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綾北ダム

堤高75.3m
A/FP 1960年 宮崎県営

2011.11.5見学


田代八重ダムを後に、綾北川を下って行きます。
長細い綾北ダムの貯水池、曲がりくねった湖畔道路を進んで行きます。

昨夜からの雨は上がり、霧も晴れて来ました。

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田代八重ダムからおよそ10km、綾北ダムが見えて来ました。

綾北ダムは、洪水調節を主目的として、発電も行っている宮崎県営の多目的アーチダムです。
クレストセンターに大きく空いた2門の非常用洪水吐。
その両脇に間隔を開けて、コースターゲートが見えます。

車を停め、写真を撮っていたら、何処からか犬の鳴声が聞こえて来ました。
静まり返った朝の湖面に、犬の声が反射して響いています。

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車でダムサイトに到着しました。
出迎えてくれたのは、ダム管理所の愛犬でした。

湖畔に車の音がすると、吠えて職員さんに知らせるみたいです。
こちらから声を掛けると、すぐに静かになりました。賢いいい子です。

陸の孤島のような場所にある綾北ダムです。
九州に熊は居ませんが、猪や猿避けに飼っているのかもしれません。

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高速のインターからおよそ2時間、ようやく辿り着いたという感じです。

今回の九州遠征は、過去の遠征で未踏となっていた物件をメインに巡っています。
5基のアーチダムを有するアーチ王国宮崎県、これでようやくコンプリートです。
(大分の北川ダムも観たので、離島以外は九州のアーチもコンプ達成)

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さて、コンプリートする事よりも楽しみにしていたのは、綾北ダムが他のアーチダムでは有り得ない超個性堤体という事もありました。

鮮やかな朱色に塗られた怪しい物体が、湾曲したアーチ面にへばりついています。

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ななな、なんですかこれは!

不思議な、不思議な、放流設備。
何故だか急に、高2の生物で習ったT2ファージを思い出しました(見比べると全然似てないのですが)。

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実はこれ、コンジットゲートなのでした。
アーチダムなのに、あえてラジアルゲートと言うのか実に変態的!

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鮮やかなペイントで怪しさ2割増し!
(グレーとかもっと地味な色だと、もう少しおとなしく見えると思うのですが・・・この色は確信犯?)

ゲート室の屋根も壁も同じ色ってのもミソですね。

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ゲート室の下は紛れも無くラジアルゲートが付いています。

通常アーチダムのコンジットはローラーゲートと決まっているような物ですが、そこをあえてラジアルにするかっ!。面白すぎ!。

アームの支点は、堤体から伸ばされた鋼製の太いフレームによって支持されています。
扉体の両脇からコンクリートの扶壁が立ち上がっていますが、導流壁であって、ゲート本体とは分離しています。

なんだか重力式の高圧ラジアルが堤体から飛び出しちゃった感じで、スケルトン模型とかのイメージです。

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ゲートの下はコンクリートのジャンプ台になっています。
こうまでしてコンジットにラジアルゲートを使いたかったのか!?。

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特徴ありすぎのコンジットに目を奪われぎみですが、アバットのコンクリートの表情も緊張感があってマニア的になかなかよろしい・・・。

最下層のキャットウォークが、ジャンプ台の下に入りこんでいます。
いいなあ、あそこに行ってみたい・・・。

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少し下流に目を向けると、副ダムもちゃんとアーチになっていました。
なかなかグラマーな感じの副ダムです。

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手前(右岸)のコンジットも全く同じ造りです。

コンジットの放流時には、左右のジャンプ台で飛び出した放水が空中で交わってクロスファイア(集中砲火)状態になるそうです。

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右岸のコンジット辺りを観ていたらパイプ状の物が・・・プラムラインですね。

