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牛伏川フランス式階段工

「日本で最も美しい砂防堰堤」

所在地 長野県松本市内田
2010.2.2見学

松本市にとても美しい砂防堰堤があるのだと言う。
大正時代、フランスのサニエル渓谷の階段状の砂防工事を手本として築き上げられた、階段状の砂防堰堤群である。

そのフランス式階段工へは、まず厄除けの祈祷で有名な金峯山牛伏寺(ごふくじ)を目指す。住宅地を抜け、山中に入ると巨大な砂防堰堤が姿を現す。牛伏寺砂防堰堤である。



砂防堰堤を見下ろす場所に、牛伏寺の駐車場があるので車を停めさせて頂いた。
通常、目的の階段工まで車で行けるのだが、山道は一面の新雪。それに、歩いて探訪するのも悪くないと思った。

歩き始めると直ぐに道は二手に分かれる、目指すフランス式階段工には右手の砂防堰堤の湖畔の方向だ。



国土交通省の土木遺産リストにも挙げられ、登録有形文化財の指定を受けた牛伏川フランス式階段工は散策路が整備され、上流にキャンプ場が出来るなど、学べる野外レジャー施設として整備されている。

牛伏寺砂防堰堤上流からの眺望。
遠くには松本の市街、さらに天候次第では北アルプスの山々を望む事が出来るのだとか。



牛伏川沿いの道を歩くと、さらにいくつもの砂防設備が見えてくる。
これは牛伏寺ダム上流砂防堰堤。比較的新しいもので、昭和53年の完成。



この牛伏川は、上流が脆く崩れ易い地質であった為、かつては絶えず氾濫を起こし、元禄年間から明治にかけての200年間は、10年に一度の割合に大洪水を引き起こしていたのだという。
その為、江戸時代から上流の沢には砂防工事が施されたが山肌の崩落を止めるには至らず、明治の初めには、上流の山肌は一面はげ山と化した。

その荒廃した牛伏川に転機が訪れる。
明治10年、国による信濃川改修工事に際して、信濃川の土砂の堆積の要因として、この牛伏川の氾濫が挙げられる。
明治18年、政府の手により牛伏川の砂防工事が開始、その後も国の補助を受け工事は県に引き継がれれ、牛伏川上流には100基以上の石積み堰堤、護岸や植林などが施される。

その結果、土砂の流出が抑えられつつあったが、今度は土砂の流出が減った事により河床が低下しはじめる。
特に幾つのの沢が合流し、牛伏川の本流が始まる地点では他より勾配も急であった事から、深刻な事態となる。それが今回の目的地、後に牛伏川フランス式階段工が築かれる場所であった。



牛伏川ダム上流砂防堰堤から上流は、河床に石が敷き詰められ、ゆったりと沢の水が流れて来る。
ここはまだフランス式階段工ではない。
さらに上流へ向かって歩くと、道はついに完全に雪で覆われ、新雪の上を歩く。

これが、日本で最も美しい砂防堰堤と呼ばれる、牛伏川フランス式階段工である。



全長140m、落差50mの中に、19段もの段差が設けられている。
格段の高さはおよそ80センチ前後。最下流の1段のみ高く3mの高さがある。
また、その格段の中にも複数の小段をもつものもあり、バラエティに富んだ水の表情は観ていて飽きる事がない。

積まれる一つ一つの石は、自然のままの野面石。
流れ落ちる水流も角の取れた滑らかな表情で、コロコロと空気を包み、転がり流れる水音に心が和む。

階段工の脇には、雪に閉ざされた車道の他に、林の中に歩道が作られている。
一歩一歩雪を踏みしめながら美しい階段工を散策する。



階段工の最上流は第一号石堰堤と呼ばれ、明治19年に内務省によって築かれた。
そこから下に伸びるフランス式階段工は、長野県により大正7年に完成。
これにより、30年にも渡る牛伏川の砂防事業は終了する。



この第一号石堰堤の上流も石貼りの河床は上流に向かって続に、さらに上流には明治に築かれた多くの石積み堰堤を観る事が出来る。

第一号堰堤の上の建物はキャンプ場の炊事場。夏には、はだしの子供達が牛伏川で遊ぶ姿が観られるのだろう。

牛伏川に入り、第一号石堰堤の上からフランス式階段工を見下ろす。
こうして上から眺めると、自然のありのままの優しい流れに見える。



雪が消え、林の木々が芽吹く頃になると、フランス式階段工の周囲も葉が茂り、階段工は姿を隠してしまうらしく、観るなら冬が良いそうだ。

今回は新雪が積もり、きっと姿を隠してしまうだろう上流の石積み堰堤は、次のシーズンの楽しみとした。雪が無ければ、キャンプ場まで車で来れるだろう。




牛伏川フランス式階段工
100年前、一面はげ山だった谷には見事に緑が戻り、暴れた谷川は人の手により、優しい流れに姿を変えた。


<参考文献>
「とっておきの風景 水辺の土木」 伊藤孝 他著 INAX出版

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