がペタペタ貼ってありました。

清掃作業中の方に確認したところ、
「ダムの堤頂は公園の一部なので、ご自由にどうぞ。
ただし、事務所の建物は『立入禁止』ですよ。」
ということでした。

福岡市教育委員会のHPは正しいと思います。
多分あの張紙は管理所のことを指しているのではないでしょうか。
2011/01/28 12:42 PM posted by: あつだむ宣言!
安部塁さん、こんにちは。

情報ありがとうございます。
管理所の門の所に立入禁止と貼られているので迷ってしまいますよね。
水道水源と知って訪問しているので、まさか天端に入れるとは最初から思っていなかった事もありますし。

仰る通り、とても味わいがあって、大切に使われて来た事を感じるダムですよね。
福岡県を代表する名堤だと太鼓判を押します。
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