アーチ式の堤体のコンジットに高圧ラジアルゲートを使っている不思議な綾北ダム。何故この様な凝った構造をしてまでラジアルゲートを採用したのでしょうか?。

調べてみると不思議な見た目とは裏腹に、実に単純明快が答えが解ってきました。

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綾北ダムは1957年に着工、完成は1960年です。
当時は戦後の高度成長期の真っ只中で、ダムに於いても貯水をより有効に活用する事が求められはじめていました。
そこで考え出されたのが、高圧下での大容量調整放流設備、すなわち「コンジットゲート」です。

実は、綾北ダムこそ我が国で初めてコンジットゲートを装備したダムなのです。

これはアーチ式では勿論、重力式コンクリートダムを含めても、初めての事でした。(確認の為にダム便覧で綾北より古いダムを全てチェックしました・・・)

なにせ我が国で初めての試みであり、高圧下の放流ゲートは実績がなく、綾北ダムのゲートはアメリカの高圧ラジアルゲートを技術導入し設計の基礎としました。
しかし、ゲート支持部の荷重集中など、アーチダムでの高圧ラジアルゲートの採用は構造上の難点もあり、その後アーチダムのコンジットには高圧ローラーゲートが使われる様になります。

つまり、
「選んでラジアルにしたのではなく、最初だったので選択肢がラジアルしか無かった」

と、言う理由がこの不思議なゲートの真相のようです・・・。

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日本初のコンジットゲートは、他には類を観ない超個性派ダムとして、ダム史の1ページを飾っています。

綾北ダム
★★★★

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田代八重ダム

堤高64.6m
G/FNWP 1999年 宮崎県営

2011.11.5見学


遠征3日目は、宮崎県南部の山の中からスタートです。
宮崎自動車道 小林ICから、国道265をひたすら北進して到着したのは、田代八重(たしろばえ)ダムです。

霧の中の静かな湖面、神秘的な貯水池です。

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ダム湖に沿って車を進めると、ダム本体に到着です。

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宮崎県営の多目的ダムで、堤高64.6m、堤頂長216mの立派な重力式ダムです。

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雨に濡れた部分のコントラストがやたらとハッキリしています。

クレストには自然越流の非常用吐が5門、その下の4門のオリフィスにはラジアルゲートが採用されています。

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天端は広く、解放されています。

地元特産品の栗が熱烈にアピールしています。
良く見ると、フルカラーのイラストだけでなく親柱の形も栗(イガ付き)だったりします。

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オリフィスゲートの操作室や、水位計室など、クレストの建物が、「ごく普通の建物」的な外観です。

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天端から下流を観ます。下にある建物は発電所です。

下流10キロには綾北ダムがあります、綾北ダムの貯水池は長細く、田代八重ダムの下流の水面は、綾北ダムの最上流部となっています。

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至る所に栗がプッシュされています。
これだけ特産品を押してるダムも珍しいですが、悲しいかな、まず観光客が来ない山の中だったりします・・・。

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天端を渡った左岸にある管理所。
スキーロッジ風で洒落てますね。

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下流からの眺め。
重力式らしい堂々とした落ち着いた佇まいに、4門のオリフィス・ラジアルゲートがメカニカルなアクセントになっています。

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田代八重ダム
★★★

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芋洗谷ダム

堤高25.5m
GA/P 1930年 JNC(株)

2011.11.4見学


星山ダムを観た後、国道218を北進し高千穂まで来ました。
ターゲットは日本で最も古い重力式アーチダム、芋洗谷ダムです。

竣工は古く1930年までさかのぼります。
重力式アーチをアーチダムとして分類すると、三成ダムの竣工は1953年なので、芋洗谷ダムは日本最古のアーチダムと捉える事も出来ます。
また、芋洗谷ダムに続く重力式アーチは1961年の二瀬ダムまで待たなければなりませんから、1930年当時、重力式アーチという明確な概念があったのかは不明ですが、目新しい設計であった事は確かだと思います。

道の駅「高千穂」の辺りから里山集落に入り、芋洗谷ダムを目指します。

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集落の外れから薄暗いダート林道に突入。
落葉が積もった、滑りやすい雨上がりのダートを慎重に進みます。

