無料ブログ作成サービス JUGEM
←prev entry Top next entry→
西山ダム

旧堤体 堤高31.82m
           G/W 1904年 長崎市営
新堤体 堤高40m
           G/FW 1999年 長崎県営

2010.10.9見学

長崎市街中心部からおよそ2km
西山通りを北に進むと真正面にコンクリートダムが見えてきました。
西山ダムです。



ダム下の交差点を右折し、坂道を登るとアンティーク風の管理所があります。

外壁は新しく見えるので、改築やリフォームされているようですが、シャビーシックなアイアンの門は明治からのオリジナルかもしれません。



管理所から少し坂道を戻ると、上下に二つの堤体が見えました。

長崎市の緊急ダム事業として、1904年竣工の西山ダムも、水道水源専用の利水ダムから洪水調節が出来る多目的ダムへの転換が必要となり、既存の西山ダムにほとんど手を加えず、およそ60m下流に新しくコンクリートダムを建設する事となりました。

この様に上下に二重構造となっているダムは、全国的にも大変珍しいのではないでしょうか?。



まずは、1999年に竣工した新堤体を拝見します。

クレストゲートは最近のダムらしく自由越流式。
高い位置の四角いオリフイスゲートはデフレクターが無く、つるんとしています。
なんとなく80年代のターボ車のインテーク風(?)



表面は石積風のデザインが施されており、すぐ背後の大先輩への配慮が伺えます。

フーチング上の柵も天然石の石柱が使われ、新鋭のダムでありながら暖かみのあるディテールをしています。



天端はもっと凝っています。

歩道となっている天端は石畳が敷かれ、クラシックなアイアン風の高欄とランプ。
龍をモチーフとした装飾も見られます。



新堤体から見る、旧西山ダム。
本河内低部ダムに続き、コンクリートダムとして日本で3番目に古いダムです。



どっぷりと湖水に浸かる石積堤体は、ダムと言うより、城のお堀の様に見えます。

クレスト部分を観察すると、本河内底部ダムと共通のデザインと言う事がわかりました。
3キロも離れていない本河内低部とは、同時期に建設が進められていた事もあり、実質的に兄弟ダムとも言えそうです。




新堤体から下流を見ます。

デザイン的な遊びの少ない減勢工、周辺は公園化されています。
ダムの下流は明治時代のオリジナルの部分と、最近の工事の部分が混在している様に伺えます。



新堤体を渡り、右岸から旧堤体に向かいます。

やっぱり不思議な感じを受ける西山ダムの風景。

新旧二つのダムの天端レベルは同じ様です。
それでいて、旧堤体31.82m、新堤体40mと堤高が異なるのは、新堤体は河川の下流にある事と、基礎地盤の掘削の深さに違いがあるのだと思います。



新堤体は、上流側も石積風の型押しが施されていました。
石積風で現代的な放流設備と言うのもなんだかユニークです。



石積のバケットケーブの美しい旧堤体。

クレスト部分の水平に延びる帯状の装飾は、石積ダムでもごく初期のダムに見られる特徴のひとつです。
同じデザインの本河内低部ダムのほか、神戸の布引五本松ダムや立ヶ畑ダムにも見られます。

その後、究極的に装飾を施した呉市の本庄貯水池堰堤などが、このデザインの延長線にあると言えますが、クレストに洪水吐を配置するのが一般的になると、ダムデザインの華の部分はクレストゲートのピア等に取って替えられる事となります。

いずれにしても、日本のダム史上で初めて造られた堤体たちが、既にこの様な洗練されたデザインを採用していたのは驚きに値すると思います。
表面の色味こそ長い歴史を感じますが、形自体に全く古さを感じません、現代にも充分通用するデザインです。
推測ですが、欧米など海外のダムなどを参考にしていたのかもしれません。

また、新堤体のクレストゲートの越流部の高さから想像すると、旧堤体ではバケットカーブ上の装飾の辺りがサーチャージになりそうです。
ひょっとして、そういった水位等を示す機能的な役割があったのかもしれません。

(これらの事は、ダム愛好家の空想遊びにすぎませんが、再開発が行われても、オリジナルの状態が保たれているからこそ感じる事が出来た訳で、歴史的景観を残すという価値はとても大きいと思いました)



左岸にあった(と、思われる)洪水吐が掘削され、貯水池はフリーで新堤体に繋がっていて、水位も同じとなっています。

天端の左岸はこんな感じで自然な造りになっていました。
ここら辺は多分、竣工当時のままだと思われます。



青々と苔むした高欄。

でも、苔の中のコンクリート面や、石畳の路面はとても滑らかで、非常に丁寧な造りをしています。
同じ古いコンクリートダムでも、戦中〜戦後直後の荒々しい表情とは対照的に、穏やかで品のある天端です。



左岸の管理所の下から見る旧西山ダムの天端。
100年の間に木々成長したのか、森の中のダムといった雰囲気。



今回、下流側から新堤体を渡って時計回りに一周しましたが、もちろんその逆方向にも散策して周る事も出来ます。

管理所の近くには休憩用のベンチやダム案内看板、旧堤体のコンクリート見本なども見る事が出来ます。



ほんの3キロ四方の中に、100年を越す貴重なオールドダムがひしめく長崎市。

正面に新堤体を追加し、トンネル式の洪水吐を建設中の本河内低部ダム。
アースダムの直上に、コンクリートダムを建設した本河内高部ダム。
そして、既存のダムの直下に新堤体を建設した西山ダム。

時代の要求で本来の水道用利水ダムから、防災機能を持った多目的ダムに生まれ変わる事になりましたが、いずれのダムも既存のダムを極力残す方法が採用されているのは素晴しい事だと思います。

あと10年、20年すると、日本全国で次々と沢山のダムが100歳の誕生日を迎えます。
長崎市のこれらのダムは、ダム再開発の優れたモデルケースとなっていくのではと思います。



西山ダム
★★★★

| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム長崎県 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
name:
email:
url:
comments:
Trackback
http://side-way.jugem.jp/trackback/628