無料ブログ作成サービス JUGEM
←prev entry Top next entry→
武周湖

堤高20.3m
E/P 1920 北陸電力

2010.8.22見学


福井県の武周湖はとても変わったダムです。

集落の奥を分け入った狭道を進む事数キロ、こんな奥地にあるのは決まってコンクリートダムなのですが、武周湖はアースダムとなっています。

しかも、山の崩落によって出来た天然湖を利用したダムであるとの事。
さらに、特徴的なのはダム目的で、アースダムに多い農業用でも、防災でもなく発電用のダムなのです。

ダムの下流方向からアプローチして車を走らせると、カーブの先で視界が開け、なにやらコンクリート製の色々な構造物が現れました。

ここが武周湖でしょうか?



ひとまず駐車スペースに車を入れます。
人家のない山奥にも関わらず、雑草は綺麗に刈られています。
ダム敷地との境界線の柵もしっかりとしていて、とても整備の行き届いたダムというのが第一印象でした。

柵の向うがアースダムの堤体です。



堤体の右端は、深く幅広くえぐられ、大きな余水吐となっていました。
コンクリート表面の風合いが渋いです。

その先に武周湖ダムの貯水池である武周ヶ池が広がっています。



ダム湖畔の道は、中部北陸自然歩道(越前自然歩道)となっています。
気持ちの良い木漏れ日の奥には、北陸電力の管理所のほか、トイレや休憩所などか整備されています。

しばらく山の方からチェーンソーの音が響いていましたが、それが止むと林業の方々が昼食に降りて来られました。



右岸からの武周湖ダム。

堤体が自然な形をしていますが、下半分は山の崩落で谷を堰き止めた部分だと思われます。
堤体の上には艇庫とインクラインが見えます。さらに向うにあるのは発電所への取水設備です。

歩道の木陰から見る堤体は、夏の日差しに輝いて見えました。
堤体の上には何本か木々が植えられ、ダムというよりも高原リゾートといった風景です。



ここから北西方向へ山を越えた水は、日本海に面した北陸電力蒲生水力発電所へ送られます。発電を終えた水は直接海に放流する珍しい発電所です。

変わった形の放流設備。
石積の塔の上に小屋があります。この上の小屋の高さがアースダムの天端レベルに近いと思います。
何故そうなっているかも含め、ちょっと謎めいて見えます。



静かで優しい表情の武周ヶ池を望む。

この場所にはかつて奥武周という戸数32軒、200名余の住む集落がありました。
天正18年(1590年)12月4日、突如谷の東側の天賀峰が崩落し一夜にして集落を押し潰し、人々を飲み込みました。

この大規模な崩落によって谷が堰き止められ武周ヶ池が出来ましたが、翌年には梅雨の雨に耐えられず堰が崩壊し下流に甚大な被害をもたらしています。

現在の武周ヶ池にそんな悲劇を思わせるものは何もありません。
あるのは日差しを湛える滑らかな湖面と、草の匂いのする風と、小鳥の声だけ。



管理所の裏山は何段かに造成され、公園化されていました。
ひょっとして、かつての住居跡かな?と、思います。



プチ散策を満喫、リゾート気分でウキウキしながら堤体の辺りに戻ってきました。



見事に断面形状を露にした余水吐の側面。
この三角部分が人工的に盛り上げたアースダム部分でしょうか。

余水吐の一部は、かつては水位を調節する構造物があったと思わせます。
いずれにせよ、現在の水位や余水吐の高さだと、ここまでアースダムを盛り立てる必要があったのか、ちょっと不思議な感じがします。

1920年に造られた古いダムなので、90年間に及ぶ歴史の中で紆余曲折があったのかもしれません。



最初に気になっていた堤体の下流に来ました。

副ダム・・・・?
ぐるりと3方をコンクリートで護岸された人工の池には、この池専用の洪水吐や、何処かへ送水する取水口らしきものまであります。

位置的には副ダムと呼ぶべきですが、どうしても違和感があるのがこの水の流れ込みが何処なのか全く不明である事です。



主堤体の大きな余水吐は、この副ダムに流入する事なく、迂回して下流へ放流される仕組みになっています。
見える範囲から池の周りを探してみると、一応右上流側に流れ込みらしき部分があるのですが、水は止まっていて流れこんでいる雰囲気ではありません。
取水設備があるので、人為的に水を調整する何かがあっても良さそうなのですが。

この場所から見る主堤体は、貯水池側と違って全面的に人の手が加わっているように見えます。
副ダムに浸る部分が示す通り、下流面は石貼りで保護されています。

基礎部分は天然の堰なので、この副ダムの水はアースダムが築かれる前からの浸透水のような水なのかもしれません。



副ダムの下流はとても複雑な表情をしています。
写真手前に写りこんでいるのが主堤体の余水吐の方流路です。

副ダムの洪水吐は地面に埋め込まれているような形。

低い雑草に囲まれたコンクリートの歩道や階段、所々に顔を出す岩の表情。
絵本の挿絵のような、ちょっと不思議な風情を感じます。



天然の堰止湖を利用した発電用のアースダム。

作られたのは日本が帝国主義を突き進んでいった時代です。
国力を上げる為に利用できるものはなんでも利用する。時代背景からはそんなイメージもありました。

でも、今日の武周湖ダムは、夏の日差しに緑は眩く輝き、湖面は静かに眠っているかのように穏やかな表情で、訪れる人を癒してくれます。

また来年の夏にも来たい。

再訪を約束して武周湖を後にしました。

武周湖
★★★★★

| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム福井県 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
name:
email:
url:
comments:
Trackback
http://side-way.jugem.jp/trackback/591