日も暮れて来そうだし、脱輪でもしたら大変です。

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電子国土の地形図で、だいたいのルートは把握していたのですが、地形図に未記載の分岐があり、まんまとミスコースしてしまいました。

車幅ぎりぎりのダートは、体積した分厚い泥で人が歩く程度のスピードでも、勝手にズルズルとテールが流れ出します・・・。

あわわわ、ここでアクセル緩めたら間違いなくスタックです。
とにかくアクセル踏みっぱなし、カウンター当てっぱなしで突破します。

今迄のダム巡り人生で最大のピンチでした(汗)

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またもやスカートでラッセルしてしまった。
ごめん、デミオ号。

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本来のコースに戻り、途中で軽トラの地元のおじさんに道を聞いたりして、ようやく辿り着きました。

芋洗谷ダムはダムサイトまでは車で行けません。
最後は管理歩道を歩いて行きます。

さあ、いざ芋洗谷ダム!。

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んあ?

ありゃりゃー。なんとここまで来て立入禁止でした。

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この下にダムがあると思いますが、仕方ありませんね。

ちなみに、管理者はJNC(株)とありますが、去年(2011年)設立したばかりの会社で、チッソ(株)から全ての事業を引き継ぎ、チッソ(株)は水俣病に関する保障の業務を継続し存続しています。

立入禁止の看板も、JNCになってから新しく建てられたのかもしれません。

芋洗谷ダムの水で発電された電力は、水俣のJNC関連の化学プラントに送電されています。
星山ダムの旭化成も、同クループの企業であり、水俣のプラントも延岡の旭化成と同じで50Hzが現在も使われています。
また、延岡と水俣の両プラントへの送電線は、高千穂(この辺り)を経由して繋がっているそうです。

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JNC(チッソ)は、現在、液晶や電子部品、また繊維、化学、樹脂、それに化学肥料など幅広く手掛けていて、一見ダムや発電事業と直接関係が無いように思いますが、そのルーツは鹿児島の鶴田ダムの湖底に眠る曾木発電所が最初の事業とされています。
はじめに発電事業があり、その電力を利用して電気化学へ邁進したのがチッソ(日本窒素肥料)の始まりの様です。

それに、日本窒素肥料とダムの関りとして、外せないのが、日本の統治下にあった朝鮮半島に日本窒素肥料(朝鮮窒素肥料)が自費で建設した発電用ダム「水豊(スプン)ダム」です。

日本窒素肥料 水豊ダム。堤高106.4m(!)、堤頂長899.5m(!!)。
この途方も無く巨大な重力式ダムは、右岸から西松建設、左岸から間組が本体施工し、1944年に竣工しています。(設計は日本工営)
国産初の100m級ダムは、丸山ダムとされる事が一般的ですが、実はそれより10年以上も前に、丸山をはるかに超える巨大ダムが日本の技術で造られていた事には驚くばかりです。

湛水面積は琵琶湖の半分以上、東芝製の10万kw発電機7台により最大70万kwを発電、半分は満州へ、朝鮮側への1/3が朝鮮窒素肥料のプラントへ送電されていました。
当時の日本本土での最大発電量が4万5千kw(蟹江発電所 神通川)であり、世界有数のとんでもない巨大ダムは、朝鮮戦争では北を屈服させる為に米軍が空爆をしますが、ついに破壊できなかったという武勇伝まで持っています。

日本の敗戦により、日本窒素肥料は水豊ダムを放棄、その後、北朝鮮の需要な発電所として今現存も稼働中とされています。

残念ながら、僕はまだ未踏なので水豊ダムの写真をお見せする事は出来ません。

でも、衛星写真などで、中国と北朝鮮の国境を流れる鴨緑江を黄海から辿ってみてください。

北緯40度27分40秒、東経124度57分40秒。
そこに、すごくいい物が見れるはずです、むふふふふ。

すっかり話題が脱線してしまいました。

芋洗谷ダム
★未評価

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星山ダム

堤高30.5m
G/P 1942年 旭化成ケミカルズ(株)

2011.11.4見学

ラップに感謝!


