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転石ダム

堤高22.7m
G/AW 1926年 佐世保市営

2010.10.9見学

Like a Rolling Stone.


長崎県佐世保市 転石ダム(転石堰堤)は少し謎めいた魅力的な石積ダムでした。
川谷ダムを後に山道を下ると柚木町という町に出ます、その町の南側の山裾に転石ダムはあります。

集落の坂道を登ると、木々の間から石積の壁が見えました。
転石ダムです。



堤高22.7m、堤頂長164m。
数値の上では小柄なダムですが、堂々とした姿がそう思わせるのか、第一印象ではもっと大きな堤体に見えました。

特徴的なのは、バケットカーブからクレストにかけて垂直に高く伸び上がった壁面です。
この様な下流面を持ったダムは、他では見た事がありません。
逆にバケットカーブから下の勾配は、急斜面が多い石積ダムとしては異例の緩やかさに感じます。

この独特のダム勾配が謎めいた転石ダムをより魅力的にしている事は明らかです。



壁面の色は、高欄の親柱の部分だけ白さを残していて、そこだけ浮き上がって見えます。
写真では柱状の装飾がある様にも見えるのですが、実際には雨だれによる黒ずみの模様であった事が解りました。

きっちりと布積みで積まれた石材は、よくある長方形の間知石の形状ではなく、完全な正方形です。
また、石材の表面には凹凸がなく、まるでタイルのように平坦に見えます。
それに異様とも思えるマットな質感は、花崗岩などの通常の石材では無さそうです。

もしかしたら積まれているのは石材ではなく、コンクリート製のブロックなのかもしれません



250mmの望遠端で観察すると、赤錆色のハンドルが見えました。
堤体の正面に取水設備がある様です。

この転石ダムは、現在は佐世保市営の水道用ダムとなってます。
竣工は1926年、日本海軍によって建設されました。
日本海軍により鎮守府が置かれた佐世保は、海軍工廠を含む軍港としての整備が進められました。
転石ダムは、その軍港水道として造られたダムの一つです。

佐世保海軍工廠は、大和型の巨大戦艦が入れる大型のドックを有していて、実際には武蔵が一度ドック入りしただけだと言われていますが、戦後に民間に払い下げられた後は巨大タンカーの造船などに活用され、世界に誇った戦後日本の造船業に貢献する事になります



右岸の道を進むと道路脇にフェンスがありました。
多分、これが天端へ繋がる入口だと思われますが、堅く閉ざされていました。



ダムの右岸からは他にダムが見える場所が無く、一旦下流に戻って左岸へ向かう事にします。

下流の山道のカーブから転石ダムを見ると、堤体の下流左岸に何かがある事に気が付きました。



カスケード形洪水吐!!

ダム本体に洪水吐を持たない石積ダムでは、堤体の脇にフィルダムのような洪水吐を持つものが多く、この転石ダムも例に漏れず左岸に洪水吐を隠し持っていました。しかも、もっと古い世代のダムに多いカスケード形だったとは!。
これは是非、もっと近くで見なくては!。



左岸からの転石ダム。

ダム本体の左岸には、自由越流式の越流部があるはずなので、それを目指して左岸に来たものの、眺望に恵まれず、天端を部分的に見るのが精一杯でした。
望遠で前ボケの写真はミニチュアのようなちょっと面白い写真になりました。

下流面から這い上がった植物は、天端にも進出しているようです。
重厚なコンクリート造りの高欄が凛々しいですね。

堤頂部の幅は目測で2.5m程でしょうか?。
この堤高の石積堰堤としては少し幅広い天端に見えました。



ダムの下流にはダム施設への正門がありましたが、残念ながら当然立入禁止。

すぐ脇には普通の住宅があり、家の前庭を通らせて頂き、その奥も散策してみたのですが、ダム施設に至る事は出来ませんでした。



施錠された正門からの堤体。
すぐ近くにダムが見えている分、余計もどかしいですね。

道の先にコンクリートの欄干が見えます。
洪水吐の下流に架かる橋ではないかと思います。



門の前でうろうろしていると、門の左下に歩道がある事に気が付きました。
この道には規制線は無く、開放されているので入ってみる事にしました。



道はダム施設の境界線に沿って付けられていて、金網のフェンス越しですが、木々の間から時おり堤体を覗き見る事ができました。



先ほど正門から欄干だけ見えていた橋が見えます。

コンクリートの橋の下には、鉄骨のトラス構造が見えます。
これって何と言う橋の形式になるのだろう?。

コンクリートとアイアンのミックスした欄干がいいですね。



不思議な橋の上流に、例の洪水吐が見えました。
耳を澄ませば水音が聞こえる距離なのですが、残念ながら目視できるのはこれが精一杯。



フェンスに沿って道を進むと、ダムの右岸付近で行き止まりとなりました。

転石ダムの右岸端。なだらかな斜面から、ゆるやかに堤体が始まるのが印象的です。
この辺りの堤体はバケットカーブの上の高さなので、下流面勾配の無い垂直の壁部分のみとなっています。

ここである事が思いつきました。
この、ダムサイトとは思えないながらかな右岸の地形こそが、クレストの垂直面が高い独特のダム勾配に関係しているのではないでしょうか?。
通常のバケットカーブの位置だと、この辺りから既に下流面勾配が始まっていると思うのですが、この地形では、余分に分厚くコンクリートの使用量が多い堤体になってしまうと思えるのです。



次の訪問先、相当ダムからの帰り道、国号498から偶然、転石ダムの全容を観る事が出来ました。距離およそ1200m、町の反対側にまさに城壁のような堤体。
右岸のなだらかな地形もよく解ります。

転石川という河川名からは、石も転げるような急峻な地形イメージするのですが、実際の転石ダムは山裾に築かれた低く長いダムでした。



ライク・ア・ローリングストーンは、ボブディランの曲ですが、この曲の「Rolling Stone」は、「転石」ではなく、風来坊の意味なのだとか。
でも、雨だれに黒ずんだ堤体に、不精ヒゲのようにつる植物を蓄えた転石ダムの風貌は、風来坊という言葉もよく似合っていると思いました。

I Like a Rolling Stone. 転石ダム。
★★★★

| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム長崎県 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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