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奥津発電所調整池 懸崖水槽

所在地 岡山県苫田郡鏡野町奥津川西

2010.1.9見学

「空中水槽」


苫田ダムの上流、奥津温泉の近くにとても貴重な発電用の調整池があるという。

その調整池は、温泉街を見下ろす山腹のキャンプ場、星の里キャンプビレッジから、さらに林道を300mほど進んだ所にあるのだそうだ。
通常、目的の調整池まで車で行けるのだが、この日はキャンプ場からの林道は雪で閉ざされ、徒歩で向かう事となった。
キャンプビレッシは冬は休業している様だが、管理人の方が居られたので、キャンプ場の駐車場を借りる事が出来た。調整池の事を伺ってみたが、その様なものは知らないと言う。少し不安になる。

林道は一面の雪。
車どころか人の足跡ひとつない雪面。
雪の深さは膝丈程度なのだが、足を踏み出すごとに、表面がバリッと割れ、一歩一歩足を取られ、実に歩き辛い。
蹴散らせるほど柔らかくもなく、上を人が歩けるほど堅くもない最悪の雪面である。

見上げると山の上にコンクリートの構造物が見える。



コンクリートのバットレス。間違い無い、懸崖水槽だ!



心は逸るが、足はもつれるばかり。
おまけに乾いた冬の空気が遠慮なく喉をカラカラにさせる。

息も荒く、だいぶ近くまで登って来た。
残念ながらバットレスの周辺は厳重なフェンスにより立入禁止。



扶壁に登録有形文化財のプレートを発見。
完成は1933年、とても歴史のある調整池は、各地でバットレスダムが造られた1923年から1929年の期間から少しだけ時期を置いて完成している。

この調整池から水圧鉄管が伸び、ふもとの中国電力 奥津発電所で発電が行われている。



この調整池の場所には、元々そこに流れていた谷川は無く、水は全て遠くで取水されたものである。
北西に山を二つ越えた羽出川と曲谷川の合流点から取水された水、それに、およそ10キロほど離れたバットレス恩原ダムから送られる水である。



調整池の全体を眺望できる位置まで来て驚く。
なんと冬の調整池は水が無く、コンクリートの底が露になっていたのだ。

広さは、幅およそ50m、奥行きは180m程度だろうか。
同じように底がコンクリートで貼られている北陸電力 真川調整池より少し狭い程度。
銀色に輝く池の底は、実際よりも広く見える。

写真右手の斜面がバットレス構造の遮水板。池の深さはそれほどでも無く、10mに満たないように感じる。



山側から丸くせり出した部分は余水吐だろう。
一般的なダムの余水吐と違い、洗面台のシンクのあふれ防止穴のようで面白い。

奥に見える建物の辺りに、水圧鉄管への入口があるはずだ。
恩原ダムから送られて来た水も、こちら岸に出口があると思うのだが良く解らなかった。



調整池の周囲にそって、池の1/3程度散策する事が出来る。
振り返ると雪面には自分の足跡だけ。

右手の建物は送られて来た水の落差を利用した発電施設。
位置的に羽出川・曲谷川方面からの水ではないかと思うのだが、詳細は不明。



調整池の奥の方まで行くと、不思議な形の流れ込みがある。
先ほどの発電所から微妙な距離感なので、発電後の水の出口か、それとも、別の流入なのだろうか。いずれにしろ、調整池に水が貯えられると完全に没してしまう部分である。

調整池の周囲はぐるりと全周に渡りコンクリートが貼られ、池の底もコンクリートなのだから、文字通りの水槽であるようだ。



この奥津発電所調整池は、日本ダム協会のダム便覧には載っていない。

河川を堰き止めている事がダムの定義のひとつであるが、この調整池のように元々何もなかった土地に作られた貯水池では、青森の一の渡ダムなど便覧に記載されている例もあるので、ネックとなるのはやはり堤高が15mに満たない事なのかもしれない。



さらには、この懸崖水槽の構造があまりに特殊である事も挙げられるだろう。

懸崖水槽の懸崖とは、所在地の地名ではなく 「懸崖造り」 と言って、崖などの斜面に柱を立て建物を築く建築方法の事である。
山奥の寺院などに見られる懸崖造りは、有名どころでは京都 清水寺の舞台などかある。

その懸崖造りの調整池。外観からは3階建のビルのようなバットレスがそびえる、高い所で地面より14mほどある。
実はコンクリートの調整池の底は、無数のラーメン構造のコンクリート柱によって地面から浮いた状態で支えられている。

これが懸崖水槽と呼ばれる由縁なのである。

驚愕なのは、さらに地下に16mほど、貯水池を支える無数の柱が埋没していると言う事だ。
埋め立てられた土砂を取り除くと、高い所で30mに及ぶ高さの扶壁や柱の上に、広さ50m×180m、深さ数メートルの貯水池が、空中に高々と持ち上げられているのである。



奥津発電所調整池 懸崖水槽。

貴重なバットレス構造の調整池を、さらに懸崖造りで築き上げた。
奇跡のような建造物が、だれも来ない雪の中でじっと春を待つ。


special thanks  「雀の社会科見学帖」 夜雀 様
現地で情報ご提供頂き、ありがとうございました。

| あつだむ宣言!(清水篤) | ダム特別編 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
2010/02/25 9:38 PM posted by: 夜雀
更新お疲れ様です。

待ちに待った抜水時の懸崖水槽写真たんのー。
やっぱりここ綺麗だな〜。

しかし思うんですが
これ、道じゃないところ歩いてるでしょ。
雪に強いですな〜。
流石、豪雪地帯でお暮しになっているだけあるなと思います。

ちなみに上からこの調整池にお水を送る時にその落差も利用して小さい発電所を作ってあるんで水槽の底にあったのはまさにその発電所からの放流口です。

西山先生にも是非この写真見て頂きたいですね〜。

  夜雀 拝
2010/02/26 12:24 AM posted by: あつだむ宣言!
夜雀様

懸崖水槽の見学時には大変お世話になりました。教えてもらわなかったら確実にスルーしてました。

雪さえ無かったら、案外訪れ易い場所なので是非たくさんの人に見てもらいたい所ですよね。

このブログで、ダム岡山のカテゴリーにすべきか迷ったのですが、懸崖造りの構造を想像していたらダムよりも、ビルの上にある貯水タンクの方がイメージとして近く思えて、ダムとは別のくくりにしました。

ちなみに、ちゃんと道の上を歩いていますよ。
望遠側で撮ってる写真は、山の斜面から撮影した様にも見えますけど。
それよか、見事に翌日は筋肉痛だったので、道以外の所を登る余裕なんでまるでありませんでしたし(汗

しかし、不思議で面白いモノがあるもんですね。驚きました。
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