北川ダムと下赤ダムを観た後、日向灘に面した延岡市を経由して再び宮崎県の内陸部に入って行きます。

深い谷の五ヶ瀬川、新しい国道は川沿いの古い集落を飛び越えるように山の中腹を通っています。
国道から脇道を谷底へぐんぐん下ると、川沿いの集落に到着します。

立ち並んだ住宅の隙間にプレハブの建物がありました。
旭化成ケミカルズ(株)が所有する、星山ダムの管理所です。

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管理所と、ディーセル発電室の間がダムサイトです。
竣工は1942年、戦前の古いダムですが、天端は車道になって通行もできます。

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天端の下流面はゲートワイヤの巻揚機が占領していて、天端から直接下流面を観る事は出来ません。
この時代の発電用ダムに多いレイアウトです。

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霧深い貯水池、神秘的な表情です。

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岸に並ぶ住宅も霧の向こうです。

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右岸には取水口、星山発電所はここから2キロくらい下流にあります。
星山発電所で造られた電気は、全て延岡の旭化成の化学工場に送電されます。

旭化成と言えば、サランラップ。
食べ残しを美味しく保存するために、ここで電気が作られているのです!
と、言うと極端すぎますが、間違ってはいないと思います・・・。
(※サランラップの製品自体は、三重で生産されているらしい)

工場で使われる電力と言っても、動力源ではなく、電気分解や、電解合成など、電気化学分野に使われるというのも特色。

さらに、旭化成の前身である、日本窒素肥料を設立した野口遵は、技術面でドイツとの関係が深く、その為、当初から工場設備は50Hzが使われており、今現在でも延岡の旭化成の工場や、関係施設(社宅等も)は西日本でありながら、自社発電により50Hzが使われ続けているそうです(びっくり)

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立ち並ぶラジアルゲート。
雨に濡れたコンクリートが、やたらと黒く見えます。

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角ばった形がそう思わせるのか、ピアは分厚く、重厚。

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滑らかな下流面や、導流壁の表情はこの時代のダムの特徴がよく出ています。

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少し下流に目を向けると、建設プラントの遺構らしきものまであります。

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その導流壁を別アングルから。
有機的な曲面は、ニッパツのダムをイメージさせます。

気になって調べてみると、竣工当初から旭化成が所有とする情報に混じって、最初は日本発送電のダムだったとする情報もありました。

旭化成では水力・火力の複数の自社発電所を所有し、うち2基は、売電専用で60Hzだそうで、もしも星山ダムが元ニッパツのダムだとしたら、その売電用の発電所なのかもしれません(未確認の話)

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右岸から観る天端下流側、フェンスの中なので立入る事は出来ません。

湿った黒いコンクリートを覆う苔。
錆の浮いた重厚な機械類。

いい味、出過ぎてませんか?
いやいや、出汁が出切った、少し枯れた詫び錆びとでも言おうか・・・。

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左岸の上流から。
天端通路と、ピアの結合部が、やたらと分厚くブロック状になっています。

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中程のピアの下には、テラス状の部分があります。
多分、排砂ゲートの操作部かと思います。

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全国的にも珍しい、企業所有のダムは、謎がいっぱいですが、とりあえず食べ物を美味しく保存してくれるサランラップに感謝です。

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星山ダム
★★★

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下赤ダム

堤高17.8m
G/P 1962年 大分県営

2011.11.4見学

出稼ぎダム。


北川ダムを後に、そのまま下流へ車を走らせます。
5キロほど下るとダムが見えて来ました。

ローラーゲートの高いピアがそびえ立つ、下赤ダムです。

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天端は通行禁止となっています。

天端は右岸付近で折れ曲がっていて、コーナーがあります。
コーナーの手前までダム下流面は埋立てられていて、駐車スペースになっていました。

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少し下流から観ます。
堤高は17.8mとなっていますが、ピアが高く、それを支える扶壁も大きく立派な姿です。

