無料ブログ作成サービス JUGEM
←prev entry Top next entry→
白水堰堤

堤高14.1m
G/A 1938年 富士緒井路土地改良区

2010.3.22見学

JAPAN ORIGINAL.


九州遠征2日目、九州自動車道 託麻PAを出発したのは早朝4時頃だったと思う。
日本三大美堰堤のひとつ、大分県 白水堰堤を朝一で狙う為だ。
 
熊本ICで降りて、国道57号をひたすら東へ走る。
本当なら右手に阿蘇山の雄大な姿が見えるはずだが、だた漆黒の闇が広がるばかりだ。
 
途中、阿蘇の道の駅に立ち寄った。
するとどうだろう、道の駅のパーキングは車中泊のキャンパーや、ワゴン車で埋め尽くされている。
 
焦った。
目指す白水堰堤は、絶好の撮影ポイントとしてダム愛好家のみならず、今やアマチュア風景写真にもメジャーなスポットなのだ。
道の駅に溢れる車中泊の車を見て、どの車も、三脚の場所取り競争のライバルに思えた。
 
逸る気持ちにブレーキをかけつつ、白水堰堤に到着した頃は朝になっていた。
近くに白水の滝という景勝地があるらしく、現地では白水堰堤の事をそう呼ぶのか?と、勘違いし少し道に迷った為だ。
すっかり出遅れてしまい、三脚競争に負けたかもしれないと思っていたが、現地で待っていたのはアマチュアカメラマン達ではなく、朝の光と異様な静寂であった。
 
静かだ、対岸の小鳥の羽音まで聞こえるようだ、流れる水の音さえしない・・・・。
車を飛び降り堰堤に駆け寄る。

水が・・・・無い。



時おり、ゴボッ、と咳払いをするように、空気と一緒に水しぶきが上がる。
唯一流れている水はこれだけ・・・。



水が流れていない事に落胆したが、気を取り直して視線を上げる。

水が無い?もうそんな事はどうでも良くなった。

なんて美しい表情なんだろう!!



左右で表情の異なる下流面。
ゆったりとうねるドレープが印象的な右岸、流れるようなカスケードが美しい左岸。



白水堰堤を撮影した写真には、白いレースのような越流を背景に、堰堤下に人が立っている写真が多いが、この日は堰堤下は立入禁止であった。
水が止められていたのは、点検と調査の為との事なので、通常は立入可能なのだろうか?。

車を止めた左岸の堰堤下は、そこまでの農道の道幅は狭いものの舗装は新しく、十分な駐車スペースもあり、近年観光用に整備されたものだと思われる。

堰堤下が立入禁止の為、左岸に向かうには、車で7〜8キロ迂回する事になり結構大変だ。それに、左岸にはごく普通の民家が1軒あり、少し驚いた。
竣工当初、ダム守のような仕事をされていた家なのかもしれない。

オールドスタイルのダム碑、その前に祠。



白水溜池 朝7時。
下流の田畑を潤す貴重な水源地である。



貯水池の奥には水鳥たち。

複雑な地形のこの辺りは、昔から米作にかかせない水の確保が難しく、サイフォン式の用水路や円筒分水など、多くの灌漑設備が作られている。
白水堰堤は、その灌漑システムのほんの一部にしか過ぎないそうだ。



右岸から見下ろす。
越流面の苔が枯れていない所を見ると、水がなかったのは本当に運が悪かった。

下流面にも負けない美しい巻天端。クジラの背中の様だ。
積まれる切石は比較的小さなサイズだが、これだけ滑らかに築くのは高い技術が必要だったに違いない。



左岸のドレープの上には石造りの階段が設けられている。

ゲートバルブから放流した先は、用水路への入口だろうか。
越流していても、堤体の真下を人が歩ける秘密はこれだったのか。副ダムのようになっている部分は通常の越流では水が被らないのだ。

日本三大美堰堤として姿形が有名な白水堰堤は、構造的にも、まだまだ知られざる秘密があるようだ。



白水堰堤の竣工は意外にも遅く1938年。

この頃になると、一般にコンクリートダムの整形は型枠を用いており、とうに石積を脱ぎ捨てていてもおかしくない時代にあたる。

大分県は明治以降500を越える石橋や水路橋が作られており、石工の技術の含蓄もあったと思われる。
だが、この白水堰堤が時代遅れとも言える石積に拘ったのは、石積みの表面の凹凸により、越流水の減勢を狙ったものなのである。