ピアの頂上へ登る階段が、ピア真正面に斜めに付いていて、ちょっとした外観上のアクセントになっています。

発電専用の下赤ダム、発電所は対岸の左岸にあります。

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手前の右岸側の2門は天地の薄い転倒ゲートとなっています。

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北川ダムと近く、管理も大分県北川ダム管理事務所が行っています。

実は北川ダムとの間に宮崎県との県境があり、ダム所在地は宮崎県なのに事業者は大分県企業局という、ちょっと珍しいダムでもあります。

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下赤ダム
★★

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一ツ瀬ダム

堤高130m
A/P 1963年 九州電力

2010.3.21見学

成層圏の要塞。


杉安ダムを後に一ツ瀬川を遡ると、九州地方の最高峰 一ツ瀬ダムが現れる。
2億6131万㎥の総貯水容量も九州随一であり、全国で見ても第九位の巨大ダムである。



左岸のクレーン跡を利用した展望台より。

巨大なアーチの両脇にジャンプ式洪水吐を備えている。
中心のクレストゲートは、自然越流式だとばかり思っていたが、両脇と同じく2門のラジアルゲートだった。

中心のクレストゲートの片側の扶壁には厚みがある、監査廊への入口があるのだろう。この直下辺りにコンジットを持っているが、関連があるかは判らなかった。



巨大なドーム型アーチ、ダム湖側の傾斜も強く、堂々とした佇まい。
雨が当らず白い下流面とは違い、鈍い色に染まった荒い肌は、金属的な硬質感さえ漂う。



クレストから上への突出が無く、スパッと切ったかのように水平な堤頂部。

巻揚機は、ゲート脇の扶壁の内部に完全に隠される凝った仕様となっている。
低く構えた窓が要塞をイメージさせる。



天端は立入る事が出来ないが、下流側に向け2段の展望スペースが設けられている。
(上段には慰霊碑、それと崖から転落したのか、1匹の鹿が息絶えていた)



竣工時期からすれば奇跡的な白さの下流面、それはドーム型アーチの証。

上椎葉ダムと似た両岸の洪水吐。



しかし、重厚な上椎葉のジャンプ台とは違い、導流壁も薄く、軽い造形。ジャンプ台の裏面には空間があり、児童公園の滑り台に近い。

堤体表面との接合部を迂回する様に、キャットウォークがジャンプ台の裏まで伸びている。あそこからはどんな光景が広がっているのだろう。



そして、幾何学的な岩盤補強。
一ツ瀬ダムで、いや、九州全土で、個人的に最も観たかった部分だ。

全て平面で構築された複雑な造形は、近未来的でもあり、また、逆に古代遺跡の様にも見える。つまり、それは時空を超えた造形なのだ。

これが美しい造形かと言えば、違うかもしれない。
だが、無性に心を掻きむしる光景である事は間違いない。



左右に配したジャンプ台により、シンメトリーが強調され、きっといバランスの取れた美しい姿であろう一ツ瀬ダム。残念な事は、下流面からの全容が伺えない事だろうか。

だが、それがこの一ツ瀬ダムに他のアーチダムとは違う、ミステリアスな魅力を持たせている事も確かだ。



堤頂長415.6m、巨大アーチを広げる一ツ瀬ダム。

優雅でありながら、張り詰めた緊張感溢れるその翼は、成層圏を突き破るパワーを秘めているように見えた。

The Stratofortress.



一ツ瀬ダム
★★★★★


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杉安ダム

堤体39.5m
A/P 1963年 九州電力

2010.3.21見学

大内原ダムを後に、次のダムエリアに向かいます。
耳川の南側、小丸川にも沢山のダムがあるのですが、自分の体力と集中力を温存する為に今回はパスしました。そして向かったのが、もう1本南側の一ツ瀬川です。

河口から十数キロ、九州電力 杉安ダムが見えて来ました。

アーチ王国宮崎は、キングに上椎葉と一ツ瀬のツートップが君臨していますが、この小柄な杉安ダムが王国を下から支えています。
(※本当に支えている訳ではありません、あくまで愛好家の頭の中での話。)



ダムサイトは金網フェンスに囲まれていて、直接ダムに触れることはできません。

大きなラジアルゲート。
巻揚機のポリカ屋根がユニークです。

ラジアルゲートのアーム部分の傾斜が強いですね、点検時には足元要注意。



静かなダムの下流。
どこから来たのか、はぐれテトラくんが1匹。



直ぐ上流に九州の最高峰、一ツ瀬ダムがあるので、「低いアーチダム」とか、「低いくせにアーチダム」 なんて陰口を言われてそうなのですが、実はこの杉安ダム、堤高が40m「も」あるんです。

クレストのラジアルゲートが大きく、堤高の上半分を放流ゲートで占めているので、あまり高さを感じさせないのかなと思います。

また、ゲート下のアーチの面と、クレストゲート両脇の下流面では勾配が切り替わっています。アーチ式の下半身に、重力式アーチの上半身を乗せ、巨大なゲートを並べた感じの堤体ですね。



金網フェンスを避けて、ダム湖側に周ってみました。

大きく弧を描くアーチダム。
湖水もたっぷりで頼もしい杉安ダムでした。

この上流数キロに、一ツ瀬ダムがあります。



杉安ダム
★★★

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大内原ダム

堤高25.5m
G/P 1956年 九州電力

2010.3.21見学

上椎葉ダムからスタートした耳川のダム巡りも、最下流の大内原ダムで最後です。
耳川は、このダムの後、10数キロ下って日向灘へ流れ込みます。



ゲートピアの鉄骨が美しい大内原ダム。
残念ながら敷地内は立入禁止であまり近づく事が出来ません。

それに手前の発電所の建物も、ダムを隠していました。



国道脇の注意看板。
何故か絵柄にダム本体がありませんが、こっちから頻繁に水を出しますって事ですね。

九州電力の看板は、上椎葉ならちゃんと上椎葉ダムの姿が、それぞれ描かれていて愛好家ポイント高いです。



大内原ダム


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西郷ダム

堤高20m
G/P 1929年 九州電力

2010.3.21見学

耳川に沿って国道327を下って行くと、西郷ダムが見えてきました。

西郷ダムは耳川で最も古い発電用ダムです。
ピアの下流側にコンクリートアーチ橋が架けられているちょっと変わった外観が特徴です。

ダムサイトには駐車場がありません、国道脇の路側帯に車を停めて散策開始です。



堤高20m、堤頂長105mと、小柄な西郷ダム。
ここを渡す天端通路を、アーチ橋にする構造的な理由は見当たりません。
純粋に美観を狙ったものだと思います。もちろんその狙いは当っていますね。

敷地は他の九州電力のダムと同じで、金網のフェンスに囲まれていましたが、幸いアーチ橋は開放されていて、散策する事が出来ます。



宮崎県のダムは何故か鳩がたくさんいます。
この西郷ダムも、ゲートピアから驚いた様に何羽もの鳩が飛び立ちました。

この西郷ダム、ダム便覧によると、竣工は1983年と記されていますので、その時期に再開発などか行なわれているのかもしれません。
アーチ橋は堤体のコンクリートと少しだけ色が違いますし、橋脚とピアのつながりも不自然な感じを受けます。
外観からするとアーチ橋は再開発などで架けられた様にも思うのですが、実際に渡ってみると、極端に低い欄干は、明らかにそれよりも古い設計を示すものだと感じました。
このアーチ橋が、1929年の竣工時からのものだとすると、当時としてもかなり大胆なデザインだっだのではないかと思います。