左岸の階段状の下流面。
堤体から幾つもの階段が産まれている。



左右で異なる白水堰堤の設計は、石積みの構造も含め、全て越流水の減勢という目的を持って設計されている。

阿蘇山の麓、火山性の脆弱な地盤の上に築かれた白水堰堤は、堤体保護の為、いかに水流に逆らう事なく越流させるのか考え尽くされた結果なのである。

また、設計を担当した土木技師は、画家を志していた方であるらしい。




水の無い白水堰堤。

水が流れていないのに、しゃらしゃらと、今にでも水の流れる音が聞えるように感じる。

ちょうどそれは日本庭園の枯山水に通じる凛とした表情とイマジネーションに溢れている。

この美しさ、世界中を探してもここにしか無い。

JAPAN ORIGINAL.



白水堰堤
★★★★★


それにしても、三大美堰堤の内、秋田の藤倉堰堤は日没の為あきらめ、愛知の篠原堰堤は雨の為にアマゾン状態。
どうも、美堰堤にはツキが無いようで・・・。


おまけ。

白水堰堤から20キロ程度の位置にある大谷ダム。
こちらも非常に貴重な構造のコンクリートダムであるらしい。



集落からの道を下ると大谷ダムのはずだったが・・・。

神の領域では仕方ない、今日は諦めよう。
もっと沢山のダムを見学して、「ダムの神」になったら入れるかな?





| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム大分県 | comments(5) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
2010/06/01 2:00 PM posted by: 神馬シン
水が流れていなくて残念な結果だったようですが、それでも水が流れていない白水堰堤もまた良いものですね。

まだ見たことが無いので、ますます見たくなりました。

それにしても「神の領域」には笑いましたが、「えらそーに何を!」と一瞬思ったものの、よくよく考えてみれば水神様の領域なわけで「なるほどー」とも思いました。
2010/06/01 8:42 PM posted by: あつだむ宣言!
お久しぶりです、ダム男子さん(笑)

神の領域。
農業に水が欠かせませんが、農業用のダムが作られたって事は、言い換えれば昔から水の確保に困っていた土地柄と言う事で、農家の方からすれば水源地は神も同様なのかもしれませんね。

あと、無断ではいっちゃったら、きっとバチが当たります(笑)
2010/06/02 7:58 PM posted by: だい
まいどー。
期待していた越流が見れなかったのは残念でした。
でも苔の緑が綺麗ですね、越流してないからこその姿です。
寒い時期とは言え、苔が緑なのはやはり九州だからでしょうか?
青下達は苔が白くなってましたから・・・

>きっとバチが当たります
どきっ!?当たるなら宝くじが当たりますように(笑)
2010/06/03 5:55 AM posted by: 夜雀
おはようございます。

これはこれは貴重な写真。
逆に珍しすぎるこの姿。

4枚目の写真最高。
ちびっとトリミングしてほしい。

構造を理解するためにはやはり越流していないのがいいな。
こんなにコケが生えていたとは吃驚です。
桂貯水池堰堤みたいなイメージでしたが違いましたね。

神の領域(笑)。
そーそー。
関係者と神様しか通らない道。
円筒分水は?

  夜雀 拝
2010/06/03 12:31 PM posted by: あつだむ宣言!
だいさん、まいどですー。

青下も苔付きでしたか。
僕は逆に青下は3ダムとも越流が見れましたよ。
「ダムマニアがゆく」僕の次回は青下にしようと思っています(つばつけとこ。)

だいさんにはすでに、日本中のダムを周らないと死んでしまうという、世にも楽しげな呪いが・・・。


夜雀さん。お疲れさまです。

白水堰堤、想像よりも大きくて、複雑な形状でした。特に右岸の曲面は有機的というか、爬虫類ちっくと言うか。

円筒分水は次回におあづけ。
と、言うか、まだ一つも観たことなかったりして。

次のネタは、めいめいのメェメェがメーメー鳴く所です。

name:
email:
url:
comments:
Trackback
http://side-way.jugem.jp/trackback/472