左岸には魚道。
あんな所を登らされて魚は大変だ。と、人間は思いますが、彼らは遥々海からやってきます。このくらいの魚道なんてへっちゃらなのだ。



剥き出しになっているバルブからの放流は、上流の山須原ダムと共通ですね。
竣工時期が近い山須原ダムとは、兄弟と言える関係なのかもしれません。



アーチ橋から下流を望む。
溶岩のような真っ黒でゴツゴツした河床が印象的。



のどかなダム湖。

堤体と少し離れた右岸にある設備も山須原ダムと全く同じものに見えます。ここでも発電所への取水口はこれとは別にあり、この設備が何であるかよく解りませんでした。



再び、国道端の右岸に戻ってきました。
アーチ橋からは気が付かなかったのですが、ゲートピアのダム湖側には軌道がありました。

取水口などで捉えた流木なんかを対岸に運ぶ為のものかなあ。

なんて呑気な感じで見学していたら・・・。



ふと、デミオ号の方を見ると、パトカーが停まっていて、デミオ号のナンバープレートを照会中です。

周辺に何も無い (ダムならあるぞ) 国道脇に、薄汚れた本州ナンバーの車。
車内を覗くと、寝袋やらタオルやら、ごちゃごちゃと・・・。車内に住んでるのか?状態。

不審車両とは、この車の事です(笑)

遠くから声を掛けると、パトカーは立ち去り事なきを得ました。



アーチ橋の不思議なルックス。西郷ダムは小柄で、お洒落なおじいちゃんといったダムでした。

西郷ダム
★★★

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山須原ダム

堤高29.4m
G/P 1932年 九州電力

2010.3.21見学

諸塚ダムを後に、再び国道327に沿って耳川本流を下る。
やがて現れたのが山須原(例によって、やますばる と読む)ダムである。

この山須原ダムというダム名は、ここから水を送っている下流の山須原発電所から採用した名前のようで、地図では、鳥の巣という地名と共に、鳥の巣ダムと記されている。



竣工は名堤 塚原ダムよりも古く1932年。
垂直に立ち上がるゲートの扶壁が塚原ダムと共通するのは、此方も塚原と同じく改修工事が行なわれているのではないかと思われる。

扶壁の上の歩廊も、改修工事の折に設置されたのかもしれない。
現在クレストゲートの交換工事中である北陸電力 神一ダム、及び神二ダムも、これに似た歩廊が追加されたようだ。



左岸の下流に魚道。
魚道を流れ落ちる水の他にも、剥き出しのバルブから放流が行なわれていた。
河川維持放流だろうか。



意外にも天端は道路として開放されている。
宮崎県のダムは、天端が入れないダムが多いので、山須原ダムは貴重な存在である。

軽自動車と変わらない大きさの巨大な巻揚機。
一般に新しい機械ほど外寸はコンパクトになってゆくものであるが、巻揚機に関しては、モーターを小型化する代わりに、減速比などを見直して、プーリーなどの機械部分を大きくする事もあるのかもしれない。



天端通路は車道と歩道が分離されている。
路面はコンクリートではなく、鉄骨と鋼板で造られた橋梁となっている。

国道からこの通路を渡った右岸に、取水設備や管理棟がある。



ダムサイト右岸にある山須原発電所への取水口。
あまり見ない形の網端でガードされている。ハードタイプと呼ぶべきか。



上の写真とは別に、右岸の湖畔に見える設備。
取水口のようにも見えるのだけど、何だろう?。



この山須原ダムで僕が最も気に入ったのは、ラジアルゲートのトラス組の美しさだ。



一見無骨にも見える太めのNトラスだが、縦軸を同じピッチで配置しているため、斜めに入る3本の鉄骨は、角度が少しづつ序変して配されている。

葉っぱの葉脈や、蜂の巣の六角形、雪の結晶など・・・自然界が生み出す造形美に近いものを感じた。



無骨なゲートピア、巨大な巻揚機、鋼板敷きの天端、そして、有機的な暖かみさえある美しいラジアルゲート。
それらが一体となった山須原ダムは、不思議なバランス感を持った堤体であった。

山須原ダム
★★★★

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